Episode 83
昼食を終えたアテナ、エレン、サーカは午後の訓練を行うためにトレーニングセンターへ戻ってきた。
午前中に運動部の部活へ参加していたミツキ達やチェックテストに合格済みの生徒達も午後には基礎体力強化プログラムに参加していたアテナ達と合流する。
「ミツキちゃん。元気かな?」
アテナはいつもいる騒がしいムードメーカーの状況を考えた。
「元気でしょ」
エレンは幼馴染の常で、いつもの彼女を思い出す。
「うん。ミツキちゃんは元気だ」
余裕をもってサーカは言った。
三人で集まっていたところにおなじみのメンバーがやってきた。
「あ。噂をすれば、みんな来たみたいだね」
ミツキ、バン、トリンドルがやってきた。
「やぁ~! 三人とも~」
ミツキは三人に手を振ってきた。
「ミツキ。朝に何か文句言っていたように聞こえたけど?」
ランニング中に聞こえてきたミツキらしい言葉にエレンは真偽を問いかけた。
「え~? 空耳でしょそれ。おっかない監督の前で野次なんか飛ばせないよ」
両手を腰に当てて呆れながら言った。
「でも、隠れてミツキちゃんは文句を言ってそうだね。あっ、文句じゃなくて、ストレス発散?」
トリンドルはミツキの日頃から口にするどうでもいい、時に野次のようにも聞こえる発言をストレス発散の一部と見た。
「そう! そうだよ~トリンドルぅ~。さっすが、分かっとるの~」
気分を良くしたミツキはトリンドルの水泳で湿った頭を撫でた。
「理解してもらえたのはいいけど、その撫で方はちょっとくすぐったいな」
トリンドルの頭を頭皮マッサージのグッズ足と同じように上下と広げて閉じてを繰り返した。
それはマッサージグッズと見える一方で、不快になっている者からはタコが絡まっていると感じるものだった。
「はい、皆集まったね。今日は私を囲うように適当に座って~」
二年い組の体育や午前中に行われていた基礎体力強化プログラムの指導を行っていた体育教師が散らばっていた生徒達に指示を出した。
普段の授業とは違うため、比較的緩い。
「それじゃあ、ここからメンバーごとに分かれるから、呼ばれた人たちは後ろで列になって並ぶように」
教師は名簿に書かれた名前を読み上げた。
「うわ~。見事にばらけたね~」
トリンドルは別れ、再編成されたトレーニングチームの面々を見て、感心した。
「これ、なんの基準?」
ミツキは腰に手を当てて言った。
「さぁ~?」
サーカだけでなく、ほかの生徒達も思い当たることが分からなかった。
「あっ。皆いるわね」
トレーニングセンターに副校長のメルタ。二年い組担任のラレス。
なぜか図書館司書であり、アテナが創部させたクリエィティブ部活・MUSEの顧問であるマリンが来た。
「それじゃあ、ミツキさんがいるブループは私についてきてください」
「えっ!? 私基準?」
メルタの言葉に反応した。
「ミツキさんはこのメンバーの中では一番分かりやすいので、助かります」
「頼りになっているのなら……いっ……いいですよ……」
ミツキは顔を赤らめながら、言った。
「いや、ここ照れるところ?」
エレンの手を借りずともミツキは自分のことを自分の力で突っ込んだ。
「私のグループも来てください」
サーシャは一人ずつ名前を呼んで、自身の後ろについて行くように言う。
その中には、トリンドルも含まれている。
「あっ、私はサーカちゃん達なので、ついてきてくださ~い‼」
マリンも負けじと存在感を出す。
各グループ、担当教師の指示に従いトレーニングセンターに指定された場所へ向かう。
広大な面積に縦幅も大きいトレーニングセンター内には、できない種目は無いと言われるほど、多種多様な装置が存在する。
メルタについて行ったアテナ、ミツキ、エレン、バン達は三階に着いた。
「皆、一先ず座って概要的な説明をします」
それは決められた生徒側からも聞きたいことがあった。
彼らは特に指定されていないため、適当な位置にメルタを囲うように座った。
「では、今回。なぜ、このメンバーでトレーニングをすることになったのかを説明します」
作戦に参加した生徒達に見た関連する神と以前から収集を行っていた夢の一致が今回のメンバーになった理由。
各神には当時使用していた武器があり、その適性が当事者たちにも影響する。
メルタが担当するのは短距離攻撃が得意な生徒達。サーシャは中距離。マリンは長距離の担当。
グループによって専門とする武器や人数が違うため、一部武器に関する専門家が入る。
「私が担当する短距離攻撃の皆さんは一先ず、剣の稽古をしたいと思います」
「バタンッ!」急に室内の扉が開いた。
「よう! よう! メルタ~。呼ばれたから来てやったぜ~」
無精髭を生やした大男は床に軋む音を出しながら来た。
「うわっ、酒くさ」
男子生徒の一人が彼から匂う強烈な日本酒の匂いに思わず手が動いてしまった。
「菊さん。流石に車の運転は」
メルタがニコっとしながらも、低いトーンで言った。
「あ~。大丈夫、大丈夫。家近いし歩きで来たよ。それに今日はまだ飲んでない」
右手を振って言った。
「なら良かったです」
続けて、メルタは生徒達に彼の説明を始めた。
「この方は剣道元日本代表であり、現在は師範として道場を構えている。一橋 菊次郎さんです」
「おー。菊さんでいいからな~ぁ」
男性は周りの生徒達を見渡した。そして、ある人物を前に顔の動きが止まった。
「なんですか?」ミツキが低いトーンで言う。
「お前……」菊次郎は何かを言おうとした。
しかし本人と周りはそれを許さなかった。
「はい。では、お稽古に入りましょう。はい、はい、はい」
いつものメルタと変だと生徒達は思ったが、師範とミツキの二人を見た数秒を長く経過させてはいけないと思わせるほどのものだった。




