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妄想能力者と現実能力者の討伐戦  作者: 忽那 和音
Series2 バベルの塔編
66/255

Episode 65

 横須賀基地。

 塔から移動した隊員や作戦参加者が転送された当時。

 帰還してきた隊員と参加者達の診察が終わった。

 ピエール、チェンヤオ、イザベル。作戦には関係の無い希和子は怒涛の問診を終えた。

 塔は遠くから見た様子ではこれまでに見なかった無数の長方形による空洞が無数にできていた。

 それは基地からの望遠鏡でしかかすかに確認できなかった。

「痛ってててて……」

 同じく転送された慧は室内で横になっていた。

「あら、起きたかしら。慧」

 隣にはソファに座っているポーレットがいた。

 彼女の服装は先ほどのスーツ姿ではなく、アメリカ軍の軍服となっていた。

「ポーレット、どうして? さっき、来ていたスーツはどうしたんだよ」

 慧は出発時の服装との違いについて聞いた。

「あのスーツはもう使えないわー」

 彼女は数時間前まで見た元気な姿とは正反対の反応を見せた。

 ポーレットから渡されたスーツは特別仕様で、ある程度の攻撃を吸収しダメージを軽減。

 攻撃を与えるときは本来の力にスーツのシステムから作られたパワーを足して攻撃をする。

 転送後。ポーレットが確認したところ、システムの核となる部分が半導体もろとも破壊されていた。

 自分と仲間達で作ったシステムがこうも簡単に破壊されてしまった事。

 ポーレット自身ショックを受けていた。

 試作品だった今回使用したスーツ。

 塔から移動した原因も詳しく分析してみないと分からない事が多い。

 だが自分達の技術がこの作戦で役に立てなかった事にポーレットは落ち込んでいた。

「また、頑張れいいじゃないか。それに俺はもう、この実験的なものには関わっている事だしな」

 そういい、病み上がりの慧はポーレットの肩を叩いた。

 ポーレットは膝上に置いていた手を握った。

「そんな事、あんたに言われなくても、やってやるわよ!」

「おおー、いつもの感じが出て来たな」

「うるさいわよ!」

 慧の言葉にポーレットは無理やり正気を取り戻した。

「こら、うるさいぞ! 金髪ツインテール」

 患者の見回りを行っていたイザベルに騒いでいるポーレットを注意した。

「あっ、So Sorry. But, I don't my name golden twin tale. My name's Paulett」

「日本語でしゃべりなよ……」

 慧は常識的なところを突っ込んだ。

 横須賀基地・沿岸部。

ピエールと途中から来た希和子は家に届いた鳳凰の印が刻まれた書簡を見ていた。

「ピーエル。この書類って、宮城からの……」

 希和子のみならず、この印を見たものは誰しもが細かい差出人はともかく、大幅な予想はついた。

「皇帝、直々に書簡が届くとはまだ決まったわけではない。けど、不思議だね。なんで、この事に関係した人の家が分かるって思ったんだろう」

「私にも分からない。けど……、皆が塔から落っこちちゃって溺死しちゃう夢なのか。なんなのか……。そういうのを見た……」

 国家の一部機関である宮城が希和子を基地内へ入場可能にする為だけにこの書類を発送した事は希和子にとって、都合の良い話だった。

「親族にその関係の人がいるっていう事は、聞き覚えは?」

「なんとなく。でも、連絡は誰ともとった事はないから、遠い親戚かな。赤の他人って言ってもいいかもね」

 父方の家族は顔も知らずに育った希和子は母方の家族だけが唯一、家族なのだろうと思える存在。

 今更、このような書類が来たところで、希和子の生活が変わるものではない。

 本人もピーエルもそう思っている。

「急に知らない人から家族にならないかと言われても、もちろん嫌だと言うわ」

「僕とは?」

 ピエールが突如、プロポーズの宣言と感じさせる事を言ってきた。

 希和子は落ち着いてに答えた。

「ピエールとは何も知らないわけではないから、家族になってあげても良いわ。」

「随分と上から目線だね」

 国家トップの機関からの書簡から戸惑いを感じていた。

 時間の経過につれて希和子は落ち着きを取り戻した。

 だがピエールにはもう一つ謎が生まれた。

 希和子が作戦について詳細を伝えていない。

 彼女は塔が崩壊し、参加者が海上へ打ち付けられ、最終的に溺死してしまうと言った。

 ピエールの元へ来た時から思っていた。

 その場へ行かなくても道過ぎも全てなんとなくという曖昧な中で正確に目的地へ到着した事。

 普通ならどのくらいの確率で調べずに着くのか。

 統計を見たいところだ。

 このような出来事が起こるのはごく稀な事。

 数も少ないため、希和子の力が予言なのか。

 それとも、まぐれなのかは今後の彼女へ様子を度々注視する必要があった。

「ピエール……塔が……」

 希和子は沿岸部へ指を指した。

 それはアテナ達が現在も破壊・解体作戦が実行されている塔だった。

 望遠鏡を持たなくても今起こっている状況が分かった。

 塔上付近の外にいたのは、黒い衣を纏った女性。

 チェンヤオは持っていた望遠鏡を通して女性の姿を見ていた。

 黒霧によって作られた羽を除いて、細かく見ていった。

 黒い衣と霧を透かして見えた彼女の姿は、完全に好みの要素を完璧に持っていた。

 可愛らしい足元。

 人々を誘うふくらはぎから太もも。

 桃のように柔らかいおしり。

 上空の冷たい空気と彼女を戒めるものによってキュッとしまったお腹と背中。

 男性の欲望と女性の憧れが詰め込まれた胸。

 街中で見る事の無い表情は彼の心をゾクゾクと昂らせるものだった。

 チェンヤオは思わず口にした。

「でかい……」

 塔内部・最上階。

 アテナ、メルタ、サーシャ。同じ陰光生は初めて浮遊した感覚を感じた。

 同時に、下には海底深くまで続く海上に打ち付けられる恐怖を纏っていた。

 最後の希望を左手に感じたかったアテナは地面が無くなった時には、一瞬にして絶望に変わった。

 目の前に広がったのは清々しい。曇りない青い空。

 この空のようにアテナの気持ちは純粋に一緒にいる人達の事を守りたい。

「メルタ先生。サーシャ先生。ミツキちゃん。エレンちゃん。バン君。トリンドルちゃん。サーカちゃん。皆……」

 海に背を向けていたアテナの目の前には神々しい光が広がった。

「うわっ! まぶしい。一体……はぁ!!」

 浮遊していたキュバリルの目の前には、先ほどの姿とは全く違う黄金の輝きと青天の衣を纏ったアテナがいた。

「絶対に、皆を殺させはしない!」



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