Episode 78
学会の出席でピエール不在の陰光大学医学部附属病院。
しかしこの日は土曜日。医者を始め、当番医、担当の看護師しかいない。
医師達がデスク仕事をする部屋では、今日の当番医であるイザベルがパソコンとにらめっこしている。
「ふぅ~休日手当はでるけど、残業も作るもんじゃないな~」
肩を度々解し、動いたりしながら、これまで溜まっていた仕事を進める。
「ガチャッ」扉の開く音がした。
休みのはずのチェンヤオが入ってきた。
「あれ、今日休みじゃないの?」
「ああ、だがやる事があるから返上してきた」
「ほぉ~」チェンヤオの言葉にいつも通り感心した。
「でも、急患来ても対応してくれないんだよな」
「そんなわけないだろ。人手が足りなかったら、医師として手伝わなければならない。もちろん、給料はもらうけどな」
「ふん」
行った仕事の分はちゃっかりといただくと宣言し達チェンヤオにイザベルはちょっと笑った。
イザベルには分からない事があった。
チェンヤオはイザベルと一緒に仕事を始めた頃から彼が残業をしたところを見た事がない。
急患が来ての残業はやむを得えないが、書類関係で残業とは見た事がなかった。
そんな珍しい姿を見せるチェンヤオに聞いた。
「残業って、もちろん。提出書類の関係じゃないんだよね」
「ああ」
着替えてき達チェンヤオはある人物のカルテを見せてきた。
それは先日見つかった陰光大学教育学部付属陰光中学の元校長・ジョージ・アールヴのものだった。
校長室に呼ばれた副校長のメルタとサーシャによって発見された。
その時の詳細は塔に関係しているとまでしか聞かされていなかった。
精神科医が診察をするものの、言葉を一言も発せられないほどの正気を無くした姿となっていた。
チェンヤオも体の診察をするたびにやつれていく彼を見ていられなかった。
ある医師からはこのままでは死んでしまうと言われてしまうほどだった。
チェンヤオは諦めきれずにいた。
彼の教員としての復帰を願うのは、メルタ、サーシャだけではない。
生徒達全員が願っている。
様子を見に行く事も兼ねて、チェンヤオは彼のもとへ行く。
「あ~私も行くよ」イザベルも気になり見に行った。
後にも先にも真っ暗な世界が続く。
「私は……校長……陰光中学校の校長……どこだ……私の……居場所……は……」
ジョージは永遠と続く、道を突き進む。
遠くからは一人の女性からの声が響く。
「おじ様~あなたは愛する生徒達を傷つけた。副校長も……。会ったらどんな顔をするのかしらね~」
次に男性の声が響く。
「もういいんだよ。ジョージ君。君のお役は御免だよ。ここまでよくやったね。あとは……」
目の前には目がまん丸に真ん中には冷たい中心がある。
彼は続けてジョージの左耳元に向けて言った。
「僕達が君の大切なものを壊してみせるよ。居場所も、何もかも、全部ね」
絶望しかないその言葉に黒い世界がさらに黒い場所となった。
「ハハハハハ……ハハハハハ……ハハハ……」




