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妄想能力者と現実能力者の討伐戦  作者: 忽那 和音
Series3 UFW編
81/255

Episode 79

 塔の破壊・解体作戦。通称・バベルの塔作戦から一週間。

 メルタ主導の研究チームとチェンヤオ、ピエールが集まる医療チームは今回新しくチームを拡張する事になった。

鉱物に関する研究をしている理化学研究者達が再編によって新しく参加する。

バベルの塔作戦が終わってから早急に決まったチームの拡張と再編によって、横須賀から戻って来たメルタとサーシャ。医療チームは新しいメンバーを加えて早速会議を行う。

首都の主要施設移転によって、理化学研究所も東京にあった場所から広島に移った。

わざわざ中国地方から昔と比べて幾分か交通網が便利になったとは言え、西日本から来るのはよっぽどの事がなければ来ない。

メルタは壇上の机で会議の準備をする。

 会議室を開けてからしばらくして男女の二人組が会議室へ入って来た。

「こんにちは」

「こんにちは」「こんにちはぁ~」

 豊満な体を持つボブの女性は革ジャンを着て如何にもバイクを乗り回す格好をしている。

 もう一人の男性は低身長で女性と比べれば圧倒的に小柄な体格。だが研究者には申し分ない実績の持ち主。それは招集を受ける絶対条件。見かけで人を判断してはならない。

 だが体形の問題かそれとも内面からにじみ出る弱さなのか。何も知らない人物はか弱い男性と見える。成人男性とも見られる事が少ない気もする。

呼んだ人物は立場などを見ない研究や専門分野に特化している。

 故にこの場に来た事は能力をメルタに認められて来ている。

「適当な場所へ座ってください」

「それじゃあ……」男性は手当たり次第前から三席後ろの席を取る。

 一緒に来た女性も彼の横に座る。

 会議の開始時間が近づくにつれ、初期から研究チームに入るメンバーが入ってくる。

 彼らは初対面の男女二人に軽く挨拶する。

 会議室の秒針が零を指す。

 サーシャは壇上から近い席を取っていた。椅子を引き座る。

「では、時刻になりましたので会議を始めたいと思います」

 会議が粛々と始まる。

「まず、今回からメンバーとして加わる方々のご挨拶から始めたいと思います」

 サーシャは二人に目を向ける。

「それではお願いします」

 男性が立ち上がる。頭を掻いて気怠い表情をする。

「あ~理科学研究所から来ました。ファウスト・アクィナスです。名前言いにくいと思うので、ファウストでも。俺が許す名前なら言ってください」

 最初から眠そうで疲れた表情と声が印象的だった。ため息を付きファウストは席に座る。

 彼の後に一緒に来た女性が勢いよく席を立つ。

「皆さん、初めまして! 私は瓜生 恵です。ファウストと同じ理研から来ました。広島から来ているので、彼の無礼は許容して頂けると幸いです」

 随分と彼をよく知っている対応だ。それもそうだ。石と人との関係など科学的視点から研究している人などこの国を見て片手で数えてどのくらい指を畳む事ができるかと思うほど。

 科学者として生き残っていけるのはどこかに特化した変態だけ。

 時にそういった分野はオカルト的な扱いを受ける事がある。古来より信仰や未知の力を与えるとされてきた宝石や鉱石。

 以来数千年を経過した今。ようやく科学的に解明しようという時が来た。

 自己紹介を終える。恵は大きな胸を揺らして席に着いた。

 メルタは話のバトンを返還された。

「この会議が定期的に開催される可能性が出てきました」

 それはバベルの塔作戦で目にした敵との対立が今後継続する可能性を示した国防省から通達だった。

 初期からいるメンバーは今回を機にこの会が継続的に持続する方向になる。そう予想していた。

「そこで、新しい名称を考える必要が出てきました。という事で、皆さんから一通りアンケートをお取りしたいです」

 各自スマホから送られたメールにはメールフォームに匿名で名前を書く項目があるだけ。しかしいきなり募ってもなかなか書く事は難しい。

「う~ん。なんだろうね~」ファウストが腕を後ろに組んだ態勢で言った。

「すぐに決まるものではありません。期限を設けるので、一週間程度で意見をお聞かせください」

 メルタは話を変えてバベルの塔作戦から今日までの状況や今後の対策について話す。

 会議が終わった。しかしメンバーは会議室に戻ったまま。

 新しいという一見してくだらない作業。しかしこの集まりがどこかで注目される事があるとするなら、後々に名称のセンスが悪ければ当時集まっていた研究者達のセンスが問われる。

 面倒事は今日中に済ませようと何かを思い出すまでおとなしく椅子に座るなり考えに考えた。

「こんなのは? 『未確認物質研究会』的な?」

「イザベル先生。それじゃあ、同好会みたいな名前じゃないですか。もうちょっと、いい名前がいいです」

 一番端に座るカレンが言った。

 しかしこれと言って何かを思い出す事もない。名称のアイディアマンがここには不足している。

「あっ」ピエールが何か思いついた。

「どうかしましたか?」サーシャが声をかけた。

「鉱物はMineral。遺跡と石を造語として遺石にして、Remainsとする。そして、研究会のResearch teamを混ぜて、`Mineral Remains Research Team`。『鉱物遺石研究会』とするのはどうかな」海外育ちらしい外国語中心のネーミング。この意見に対して、互いに目を合わせる。

「これなら、アメリカから説明を受けたら分かりやすいでしょ」

「まるで、仲の悪い国のことを分かった口ぶりだな」チェンヤオが言った。

「まあね」

「では、ピエールの意見に賛成な人は手をあげてください」メルタの言葉に反応した。

 全会一致の数だった。一先ずの補強。あるいは一時的な集まりになるようにという願望を込めて一同は手を挙げた。

「では、『鉱物遺石研究会』。`Mineral remains research team`ということでこれからはお願いします」

 研究会の名称が決まった。

 次にアテナ達のトレーニング内容について議題が移った。

「アテナちゃん達は今どんな状況なの?」

 ピエールが担任のサーシャに聞く。

「あれ以降は毎日登校できています」

 無遅刻無欠席で毎日学校へ通うアテナ達。

 部活の方にも不自由なく毎回参加できている。

「それなら、アテナちゃんは基礎体力の強化訓練を取り入れて、皆と同様に適合係数を上げる訓練でもセットするか」

 チェンヤオとピエールは現在の生活状況と各種身体・体力検査の結果をみて、大雑把な計画を考えている。

「すみません。適合係数を上げるトレーニングって何ですか?」

 カレンが手を挙げて医師達に説明を求めた。

 それは医師やサーシャ、メルタ以外同様の気持ちだった。

「それは私の方から話をします」

 メルタが彼らに変わり話し出た。

 鉱石の適正は力の元になる神と所有者との間の性格的適正、所有する武器への適合で力を与えられる儀式の事前準備が完了する。

 鉱物の所有者が戦闘意欲のある状態になった場合に力が発揮される。

 アテナや当時一緒にいた生徒達は皆、候補者から適合者へランクが移行したとメルタ達は見ていた。

 覚醒済みのアテナと運動部に所属していないエレンとサーカは万が一に備えた体力づくりをする。

「やっぱり、ランニングは一番かな」

 ピエールが基本的な体作りで考えを示した。

「そうだね。でも、ちょっと心配かな……」イザベルは不安を口にした。

「それはなぜですか?」カレンは聞く。

「あの子達、運動嫌いじゃない? ねえ、サーシャ先生」

「そうです」

 あっさりと担任として認めた。

 普段の様子を見ていても体育担当教員から聞いた話でも、あの三人は特に運動することが苦手だと言う。

 エレンは幼稚園から小学生まで剣道をしていたので、ある程度のモチベーションがある。

 これまで文化的な活動を主として来たアテナ、サーカにとっては運動をしようとするところだけでも顔の表情から分かってしまうほどの拒否感も持っている。

「そういえば、アテナちゃん言ってたけど、去年の評価がほとんど四だったのに、体育だけ二とか一だったって言ってたっけ」

 ナタリーがアテナの体育評価情報について言った。

 それはほかの研究会メンバーも同じことを思っていた。

「こうなったら、学校全体で体力向上運動をやるしかないんじゃない?」

 興味なさげにファウストが言った。

「ふ~ん」ピエールは腕を組んで考える。

「朝練をしている生徒達もいるので、なるべく嫌々にならないようにお願いします」

 サーシャは後先に大きい心配を抱えたままこの件は持ち帰ることにした。

 アテナ達基礎体力強化組を含めた適合者チームが共通するトレーニングは、週末祝日を使って行う予定になる。

 運動部所属はほぼ毎日部活へ参加することになるが、疲労による骨折など過度な運動にならないように、調節は医師が主導で行われる。

「それにしても、毎日学校絡みで登校とか。僕は確実にさぼるね」

 やる気のない口調でファウストが言った。

「こら~、ファウスト~。やる気の無くすこと言うな~」

 彼の無気力を跳ねのけようと、ファウストの頭の上に自身の乳房を乗せる。

 腕を首元に巻いて訂正させようと恵が動いた。

「今の発言、訂正しろぉ~!」「だから~それやめろぉ~」

 ファウストは体を左右に動かすなりして嫌がる。しかし彼女の豊満な乳房の下に固定された彼の頭部はなかなか解放されない。

 左右の乳房が上へ行ったり左右へ行ったりと右往左往に動く。

 残っているメンバーのその様子を伺うがどこか目に毒だ。

(それにしても大きいな~)カレンは心の声でつぶやいた。



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