Episode 72
会議開始から一時間が経過した。
予定では六時には終わるという話だったが、メルタは話を進めた。
地球がある世界はあくまでいくつもある世界の一部でしかない。
それらは独自の色を持っている。
アテナが出会ったのは、地球とはまた別の世界。
それは青の世界。
基本的には各世界の調和を図る目的でギリシャ、北欧、日本などの神話級の神々が会議の為に集まる。
元はヨーロッパの神々の住処。
彼らはそこに存在している。
現在は時代に伴い旅館やホテルが営業している。
「何とも現代的な世界なんですね」アテナは言った。
アテナが円卓会議の部屋で出会ったという女神・アテナはギリシャ神話のオリュンポス十二神として世界の均衡を保つ一人。
「出会った皆さんは思っていたかもしれませんが、神々はその場に鎮座して真面目に仕事をする者達だけではありません。なので、下校時と一緒ですが、悪い人にはついて行ってはいけません」
「\\はい! //」
三人とも真面目に返事をした。
「では、アテナさんが一番知りたかったと思いますが、入院中についてお話をします」
メルタは個人情報を含む部分は非公開のまま、共有する部分だけこの場で公開するという。
ここからは医療チームのチェンヤオとピエールも会議の中心に関わる。
アテナは作戦終了後の日から三日間一回も起きずに寝ていた。
その後一週間、検査入院をしていた。
アテナに多くの検査機を通してもらい情報を収集した。
結果として以前には活発に動いていなかった脳の部分が動いていた。
また一部筋肉の密度も上がった。
急激な筋肉の使用により、回復までに時間がかかった。
医師達は石の力に合わせようと無理やり身体が動いた事により負担がかかった。
そのためアテナは武装トレーニングの他に基礎トレーニングを追加させる。
時刻は既に六時半を超えていた。
「それでは以上で、今回の会議は終わります。長くなりすみませんでした。アテナさん達は特に気をつけて帰ってくださいね」
「\\は~い//」
アテナ達は荷物を持ち、会議室から階段を降りた。
中高層の建物を出たアテナ達は南へ向けて歩いた。
外に出たアテナ達の耳には南に位置している付属高校から聞こえる野球部とサッカー部。
大学グラウンドからはラグビー部の練習中の声が聞こえる。
きっと、女子ソフトボール部の練習も続いている。
アテナは夜空を入れた目とそのような気持ちに浸っていた。
アテナはこの場にいるエレンには別世界から与えられた神の話を聞いたが、もう一人の話を聞いていなかった。
「ねえ、サーカちゃん」
「うん? 何、アテナちゃん」サーカが不思議に思った顔をした。
「サーカちゃんは別世界の神様って、どんな人だった?」
「あぁぁぁ~アテナちゃん。その質問は……」
エレンは両手を上げて震えた声で言った。
「どうしたの? エレンちゃん。私、どんな人だったかと……」
アテナはエレンの反応に不思議に思い言った。
「いっ、いや、そっそれは……。その~~ざっくりと言うのは大丈夫だと思うけど、その内容とその場の状況についてはあまり……」
「大丈夫だよ。エレンちゃん。アテナちゃんも。私の神様はいい人だから」
サーカは優しい顔をしていた。
その優しさは街灯の明かりによって、より柔らかに見えた。
「そうなんだ。それなら良かったよ」
良い神が力を与えてくれたとアテナは安心した。
「エレンちゃんも、そんなに心配する事ないと思うよ」
「でも、内容的にー!」
彼女は珍しく落ち着きが無かった。
「エレンちゃん」サーカから名前を呼ばれた。
その時のサーカの背後には塔の時とはまた違う黒い霧が広がっていた。
「は! なっなんか……ごめんね……」
申し訳ない表情と姿勢で謝った。
「ぜーんぜん大丈夫だよー」その時のサーカが怖かった。
陰光大学教育学部付属陰光中学・教員室。
大学の会議室から戻って来たメルタとサーシャは残りの仕事を終えようとしていた。
書き終えた書類の提出を終えたサーシャは帰宅の用意をしていた。
「サーカさん、何か性癖に目覚めてしまったか心配になるのよね」
「また、その話ですか。メルタ先生。でも、そうですよね……」
作戦終了後・基地にての事。
作戦中に隊員達が基地へ戻されたため、メルタ達だけで出来事をまとめて書類提出のために生徒達に書類を書かせていた。
先に書き終えたメルタはその内容に驚愕した。
まさに、十八禁ものの内容だった。
「サーカさん……。その内容でいいの?」恐る恐る聞いた。
彼女はにっこりとした。
「はい。事実を捻じ曲げるよりもあるがまま書いた方が信ぴょう性は高いですよね」
彼女の曇りの無い瞳は真摯に事を納める姿勢に見えた。
「まっ、まあ……」
眼差しにより、メルタは内容をオブラートに包んだ表現にするようにとも言えず、そのまま提出となった。
「はぁ~私、教師として失格よね」
「そんな事はありません。そのような現場を見たらすぐに逃げ出すように指導しなかった私の責任です」
そのまま数分間は責任の譲り合いが続いた。




