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妄想能力者と現実能力者の討伐戦  作者: 忽那 和音
Series3 UFW編
96/255

Episode 94

 まだ横須賀近海が膠着状態を保っていた頃。

 国防省と政府内で対応をしていたため、通勤通学などの市民生活には影響が出ていなかった。

 それはアテナ、ミツキ、エレン達が通う陰光大学教育学部付属陰光中学も同じく通常通りの学校生活を送っていた。

 授業間の休み時間。

 サーカとアテナは横に並び、外に目線を向けて顔を横に机を合わせている。

 夏のムシムシした暑さに冷たい木製の机が彼女たちの体温を少しだけ冷やす。

「はぁ~。臨海学校が終わったらいよいよ夏が終わるね~」

「そうだね~」

 二人の目は完全に癒されたもの。

 夏の終わりを快く思う者達とそうでない者がいる。

 彼女は二人の前にある机に手をかける。

 手は力を込めて淵を握っている。

「やだやだやだやだやあぁーだあぁぁぁぁぁぁーー‼」

 トリンドルは終わりを悲しむ声とともに両手を丸め上下に振った。

「トリンドル~。屋内プールがあればいつでも泳げるじゃん」

 屋外プールで泳げないという理由で晩夏を迎えることに抗おうとしている彼女をミツキはフォローする。

「いや、屋内と屋外は全然違うよ!」

 強い気持ちを持った拳を持ってトリンドルは言った。

「でも季節は過ぎてしまうから、このまま屋外プールを使っては風邪を引いたりして体に悪いよ」

 サーカはトリンドルの強い意志に心配をする。

「ありがとう、サーカちゃん。でも、私……。出来るだけ屋外でも泳ぐよ」

 彼女の眼は炎のように燃えている。

 そしてサーカの両手を包んだ手は厚く湿っていた。

「トリンドルちゃん。大丈夫?」

「ちょっと、まずいこと言っちゃったかも……」

 トリンドルが一人で頑張ったところで、部活に所属する彼女は何も抗わなくても元々練習で使われている屋内プール。

 彼女は屋外で泳ぐことこそ夏の風物詩と毎年感じる。

 ミツキは提案をする。

「トリンドル。今度市民プール行こう」

「いいよ。ラスト中二サマーだね」

 ウキウキしている彼女のトレンディーなネーミング。

 感想として口にしたミツキ。

「なんか、かっこいいような。ダサいような」

 その約束はニ年い組のアテナ、サーカ。

 日直で黒板の掃除をしているエレンも自動的に含まれていた。

 平穏な空気から何も聞こえなくなった。

 日常が異常に変わる瞬間だった。

 耳には外からの騒音というには国民へ情報を伝えるという役割に即していない。

 しかし、自分達の会話を楽しんでいる若者にとっては障害となった。

「何? なにー?」

 ミツキは急な外からのサイレンに驚く。

 一緒に話をしていたアテナ達も外を向く。

 何かが見えるという確証が無い。

 だが無意識に外を見ていた。

 黒板掃除を終え、廊下で手を折らい終えたエレンも教室へ戻ってきた。

 クラスメイトの様子を見てアテナ達へ向かった。

「皆、動揺しすぎよ」

「エレンは落ち着きすぎだよ」

 ミツキは彼女の言葉と落ち着きをこの場においては異常に思った。

 サイレン音が響く中、アナウンスが入った。

「只今。関東、東海地方に。安全保障上の非常事態宣言が。政府から発表されました」

 近々一か月の報道に安全保障上の危険性が高い話について、生徒達は勿論。全国民が寝耳に水の状態。

「いったい何~? 怖いよ~」トリンドルは頭を抱えて怖がっている。

「大丈夫。関東と東海。まあ。ここは際どいところだけど……」

 だがエレンはルーム長としてトリンドルを落ち着かせる。

 彼女曰く、設備的にも災害時を想定して作られている。

 しかし(いち)生徒でもあるエレンにも詳細については皆と同じく何も聞かされていない。

「皆、大丈夫?」

 サイレンが広がってから五分が経過した時。

 やっと担任が来た。

「サイレンが収まらないので、今日の授業について先生達で会議をします」

 説明があるまでは各自自習するように言われる。

 エレンもその場を落ち着かせるように協力する。

 校内では通常通り四時限目の授業開始を知らせるチャイムが鳴る。

「皆。席に着いてください」

 エレンは感じの悪い余韻が漂う教室内をいつも通りに戻そうとする。

 幸い、取り乱す生徒達はいなかった。

 四時限目の授業は家庭科。

 しかも、今日に限って麻婆豆腐とわかめの中華スープを作る調理実習。

 担任から教室で実習と言われた生徒達はその時、授業後の部活とともに温かい昼食を同時に失った絶望を感じた。

 規則正しい生活を送る生徒が多い。

 この日に限っては自習をする頭の半分は調理実習のご飯を食べようとしていた昼食を埋めるご飯の事を考えていた。

 特に学校一の大食いミツキは度々放送される行政放送よりも大きい彼女の腸からの食事を求める声が教室外にも漏れる。

(あ~。今日、わざわざ家からお米五合持ってきてもう、炊飯しちゃったよ。このまま白米だけでもいいけど……。飲食店のご飯じゃないと白米だけってきついんだよな~。あ~、ふりかけ持ってくれば良かった。あと、食堂もやるか分からないし……。は~。最悪……)

 もはや机と顔がくっついた状態で苦手な数学の問題を解き、左手でお腹をさすっている姿にクラスの皆がこう思った。

(((((かわいそう・・・・・・)))))

 自習開始から一時間後。

 担任のラレス・サーシャが戻ってきた。

「皆さん。今日は学校を休校にします。部活もしばらく禁止になります」

 生徒達は空腹の状態で心に大きな釘が刺さった。

「帰宅したら、ニュースを見てください。各自治体の指示に従ってください」

 明日もあると思っていた学校がこんなことになると、生徒達は思いもしなかった。

 それは進級直後に生活が一変したアテナ達がより感じている。

「あと、このあと呼ばれた生徒は話があるので、教室に残ってください」

 それが誰なのか。自覚している者達はいた。

 以前、塔の崩壊作戦に関わった生徒達の事だ。

 二年い組やその他の教室も速やかに解散し下校した。

 アテナ達は二年い組に残った。

「もしかして、また何か来たのかな」

 トリンドルは心配して口にした。

「来たとしても、未成年って立場上。俺達は何もできない」腕を組み立つバンが言った。

「確かにそうだけど……」エレンは彼の意見に納得する。

 しかし未成年という立場が通じない最悪の事態を経験したエレンとこの場にいる子供達は理解できる部分と流されるがままの自身がいる。

「大丈夫だよ。その為に私達トレーニングしてきたんだから」アテナは拳を握りしめて言う。

「そう……だよね」サーカは気持ちを取り戻し言う。

「ああ!俺達に怖いもんは無い‼」

 慧も一人だけ落ち込んでいなかったが、さらに気持ちが上がった。

 一分、五分と時間が過ぎる。

 教室には同じくトレーニングに参加する一色兄弟達も入ってきた。

「はぁ。大樹先輩。春奈先輩」

 ミツキが教室に入ってくる彼らの声に気づき振り向いた。

「やあ、皆。先生に呼ばれてね。ちょっとお邪魔するよ」

 兄の大樹が高学年ながら配慮して入った。

「じゃあ、私達。今回が初めての実践?」

 トリンドルが怯えて言った。

「そうとも限らないみたいか……はまだ、分からない」

「えー。そんな~」

 笑みをこぼし冗談交じりに春奈は言う。

 階段を上る足音が廊下を伝い、二年い組に聞えてくる。

 二年い組担任のラレス。

 そして副校長であり陰光大学鉱物遺石研究会のトップを務めるメルタ・エーマンが来た。

 メルタは教室に入るな否や口にする。

「時間が無いから、サクッと話すから速やかに出る準備をして」



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