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妄想能力者と現実能力者の討伐戦  作者: 忽那 和音
Series3 UFW編
95/255

Episode 93

 日本軍の東京湾出発から三時間前。

 日本海軍所有のイージス艦・アタゴ型い号。

 艦内では、横須賀基地に詳細な計画を伝えない。

 第一線で活動する基地を仲間外れにしたまま市谷からの指示により、各基地から作戦に派遣される乗組員は着々と準備をしていた。

 食堂に集まった隊員達はお互い最後の和やかな時間を過ごしていた。

「ねえ~。伊藤ちゃん、今日は食事出ないの?」

 一人の男性隊員は後ろにある厨房で掃除をする伊藤。

「今日は目の前だから出るわけないよ」

「あ~。そうなのか」隊員は悄気だ。

「けど三時のおやつくらいは用意してほしいって、艦長が言ってたから」

「ふ~ん。うちの艦長分かってる~」彼はへこんだ臍を立てる。

 砲弾や燃料の積み込みが完了した。

 市谷から通信で各海軍基地、各艦内。陸、空軍基地。

 通信機器を通して激励が伝えられる。

「え~隊員諸君。これは日本だけでなく、地球に脅威を及ぼすであろう相手との闘いだ」

 校長先生の講和と比べてやる気の薄い激励は耳を伝い、頭をめぐる。

「俺、この人の演説嫌いなんだよな」

「シッ!」

 多くの隊員から裏で不評を受ける大臣の演説は十分ほど続いた。

「では、作戦を開始する~」

 語尾を伸ばしたところも気に食わない点の一つ。

「各隊員は行動に移れ! 以上」

 進行役の芯が入った一斉に気持ちが入った。

 続々と配置についていく音が艦内に響き渡る。

 十分後。

 停泊している艦は小型の艦を優先して基地を後にする。

 静岡県から出るアタゴ型い号を始めとする数隻の艦は目的の東京湾へ三十分を要する。

 しかしあくまで海軍の仕事は海上監視。

 今回の花形は空軍と見られている。

 仕事と割り切る部分はあるが、自身も活躍の場が欲しいと睨んでいる。

 一方、今回の作戦において面と向かっての攻撃という大役を任されている空軍。

 彼らは先発の戦闘ヘリが入間基地から出発して十五分ほど経過した。

 各陸海軍にも、パイロットの通信が受信されている。

「まもなく、目的地に到着します」

 パイロットの一人が市谷作戦本部へ報告する。

「了解。指定地点へ近づき、速やかに攻撃を開始せよ」

 本部長から次の工程について指示を出す。

「了解」

 パイロットはレバーを前進させる。

 ヘリを対するジャック達は退屈を感じている。

「ねぇ、ヴェラ。あれがヘリっていう乗り物?」

 事前に学習したとは言え、初めて見る物を不思議に思えた。

「そうよ。油と電気。そして鉄の塊」

 ヴェラは大雑把にヘリコプターの原料や材料について話した。

 しかし彼らにとって、それはとても脆いものだということを裏返していた。

「また、モブか……」ヘリ数機は目標を目の前にした。

「目標地点に到着。攻撃準備。攻撃準備完了」

 速やかにヘリコプターの下に搭載されている主砲、副砲ボタンを手にする。

「攻撃開始する」

「ババババババババババン」絶え間ない攻撃の連打がジャック達にやってくる。

「あっ。なんか来た……」よそ見をしていたジャック。

 空軍からの攻撃に気づいた途端、ヘリの方向を向いた。

 だが、彼らには砲弾が一発も当たっていない。ヘリからの攻撃は全て塞がれている。

 壁や盾など攻撃を防ぐものは見えない。

「なぜだ……」

 隊員は動揺しながらも攻撃の手を止めない。

「このままだと、弾薬が底をついてしまう。第二群に任せて、目標の後方へ移動しつつ防御の穴を探ろう」

「了解‼」

 数機の第一群戦闘ヘリコプター隊は右に進み目標の後ろ側へ移動する。

 上下で分けて攻撃をするが、弱点があるのかさえ分からない。

 左へ周り移動していくヘリにジャック達は不思議に思いながら見ている。

「あいつら、何しようとしているんだ?」

「防御の薄いところを探っているのよ」

 ヘリコプターを見ながら、また似た音が近づいてくるのをウィリアムが気づいた。

「うん。また来た」

「うえー。何個も来てあいつら必至だな~。でも、雑魚相手に俺たち力は使いたくないからな~」

 ジャックは彼らの襲撃に飽き飽きしていた。

「フフフ……」

 しかし、一人の紳士だけは違かった。

「彼らはこの後。計画通りヘリの後。戦闘機。そして、強力な爆撃等持ってくるでしょう」

 大隊長の左にいるメイドは前へ手を重ねている。

 右にいるメイドは片手に紅茶の入ったポットを持っている。

 カップの中が空になる度に注いでいる。

「私達も序盤を彩る前衛隊を出しますか」

 大隊長はそう言い口角を上げた。

 後ろからは髪を前へ靡かせる風が横須賀。本州へ向けて吹く。

 だが海上で感じる風は生暖かい塩ではなく、冷たく心を刺す攻撃的なものだった。

「上空進行部隊第一軍。前進しなさい」

 男の表情は冷酷なものとなり、持っていたカップと皿は粉以上の粒子となった。

 両手は脇に移る。

 その間に左右の後ろから巨大な球体状の生物が出てきた。

 動物のバグが横長に丸まったフォルム。

 背中から上へ生える羽は人が忌わしく思う蚊をそのまま生えた形状。

「なっ、何……。あれ……」

 横須賀基地通信部からモニターに移し出された生物を見た隊員達。

 基地内は今後の対策を立てる暇は無い。

「市谷本部は一体何をしている」

 その時、空から轟音が広がった。

 監視役の一人が空を見ていると二機の戦闘機だった。

「行けるのか? 行けるのか!」

 戦闘機機内は慌ただしく直線上の集団を狙った攻撃準備を行っている。

「まもなく、横須賀近海に到着する」

「速やかに攻撃に移れ」

 市谷作戦本部からの通達は全速力の最速攻撃。

「了解‼」

 二機の受信者は二人とも気の入った返事をした。

 耳を塞ぎたくなる音は耳の敏感なウィリアムは悲鳴を上げていた。

「うわ~! 耳栓だけじゃ、どうにもならないよ~‼」

 ジャック、ヴェラ。

 さらに、後方にいる部隊も耳を塞いでいた。

 しかし、全体を指揮する責任者。

 大隊長とキュバリルだけは違った。

 一糸乱れぬ反応を見せる。

「ふん。このまま直進攻撃。まさに肉弾ですね」

 上下にきれいに組まれた両腕を前に見ている。

「ですけど、まだまだ序盤です。人間達、あっさりとくたばるんじゃないんすか?」

 耳を塞ぎながらも大隊長の言葉を耳にしたジャックが答える。

「それでもいいでしょう。しかし、あんな攻撃でまだチューニングでしかない彼らに攻撃を受けてはいけないですね」

 大隊長と隊員達が話をしている中に戦闘機が間地かにまで来た。

「攻撃開始――」

 戦闘機部隊が襲来者を目の前にミサイルを放とうとした。

 だが黒い空気に包まれその通信機材から耳にするパイロットの声は消えた。

 それは、最初に出動し大隊の後方へ回った戦闘ヘリ達も一緒だった。

 モニターを通して状況を見ていた市谷作戦本部、横田、入間、横須賀は唖然だった。

「一瞬、で……」大隊長は口を開く。

「では、航空部隊は上陸作戦を開始。海上部隊も進行を始めてください」

 指示に伴い空と海。

 同時に人類には目にしたこともない生物。怪獣が次々と現れる。

 空にはバクのような生物。

 海には竜宮の使いよりも黒い色を持ったもの。

 アテナ達はそのことを知る由もなく、普段通りの学校生活を送っていた。


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