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妄想能力者と現実能力者の討伐戦  作者: 忽那 和音
Series2 バベルの塔編
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Episode 74

 バン、慧、ミツキ。その他力自慢の生徒達が、サーシャの頼みで総合の時間で使用した機材などを運んでいた。

 一番重い工具箱を両手で持ったバン。

 何も持っていない状態であっても彼の腕が盛り上がっている事が分かるほど、鍛え抜かれた二頭筋と三頭筋。

 重いものを持つとよりその迫力がよく分かる。

 女子生徒達がその腕に落ちるものが多く、男子生徒や教員達からも一目置かれている。

 だがその世界の中では彼はまだまだひよこ。

 バンは入学前から体操など体を動かす種目をしていたが、男子中高生達が筋骨隆々の肉体と化したところを数多く見てきた。

 中学に入学したら、筋トレをしようと体操競技と並行して、バーベル部に入部した。

 顧問にもその旨を伝えた事から、週に三日の活動を週に一から二回参加している。

 MUSEの活動も中学に入って一緒に追加となった。

 中学に入ってからは三つの部活・クラブを掛け持ちする事になった。

 一つの部活に集中するのが、一般の生徒達の生活。

 バンのみならず、MUSEの部員達は掛け持ちする人が多かった。

 中学二年生に進級した現在、休みもあまりない生活には慣れた。

 むしろ一日何もない用事が出来てしまうと体がうずうずと動いてしまう。

「ふぅ~先生。これでいいですか?」慧がサーシャに聞いた。

「ええ、ありがとう皆。また、お願いね」

 荷物運びを手伝ってくれた生徒達を労った。

「はぁ~い。戻ろバン、慧」

 ミツキは両腕を後ろにあげ、二人と並んで二年い組の教室へ戻った。

「ブルブルブル……」

「どうした? バン」

 突然、左右を小刻みに震えたバンにミツキはどうしたのかと聞く。

「いっ、いや……、なんでも」

 言いたくないという顔をして否定した。

「そういえば、バン。最近、寒気がするとか言っているけど、大丈夫か?」慧も心配する。

「それが……」バンは事情を話した。

 今年の二学期・終業式に気絶した後から、たびたび寒気や鳥肌が立つなどの症状が起こるときがある。

 生活にまで支障はないが、それでも気味が悪く感じるという。

「それ、先生にも相談したの?」

 ミツキは附属病院の通院時に言ったのかと聞く。

「それはした。でも、特に問題はないって」

 石の保持者は地球レベルで言えば、まだ陰光大学の生徒達のみという非常に少ない数。

 後遺症などの話はまだ聞いていない。

 それでもその可能性は払拭できなかった。

「また、具合悪くなったら言えよ。バン」

 慧は気の利いた事を言った。

「ありがとう。慧」

「あ~二人だけでイチャイチャして。私とトリンドルも怒るぞ!」

 ミツキは腰に両手をついて軽い怒りを放った。

「いや、これはイチャイチャというものではない」

 バンは真面目な顔をして否定した。

 三人と手伝いに行った生徒達とサーシャは教室に戻ってきた。

「はぁ~。ただいま」

 仕事や学校から帰ってきた訳ではないが、教室に入った時に帰ってきた時に言う言葉を言った。

「おかえり、ミツキちゃん。バン君。慧君」

 トリンドルがその言葉に答えた。

「ねぇ、聞いてよ。トリンドル」

 彼女へ向け、移動中の話題を持ち込むミツキ。

「どうしたの? ミツキちゃん」

 トリンドルは聞いた。

「バンと慧の二人。イチャイチャして、私が何かあったら助けに来てくれないんだよ」

 少々話を捻じ曲げたように聞こえたバンと慧。話は止まらなかった。

「え~それはひどいよ。私達、同じMUSEの運動担当だったのに~!」

 トリンドルは自分達を放置して二人で楽しい事をしようとしている事に怒った。

「いや、そんな事……考えた事がない……」

 バンは考えてもいなかった事で、怒るトリンドルを悲しく思った。

「運動部を並行していたら、運動担当になるのか……」

 慧は今まで命名されてこなかった運動部と並行する部員の通称を初めて知った。

 運動担当という名前はトリンドルが考えたものだ。

 い組生徒達が集まり、帰りの会が始まった。

「起立!」日直の生徒が指示を出す。

「明日も元気に学校へ来ましょう。さようなら」

「\\\\\さようなら! /////」

 荷物を背負った生徒達は部活へ向かう生徒。予定の無い中学生。

 帰宅部員達が溢れていた。

 バンと慧は部活へ向かう準備をしていた。

「バン、今日はバーベル?」慧が聞いた。

「ああ、最近。先輩達が夏の試合で追い込んでいるから自分も行かないとな、と」

 目標が試合という訳ではないバンだが、自分のモチベーション維持のためにもその環境に身を置きたいと思っている。

「頑張れよ」バンに気持ちを送った。

「ああ」バンは先に教室を後にした。

 校舎を出て、廊下を通り過ぎる。

・・・・・・

 壁に貼られた不審者注意ポスター

 特徴 髪:ミディアムロングのチェリーレッド

    服装:黒のミニスカートに白シャツ

 身長 1〇〇cm

 出没場所 バーベル部・練習場

・・・・・・

 バーベル部・練習場。

 器具などを常時使用するため、年間を通して使用可能な部屋が設けられている。

「お疲れさまです」バンは先にいた三年生に挨拶をする。

「お疲れ、バン。悪いが器具を拭いといてくれないか」

 上下関係の厳しい部活。

 先輩の言う事は絶対となる。

「はい、分かりました」

 文句の一言も言わず、近くに置かれた器具の掃除用の雑巾で丁寧に拭いていく。

 ほとんどの器具の拭き掃除が終わった。

 着替えのために更衣室へ移動する。

 タンクトップに半ズボンという服装で練習場に入ってきた。

 集団で挨拶をする前に体を柔らかくするストレッチを行う。

 着替え後。バンはこの時からどこからかの視線を感じている。

 何度かあたりを見回した事があるが、そこには誰も自分を見つめる人物はいなかった。

「はぁ~い、こんばんは~」

 扉を開けて入ってきたのは、バーベル部顧問。

 コーチが二人いるため、顧問は教員室でデスク仕事をする事がほとんどだ。

 教科担任として十数クラスを担当している教員は、教師達の業務を改善していった。

 部活の顧問として多少はかかわらなければならない。

 合間を縫って、顧問はほとんどの生徒達がいる時間を狙って身に来る。

「はい、それじゃあ。皆頑張ってね~」

「\\\はい! ///」顧問は練習場を後にした。

「練習に戻るぞ」

 バーベル部・部長は皆を練習へ戻るように促す。その時だった。

 一瞬、バンの体に寒気がした。

 腕を見てみれば、筋肉で盛り上がった皮膚に鳥肌がびっしりとかかっていた。

(なっなんだ! この感覚……)バンはあたりを見渡した。

 ここは二階。目隠しのためにかけられているカーテンの奥は全面、ガラス張りとなっている。

 当然、バンを見る者は誰もいない。

(また……気のせい……か)

「どうした? バン」同級生の部員から聞かれた。

「何でもない」練習に戻った。

 真っ暗の中に煌々と光を放つパソコンを見つめる。

「ハーハーハーハーハー」息荒く牛乳を飲んでいる。

「いい筋肉だ」

 彼女の見ている映像には、附属中学のバーベル部員達がトレーニングに励んでいる中継映像だ。

「はぁ~いい二頭筋だな~。かじりたいな~舐めたいな~」

 暗い中見ているため、目はより痛みやすくなってしまう最悪の環境。

 通信状況から近くで見る方が筋肉の細部まで見る事ができる。

 仕事中で見る事のできない場合は普段、録画した映像を見ている。

「この筋肉なら、次の試合はいい成績が納められそうだな。流石わ、キャプテン」彼女の本命は部長ではない。

「おぉ~! バ~ン! いいぞいいぞ。私をもっと満足させてくれ!」

「ガチャッ!」部屋の出入り口の扉が開いた。誰か部屋に入ってきた。

 室内は明るくなった。

「あれ~誰かいたような気がしたんだけどな~」看護師の一人が室内を見に来た。

「美紀! 帰るよ~」

「は~い! 気のせいか」女性は部屋の明かりを消し、扉を閉めた。

「は~。狭かった」隠れていた女性は更衣室のカーテンに隠れていた。

「でも、良かった~。私の彼氏(たからもの)を晒しては元もこうもないからな。フフフ……」

 パソコンを開き、再び映像を見る。

「待っていてくれ、バン。私が必ず抱いてやる」



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