Episode 80
放課後の付属陰光中学。
帰りの会が終わった校内は完全に部活一色という声援が響いていた。
アテナ達、鉱石研究の対象となる生徒達は一年い組に集まった。
ミツキやトリンドル、バン達運動部員達もサーシャから早く終わるからと召集された。
「やあやあやあ、皆」
教室には附属病院の医師、イザベルが一人だけで来た。
「珍しいですね。今日はお一人だなんて」アテナが言った。
「そう、なんか。急患が来ちゃったからその対応で私だけ行って来てって。この後部活の子もいるからサクサク行くよ」
前から研究チームで採択したプログラムを前方から書類を一人ひとり流した。
文字まみれの中に活字人間のアテナにも、嫌な顔にされるような内容が裏表に二ページに渡って書かれていた。日曜日を除いて毎日何かしらあるトレーニング。
今後のプログラムについての説明は早々に終わった。
中には意見を言いたい生徒もちらほらいたのは、用紙を渡した時点で理解していた。だが、今のところはイザベルに説明の余裕はない。
「それじゃあ~、皆頑張ってね~」足早に病院で帰って行った。
「私、もう行くね」ミツキは部活へ向かった。
「私も大変だけど二人とも頑張ってね~」トリンドルも荷物を持って部室へ向かう。
イザベルの説明によって、生活に負担がかかるようになってしまう。ほとんどの生徒は心を決めていた。
中二人は開いた口が解散後もそのままだった。体育部にも入っていない。
放課後の予定の無いエレンはアテナとサーカと話す。
「二人とも大丈夫?」顔を除いて心配している。
「はっ……はいほうふ……はほ……」
口の半分乾いた状態で時間が過ぎていく。だがこの状態になっていても彼女はエレンに心配をかけまいと答える。
エレンには彼女の様子に安心はできなかった。
三人は運動部員や帰宅部員の該当者名簿に登録される。自動的に基礎体力強化プログラムが追加された。
内容には一日学校を五周というノルマ必須マークをつけて書かれている。
仮にサボっているという噂を聞いた。あるいは見かけた場合は他の部活にも協力してもらい各部活に合わせたトレーニングを一緒にしてもらうと明記されていた。
最後のページには手書きの達筆な字で書かれていた。
「サボったやつは体育研究室へ来い!」
この文章は基礎体力強化プログラム該当者以外にも、鉱物の能力向上トレーニングに該当する生徒達に配られた書類全てに含まれていた。
このページを見たミツキが先ほどイザベルに質問していた。だがその答えがなんとも言えないものだった。
「体育科の先生達からの圧力があったんだ」
普段から堪忍袋の緒が切れたら怖いある体育科の教員。
彼女からの圧力があったと言えば、この学校が最悪の状況になった場合はもはや武力によって生徒達を掌握するのではないかと思った。
それは何人かの生徒もいたが、エレンによると歴代の生徒達も似た方法で脅されたという。
これは一周の生徒達に言うことを聞かせる最終手段だという。
そのような学校で果たしていい教育ができるのだろうか。
アテナは真面目に過ごしてNOというときはNOと言える生徒になろうと思った。
「でも……どうしよう……」サーカが涙目でエレンに言った。
「大丈夫よ。今から走りに行けばこの先五周ランニングは軽くなるから」
エレンは三人で走ろうと促す。
アテナ達は体育館の更衣室で体操着に着替え、グラウンドに出た。
真ん中では陸上部が練習をしている。
「うわ~」アテナは両手を組み内に丸々形になっていた。
「走らないと意味ないから、走るよ」エレンが率先して二人を走らせる。
「は~い」渋々アテナが返事をして走り出した。
「待って~。二人とも~」サーカも二人についていく。
「はははははは……」
慣れないランニングに二周目に入り、アテナとエレンはヘトヘトになる。
「二人とも、バテすぎよ。大丈夫?」
エレンは心配して二人に声をかけるが、返事を言う余裕もない。
「こらー‼ まだ、二周目でばてるなー! アテナァー! サーカァー!」
遠くから聞き馴染みの背筋が凍る声がした。
そこには共通の書類に表向きは元気づけ。裏の意味では脅迫の文章を書いた体育教師がいた。
そして完全にどこかの作品に影響を受けて、プラスチック製のメガホンを持っている。
「こんなんじゃ、ミツキ達に送れるぞー‼ あいつらは頭じゃなく、体で動いているんだ。そんな奴らに負けたくはないだろー‼」
皆もうすうす分かっていることを言った。
本人がいないからこそ言える事。
「私の知らないところで、脳筋言うなー‼」
アテナ達よりもある球場からうっすらとミツキの声がした。
「アテナー! サーカー! 頑張れー‼ エレンは……」
「私に言うことはなかったのー‼」
そこからのミツキからの返事は無かった。
「でも、ははは……。これで、ははは……。私、ははは……。行ける……」
アテナはミツキからの激励に気合が入った。
三周目を超えたあたりから、アテナだけペースが上がった。
「すっ凄い、ははは……」エレンはこの短時間の成長に驚いた。
「いや~。アテナちゃ~ん」サーカは急激なペースアップに恐れた。
しかし、二人はアテナの走行ペースに追いつくことは出来なかった。
「ふんっ。できるじゃん」
体育教師はサーカとエレンに集中的にプレッシャーをかける。
十五分かけて三人はグラウンドを五周走り切った。
「ご苦労。三人とも」
「「「は~」」」三人は芝生の上で呼吸の連続をしていた。
「はいこれ」
教員から一枚の厚紙が渡された。
「これは……なんですか?」サーカが聞いた。
「モチベーション維持の為に作ったランニングカードだ。ほら、小学生の時に渡されなかったか?」
「いいえ。何も」エレンはありのままを言った。
「そっか。同じ付属学校なのにそんなところは手抜きとは」
教師はアテナ以外にも基礎体力強化プログラムに該当する生徒達に渡した。
全て百マスあり、全てマークすると凄い事が起こると言う。
「ま、頑張れ。今後の為にも」
「はーい」今日から、アテナ達の自主練習が始まった。




