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妄想能力者と現実能力者の討伐戦  作者: 忽那 和音
Series3 UFW編
99/255

Episode 97

 非常事態宣言の発令地域は関東、東海地方から北は東北地域。西は関西地方まで広がった。

 しかし各自治体によっては自主的な避難を検討するところも出てきている。

 陰光大学周辺地域は稀に古くからの土地に一軒家で住む住民などがいる。

 既に学校は避難所として解説されている。

 アテナ達が住む地域周辺のマンションは災害時の想定をされて設計されている。

 一方、アテナ達。鉱石の保持者は検問所など他国と国境が繋がっていないにもかかわらず一般車両の交通規制が行われている。

 小さな道や裏道を通らない限り、二車線から最大で四車線で構成されている。

 緊急車両と公用車両を除いた一般車両の検問と規制を行っている。

「はい。ここで、私の持ってきたお菓子をかけたバトルを行いたいと思います」

 突如、バスの中でトリンドルがマイクを持って自主的な大会を始める。

「いえ~い! いいぞ! いいぞ‼」

 彼女のやる気に便乗してミツキも乗り気だ。

「へっ、どうしたの?」

 冗談の通じないエレンや先ほどまで外を眺めていたアテナがポカンとした。

「トリンドルちゃん。もしかして、この時間を狙って?」

 サーカが彼女の真意について探る。

「いいや。ちょうど行き帰りのお菓子を持ってきていたから、ちょっとお裾分けしようと思って」

 彼女の菓子、デザート限定の大食い体質を理解している母にもらったというお菓子の一部をバトルの勝者に渡すと言う。

 別腹の容量が以上に広いトリンドルを気にかける家族の素晴らしさが感じられる。

 しかしお菓子をかけた戦いについて選考方法が思い当たらない。

「けど、どうやって決めるんだ?」

 バンがぼそっと聞く。

「それはね~。ヤマノテ線ゲームだよ」

 とてもベーシックな遊びだった。

「それじゃあ。私スタートで慧君とサーカちゃんへっていう周りでお願いしま~す」

 反時計回りで周回する。

 一息つくまもなく、トリンドルのお菓子をかけたゲームが始まった。

 最初は発起人のトリンドル。

「アマノテ線と言ったら~、青緑!」

 次は慧。

「青緑と言ったら森」

 次はサーカ。

「森と言ったら~あ~う~」

「はい! 失格‼」

 サーカは何も思い浮かばず主催者から失格となってしまった。

「ふ~。ちょっと、悔しいわね」

「じゃあ、はい。失格者にお菓子だよ」

 彼女の行動が皆にはよく分からなかった。

「え? トリンドルちゃん。勝った人にお菓子を渡すんじゃないの?」

 エレンは言った。

「あ~。不公平が出ちゃうって思ってとりあえず、失格になっちゃった人から渡すの」

 トリンドルの一見話の相違が起こっているようで、彼女なりの優しさが失格者の救済となる。

 十分単位で三セット行ったヤマノテ線ゲームはトリンドルを除いた生徒達にお菓子が行き渡った。

 もらったお菓子達を皆で頬張る。

 提供者のトリンドルも口を開けて、クリスピー菓子の破片を口の縁から落とさないように食べる。

「う~ん。やっぱり、みんなで食べるお菓子と焼き芋は美味しいよね~」

 ありもしないものを言った彼女にミツキは聞いた。

「トリンドル~。一体、どこから焼き芋が出てきたの?」

「え~。やっぱり、夏が終わったら次は秋だから、焼き芋か栗でしょ」

 一歩先取りの季節物を楽しみにしている。

 後ろの座席で固まっている生徒達に向かって大きく揺れる車内を座席の肩を手すり代わりに歩いてくる。

 生徒達の作戦行動・参加を責任するメルタが来た。

「皆。軽く話しがあるから呼ばれた人は来て」

 彼女から呼び出されたのは、アテナ、ミツキ、エレン、トリンドル。そして、バン。

 他にも参加する生徒がいる車内。

 メルタの話が気になって仕方のないアテナと友人。

 慎重に話の漏れにくい場所へメルタの後を追う。

「五人とも、ここに座って」

 言われた通り、アテナは前方。

 その後ろを四列で並び座る。

「あなたたちだけをここまで呼んだのは、決して金城さんや一色さん達が劣っているという訳ではないわ」

 前もって、様々な理由から差別して別途の話をした訳ではない。

 彼女が五人に言いたいことは作戦の一部として重要なキーだということだとことを言いたかったからだ。

「アテナさん、ミツキさん、エレンさんは今回の作戦では全体の戦況を大きく影響する役割です」

 近距離部隊は全体の要。メルタはバックでは軍もバックアップをしてくれるが、効果的な攻撃を与えられるのは鉱石の保持者。

 貴重な存在のため、できるだけ攻撃は避けてチャンスを伺って攻撃を行うように助言をする。

「剣道のトレーニングはそのためでもある。敵の様子を伺い強烈な一撃を放つ。無理はせずに行きましょう」

「はい!」

 アテナとエレンはいい返事をした。

 しかしミツキは俯いた顔をしている。

(伯父さんのトレーニングが今回の為……か……)

 メルタは続いてバンの顔を向いて言う。

「バンさんは中距離として近距離のアテナさん達をサポートしてください」

 中距離は近距離と遠距離の間をとった戦い方をする。その特殊性からメルタは念を押す。

「おそらく、中距離が今回の戦いの中で普段出会わないような戦いをしてくる相手がいると思います」

 そこでメルタは一つのアタッシュケースをバンに渡す。

「詳細は言わないけど、開けたいと思った時に開けてください」

「なんか丸投げなんですね」

 バンは率直な気持ちを口にした。

「ちょっと……ね……。でも、あなたは感覚が優れているからすぐに分かるはずよ」

 その言葉が既に違和感を覚える。

「ん~~。分かりましたよ。分かりませんけど」

 それ以上の話を掘り下げることはなかった。

「次に遠距離攻撃についてです。今のところは近距離中距離部隊が中心になります。が、敵の姿が見えない中で大型の生物が進行しているので、身を隠すものがあるでしょう」

 メルタは遠距離攻撃の指揮を担当するサーシャにお願いをするが、町への進行阻止と身を隠している元凶の破壊を目標にするように指示をする。

 責任者としての簡潔な話は終わった。

 アテナには一つ不安な点が中で浮き上がっている。

「あっ。あの先生……。ひとつ……聞いてもいいですか?」

 恐る恐る聞く。

 メルタはアテナの顔を向いた。

「どうぞ」

「では僭越ながら。あのこれまでの訓練で体力や自分達の特性を強化することもできました。けど――」

 湿った手を力強く握る。

「武器の出現や完全武装ができない中で、私達がみなさんの足手まといになるのではと思って……」

 自信も根拠も何もない。

 しかし初陣の武将とはこんなにも弱音を口にしていいのだろうか。

 一人の中学二年生は重い息をしている。

 気持ちの冷え込んだものをメルタは包んだ。

「大丈夫。あなたの力を与えた人とも出会った。十分に訓練をした」

 これまでの経験をした上で彼女は言う。

「あなたは十分に、それ以上に頑張った。あとは持っているものを信じなさい」

 なぜ根拠も明確な意味もないことに、こんなにも心が柱に堅い軸が入るのだろうと。背筋が丈夫になる。

 メルタは後ろに体を上げる。

「皆もね」

 ミツキ、エレン、サーカ、トリンドル、バン。後ろにいる慧、大樹、春菜に。皆に顔と瞳を合わせて言った。

 話は終わり、アテナ達は元いた座席に戻る。

 バスが出発して二時間が経過した。

 埼玉を超えようとしている。

 周りは畑や林が連続する。

 バスの昨日は普通の観光バスと変わらない機能がついている。

 サーシャの提案で生徒達だけであれば、カラオケや映画を見ていいと言った。

 最年長の一色大樹が契約している動画サービスと車内のテレビを繋ぎ、ミツキ、慧、バンの多数決で怪獣映画を見ることになった。

「ねえ。この映画ってかなり古いよね?」

 トリンドルがバンに視聴する内容について聞く。

「ああ。確か、戦後十年に公開された初期作だっけ。時代が時代だから、当時の軍事上京都か。核問題とかが浮き彫りになっているな」

 軍事問題と市民生活にそれらが与える影響は計り知れない。

 昔とは言え、五十年以上を裕に超えた現在でも基地問題。権力のフェアバランスなどの話は国会、憲法審査会でも議論される。

 お客様待遇ということで、複雑な内容の映画を視聴することを許可したが、上司を含めた話し合いではそれを認めていない。

 皆、気持ちを整えながら目的の場所へ向かう。

 トリンドルは刻々と変わりゆく景色に度々目を逸らしている。

「は! 見えてきた。海だよ」

 東京湾が一望できる道路にやって来た。

(ここから民間なんて関係ない場所に入っていくんだ……)

 海を見てはこんなにも緊張と恐怖を感じることがあるのだと思った。

 再びアテナの鼓動は高まる。

 横須賀を間近に構えた高速道路上。

 ついに全貌が主力の目の前に広がる。

 実際に横須賀の状況を目の当たりにする。

 住宅が建ち並ぶ町が一変。

 いつもの風景とは大きく違う悲惨な光景になっていた。

 建物は爆発で破壊された家々。

 液体のようなもので素材が溶けた集合住宅達。

 だるま落とし的に横から破壊された複合施設。

「こんな、ボロボロに……」アテナは衝撃を受ける。

 いつもの風景が崩されて生徒達は落ち込む。

 しかしミツキは事前に聞いた情報を改めて自覚する。

「でも、これでも、人は避難しているんだよね」

 壊された町を巡り、生徒達を乗せたバスは特例で基地内に入っていく。

 アテナ達が基地内に再び入るのは、三ヶ月ぶりのこと。

 本人達もこんな短期間に施設内に入るなどとは思わなかった。

 だが、アテナ達にしかできないミッションが待っている。

「皆さん、お疲れ様です」

 バスから降りた生徒達が施設に入る出入り口で迎え入れられた。

 挨拶に来た女性隊員は前回の作戦で参加していた一人。

 生徒達も彼女のことを瞬時に思い出した。

 アテナ達は施設内に入り、生徒達の為に制作された専用の服に着替える。

 前回も同じものを着たが、今回はバージョンアップした新作。

 これには、メルタ、サーシャもかかわっている。

 色はグレー。一見地味になりがちな色だが、スタイリッシュなデザインとなっている。

 服は様々な小物が入るポケットがズボンにも胸元にもつけられている。

 着替えを済ませたアテナ達は外へ出る。

 本丸であろう横須賀基地近海上空の敵を見つめるためだ。

 そこには、最後まで塔の崩壊まで一緒にいた者には見覚えのある人物がいる。

 以前も肌色面積が広めだったが、今回もほとんど変わらなかった。

「あの、黒い服の女性って」

 アテナが彼女について切り出す。

「え? あのとき倒したんじゃ」

 ミツキは倒した相手が再び戻ってきたと驚く。

「あくまで、一時的に追い払っただけ。けど、また何で彼女が……」

 前回の作戦前から顔見知りのメルタは、今回再び来た理由について見当が見当たらない。

(来たわね。神からの信託者。必ず、全ての仕組みを打開し、私の……。私の家族を救ってみせる……)


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