Episode 87
昼間にもかかわらず、灰色の空が永遠と続く。
空にはカラスの声しかしない。
屋根にいるのは黒い色の鳥しかいない。
住民たちはこれまで五十年ほど青空というものを見ていない。
これも国策で行われる生産優先主義の為に大気汚染が充満した結果。
しかし、外の景色を見るだけでも、まだましと言われるこの世界で、地下で生きるものが大半を占めている。
煉瓦製の建物が連なる一つの煙突から白の煙が上がっていた。
家の中には焼きあがったばかりの炭焼きパンが食卓に並ぶ。
きれいにアイロンがけをされたシャツを着た青年が食卓へ来た。
「おはよう」
「おはようございます。お父様」
ダイニングには、白髭を蓄えた紳士。髪を結った淑女。
そして、兄弟達が座っていた。
家族たちは後ろにいる執事、メイド達に食事を変わる変わるさせられながら、食事をする。
「アルミジン。宮女の様子はどうだ」
「お変わりなく」
「ならいい」
度々、彼の父親は自身のメイドについて聞いてくる。
しかし、アルミジンはいつも彼女について変わりないや元気しか言ってこなかった。
「ごちそうさまでした」
「早いわね」
彼の母親は早々と朝食を終えたことについて言った。
「ちょっと、仕事があるので失礼します」
アルミジンは足早にダイニングを出た。
地下に続く階段を下りる。
第二倉庫室。
いくつかある倉庫室の中で最も置物が少ない部屋。
アルミジンは部屋の鍵を開け、速やかに部屋に入っていた。
「ははは……んっ、ははは……」
吐息交じりの呼吸が部屋中に広がっていく。アルミジンを殺意の目で睨む。部屋の中は真っ暗。ボアの床とベッドの濃い赤が空気感を煽情的にする。
アルミジンは室内のランプを一つ点火させ、ぼんやりと部屋中を明るくした。
茜色の部屋には左奥には高級感のあるダブルベッドが置かれている。
壁には鞭や紐などがかけられていた。
世界で通常販売されているものとほとんど出回っていないものと混在する。オークションに出せば値の付く素人からすればインテリア。趣味のある人からすればお宝グッズでしかない。そんな道具ばかりが置かれている。
実際に隠れ家として店を構えているところもない。
過去に町中の治安維持の政策で風俗店や年齢制限のあるグッズを販売する店の営業を禁止した。
現在は体制崩壊の為、店はおいていないものの貴族を中心に需要が高い為、隠れて購入している。
アルミジンもその内の一人だ。
部屋の右側にいるのは全裸の女性だった。
彼女の両腕は天井につながれた紐に両手首を縛られている。
体は鞭によって作られた線状の傷が多く残っていた。
「今日で一週間か。ここまでやられて嫌がらないとは……。これは自身が求めているのか? それとも……。家族の為に?」アルミジンは彼女の顔を伺い言った。
左の壁に欠けられたいくつかの鞭を手に取った。
そして彼女に新たな傷を刻もうと目掛ける。
「なぁ。いつになったら、結果を持ってくるんだ? キュバリル!」
「ぐぅはぁあぁっ……」
彼は手に持った縫地で彼女の無防備な裸体に叩き続けた。
「今度は軍にお前を送る。もう帰ってくるな。分かったな」
「は……はい」アルミジンは部屋を出た。




