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妄想能力者と現実能力者の討伐戦  作者: 忽那 和音
Series2 バベルの塔編
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Episode 69

 入院してから一週間後。

 記憶の一部喪失や勘違いなどが多かった。

 無事に予定通りに学校復帰できた。

 アテナはいつも通り、学校へ歩いて登校する。

 去年は緊張しながらも下り上り平坦の道を歩いていた。

 今は生きていた良かったという気持ちがバケツ一杯になっていた。

「はぁ~。あたたかい香りがする」

 中学の校舎に入ったアテナ。

 いつもよりも遅く着いた校内には既に多くの生徒達がいる。

 この時間に普段正面玄関にいないアテナにとっては少々違和感がある。光景と歪んだ腹時計の時報が偽の昼食時報直前の針を示していた。

 階段を上り、新年度が始まってからまだ一か月も登校ができていない。

 クラス階数と階段付近のクラス名をよく見ないと間違えて他学年、他クラスの部屋に入室してしまいそうになる。

 アテナが所属する二年い組の教室前までやってきた。

 まだ気が和まない中、入室をした。

 窓には綺麗な青空が広がっていた。

 それは唯一の気持ちの晴れ所だった。

「アテナ!」

 入室をして左から馴染みのある声がした。

 声のもとへ体を向けると、それは友人のミツキ。

 彼女の周りには同じく作戦に参加したエレン、バン、トリンドル、慧、サーカがいた。

「大丈夫~? アテナちゃん」

 トリンドルがアテナのもとへ行き、声をかけた。

「うん、元気だよ。皆も無事でよかった」アテナは笑った。

「びっくりしたよ! アテナまさか、私達の上で……ぐへっ!」

「しー! これ以上は駄目!」

 ミツキが当時の状況などをアテナに感想と共に述べようとしたところで、エレンが彼女の口を塞いだ。

 アテナも希和子やピエール伝いで知ったが、軍も関わっている事なので、学校などではしっかりとした会議以外では口外しないようにと口止めをされている。

 まだまだ中学生という立場のアテナ達にとっては非常に難しい事だ。

 何かのきっかけにうっかりと話してしまいそうになる。

 お互いに機密情報を漏らさないように、二人以上で非関係者との間の会話はする事にしようと思いおもいの工夫をする。

「皆さん、おはようございます。アテナさんも」

 黒板側入口にいるアテナの後ろには担任のサーシャがいた。

「丁度良かった。皆、今日の放課後は空いてる?」

 アテナ達に放課後の予定を聞く。

「あ~私は部活……」

 ミツキは女子ソフトボール部の練習がある。

「私もです~」

 トリンドルも水泳部の練習が入っていた。

「分かった。文化系の人達が空いていればいいわ。特に、アテナさんに来て欲しいから」

 放課後に陰光大学の会議室で反省を伴って、今後の方針について話し合う事になった。

 放課後。

 運動部組のミツキ、トリンドル、慧、バンを除いたアテナ、エレン、サーカの三人で大学へ向かった。

 三人で歩いている大学構内。

「ばたばたしている中に桜が咲いて、散って。塔に入っては、壊れて、助かった」

 アテナは去年とは違う時間の流れの速さをしみじみに感じていた。

「急にどうしたの? アテナちゃん」サーカが聞く。

「今後もこんな事が毎日のように起きたら、まともに中学校生活を楽しめなくなっちゃうのかなと思って」

 それは、この場にいるもの以外に作戦に関係している人々、適性の選別に関わった人物全てに共通するものだった。

「起きたばっかりなのに、暗い顔しないの! 二人とも」

 目の前をパンッパンッと叩いて、エレンは二人の気持ちを標準に戻した。

「あははは……らしくなくてごめんね」アテナは謝った。

「そんな事はない。アテナちゃんはいつも真面目でいい子。ゆえに、思いつめすぎてしまうのよ。サーカも」チーフの立場で言った。

「ありがとう、エレンちゃん」

 三人は会場となる陰光大学施設内の会議室前に着いた。

 アテナを先頭に会議室の扉を開ける。

 そこには既に数人の研究チームがいた。

 扉の先にはプロジェクターの準備をしているカレンがいる。

「カレンさぁ~ん」

「アテナちゃん! 皆!」

 アテナ達はカレンのもとへ向かった。

「良かった~。皆、元気そうで、ミツキちゃん達は?」

 この場にいない中学生達の事を心配して言った。

「元気ですよ。今日も元気にふざけていましたから」

 エレンは腰に両手をかけて言った。

「ふふふ、想像がつく」

「ですよね~」

 カレンとエレンは名前が似ているだけではなく、ミツキに関する妄想までも一致していた。

「本当に良かった。皆無事で。私があの場にいたら、何もできずに犠牲者に数えられていたと思うから」

 カレンが口にした通り、軍関係者の犠牲も発生した今回の破壊・解体作戦は危険なものだった。

 そのミッションを無事クリアしたアテナ達は、学校として研究チームの名を公開していないものの、誇れるものだった。

「あっ、あと。今回から研究チームの人数増えるらしいから、出来るだけ詰めて座ってとメルタ先生が言っていたよ」

「へぇ~人数が……」

 予想されるのは、今回の作戦で石に関する全貌を知った医療チームのピエール、チェンヤオ、イザベルくらいだろうと言っていた。

 もう一人。アテナやミツキ達には大切な仲間がいた。閏間 希和子。

 席に着いたアテナ達は彼女について話していた。

「希和子ちゃんも来るかな」

 アテナは彼女の研究チームへの参加を心待ちにしていた。

「さぁ~」

 エレンは確証も取れない参加に可能性の低さと関係する事への身の危険を考えた。

 参加する事、関わる事、仲良くする事が嫌という訳ではない。

 作戦へ参加した自身の体験から内容によっては死亡もあり得る危険な任務を関わらせるのは、危ないと思っていた。

 あえての傍観者を装う反応を示した。

「でも、基地へ帰って来た時に希和子ちゃんはいたわ」

 サーカの当時いた人達の事を思い出した。

「なんでだろう」

 目覚めた後に彼女に会ったものの、唯一の事だけがアテナの中心には残っていた。

 アテナ達が会議室に入室してから二十分後。

 午後五時を過ぎ、ぞくぞくと研究会議の参加者が入って来た。

「わぁ~。見かけた人達もいるけど、皆博学って感じの雰囲気だね」

 入室してくる参加者達を見て、感心していたアテナ。

「それは勿論。そもそも陰光大学自体、国内ナンバーワンの学校だから、トップの成績が無ければこの学校や系列では生きてはいけないからね」

 エレンの顔を見たアテナには目から炎が噴き出ていた。

「エレンちゃん、変に対抗意識向きだしにしないで~」

 エレンの瞳と心を消火しようと活動するサーカ。

「あら~アテナちゃん達~」

「あ! ナタリー先生」

 ナタリーとアテナ達は歴史の授業で週に一回専門の講師として授業をしに来る。

 度々会話を交わすほど仲が良い。

「今日はミツキちゃん達、部活か~」

「はい。そろそろ、大会も近いので皆、部活ではピリついているらしいです」

 運動部組の近況をアテナは話した。

「残念だな~中世フランスのレシピを基にお菓子を作ったんだけど」

「あ~お菓子担当はトリンドルちゃんですね」

 MUSEメンバーには食事担当とお菓子担当が存在する事を知らなかったナタリーにサーカは言った。

「あれ? そうだっけ。まぁ~今度私の研究室に来てと言っといてくれる?」

「は~い」エレンは大人しく返事をした。

 アテナ達と会話をした後。

 ナタリーは生徒達の三つ後ろの座席へ座った。

 続々と関係者が入って来る。

 そこには、ピエール、チェンヤオ、イザベル、ナタリアもいた。

 だが、そこには希和子の姿は無かった。

(そっか。そりゃあ来ないよね)

 高まっていた期待が一気に標準値へ戻った。

 この会議を取り仕切る会議の議長であり、発起人のメルタ・エーマンが入ってきた。

 重そうな書類を持ってきたメルタは壇上に置いた。

 両手を卓上についたメルタは口を開いた。

「皆さん。お集まりのようなので、会議を始めたいと思います」


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