Episode 70
午後三十分過ぎ。
研究チームの代表。メルタ・エーマンから召集の通達があった。
塔の崩壊・解体作戦。通称、バベルの塔作戦からアテナの石の発動までの一連に話したい事があるとの内容。
アテナ達中学生チームは練習があって不参加の運動部組を除いて、放課後に会議室へ集まった。
「では、皆さん。集まりましたので、今後の鉱石に関する研究についてこの場で話と意見を交わしたいと思います」
メルタはその場が混乱しないように箇条書きで今回の内容について話す。
今回は新しく加わる研究者や大学院生なども加わるため、その紹介。
先日アテナ達が参加した塔のバベルの塔作戦についての反省。
作戦時に覚醒したアテナの鉱石の力について。
アテナの覚醒時とその後の検査を参考に鉱石の保持を今後も認める生徒を対象に、トレーニングプログラムの導入。
「以上が、今回の議題にあげるものです。まあ、初見の方々が多く、疑問を感じた事は挙手して頂いて構いません」
メルタは潔く、疑問や意見を受け入れる事を宣言した。
「まずは、誰が誰だか判別がつかないと困るので、一人ひとり自己紹介から始めたいと思います」
メルタ、サーシャの付属中学の教員から始まった。
以前から研究チームに参加するカレン、ナタリー、カルメン・トルエバ達人文学系の研究者と大学院生。
医療チームとして昨年の夏から生徒達の検査・分析を行って来達チェンヤオ、ピエール、イザベル。大学院生のナタリア。
今回から本格的に研究チームの研究対象となる生徒代表として来たアテナ、エレン、サーカ達。
アテナ達と同じく今回の会議から医学とは関係ない理系の専門家として、理学研究所からファウスト ・アクィナス。瓜生 恵の数人が参加する事になった。
ファウストは席を立ち、挨拶をする。
「あ~、どうも。陰光は何度も来ているけど、相変わらず校内が広いから分からなくなりそうでした。どうぞ、よろしくあねがいじまず~はぁ~」
彼は人前で話すのにもかかわらず、気を抜いてしかも、最後はあくびをしながら挨拶をした。
(駄目だ駄目だ。こんな大人になってはいけない!)
アテナは自分の心を鬼にして、乗せられないようにしようと決めた。
続いて、隣にいるナイスバディな女性が起立した。
「皆さん。初めまして、瓜生 恵です。ここら辺の大学の理学部で教鞭をとっています。今回は同級生のメルタからお願いされてきました。よろしくお願いします」
瓜生はファウストと反対に、落ち着いて真面目に礼をした。
「では、理系分野の皆さんを読んだ理由にも重なるけど、塔について共有をしたいわ」
いよいよ、アテナの知らない塔の行方について聞かされる事になる。
「テレビの報道で知った人も多いと思うけれど、例の塔は根元から全て消失したわ」
その言葉は、アテナ達よりも先に潜入した隊員達の死を示していた。
「残念ながら、日米で海底まで探したけれど、沈んだ船もなくなったそうよ」
残酷な言葉にアテナは呼吸が重くなった。
彼女の口からは、アテナ達が関わった部隊だけは皆、怪我をしたものはいたものの、死者がでなかっただけ、幸いだったと作戦の隊長が参加した生徒達に伝えてほしいと言われた。
亡くなった隊員の皆さんの気持ちも含めて、中学生のアテナさん達にとっては重い。
寄り添って欲しいと隊員一同で言われた。
今後も、事後処理で話を聞く事がある。その際は、メルタやサーシャも一緒に対応してくれるとの事だった。
「三人や他の人達もよろしく言っといて」
メルタは三人からミツキ、バン、トリンドル、慧にも伝えるように言った。
「次に、これを見て欲しい」
パソコンのマウスを左クリックした。
画面のページが変わった。
そこには神々しい空が広がる中心に一人の人物と向かい合うように黒く悪に満ちた色をした女性がいた。
まずこの写真自体どこかの合成画像ではないかと思ったアテナ。
メルタの言葉によってその幻想は現実へと変わった。
「これは塔の崩壊直後のアテナさんと敵が向かい合っているところです」
すぐには理解する事はできなかった。
「えっ? えっ? ええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
アテナは声をあげた。
「あ~サーシャ先生。説明まだだった?」
「はい、そうですね。一応、ピエール先生には説明しといてと言ったような気もしましたが……」
サーシャはピエールの方を向いた。
「いいえ、言われていません」
ピエールは戸惑いながらも、少々棒読みで疑われるような拒否の仕方をした。
「は~私達の情報管理をしっかりしなければいけませんね」
呆れた顔をしたメルタ。
彼女はアテナの上空の写真に戻した。
「注目してほしいのはアテナさん自身ではなく、アテナさんの纏っているものです」
アテナ達生徒を始め、参加者全員はよく見た。
「確かにというより、パッと見で出発した時とは完全に服装が違うよね」イザベルが言った。
「そう、実際に海上から海岸部に移動した人達は知っていると思うけど、服装が違うわ。それが鉱物に宿る力の完全武装形態の一つです」
(完全武装……)
ミツキがこの場にいたとしたら、いう事が中学生三人には考えられた。
(うわ~かっこいい! 私もやりたーい!)
その後の回復に時間がかかった事は頭に入っていた。
そこまで至った代償が三日間の睡眠と一週間の入院だった事をアテナに身に刻んでいた。
「武装には何段階かあります。まだ部分的に武器を出現させる段階を飛ばして全身を武装化する人はごく稀です」
「それじゃあ、その影響が体にも出たという事ですか?」
エレンはメルタに質問した。
「詳しくは診ていただいた先生方に聞くのが良いですが、簡単に言えばそういう事です」
彼女の言った一週間の入院の原因が急激な武装仕様のバッグファイアだった事を認めた。
「石の力には未知数の部分が大きいです。ですが、これから詳しく解明していけば、今後さらなる脅威に対抗する事が出来る力を人類は獲得します」
メルタは今後の脅威に、キュバリルのような強敵に対抗しえる力の育成を考えていた。
「あの~ちょっといいですか?」
けだるい男性の声がした。
彼は先ほど、やる気の無い挨拶をした理学研究所職員のファウスト ・アクィナスだった。
「敵に勝つための研究のために皆を集めたのはいいですけど、子供達を集めて他に何か企んでいませんか?」
彼は今日一番の暗いトーンで言った。




