Episode 62
扉の向こう側に広がったのは神々による円卓会議だった。
アテナの目の前には女神・アテナが目の前に立っている。
彼女は白い衣服にオリーブの飾り、金の首飾りなどが飾られていた。
「門番が無駄話をしている間にあなたの審査は終わりました。あなたに私の力の一部を渡します。既に覚醒の前段階まで来ているとは思いますが、使いこなせるかはあなた次第。けど、この状況を出来るのもその石の力を持つあなただけよ」
一方的に話を進められ、アテナには理解に苦しむところが多かった。
「あっ、あの~。急に使者候補だとか、使者として認定されていますけど、一体私とあなたとの間に何があるのですか?」
「ごめんなさい。時間が無いから詳しくはメルタに聞いて……次よ。ヤーヌス」
一方的に話を止められた。しかし、メルタの事を知っている様子。
最後に女神・アテナは中学生のアテナに言った。
「皆。所属や立場は違うけど、仲良くやるのよ」
お母さんが口にするような台詞を女神から言われる。不思議と大きな違和感は無かった。
アテナの手から光輝いたものがペンダントに贈られた。
「はっはい……」
最後まで状況が読み込めなかったアテナはありきたりな返事をするしかなかった。
・・・・・・
これまでの作戦進捗状況。
塔内に侵入した日本海軍破壊・解体作戦特別小隊とアテナ達陰光大学教育学部付属陰光中学の生徒。
教員のメルタとサーシャはほとんど時刻に塔内に侵入した。
上下無限に近い螺旋階段を最上階目指して、彼らは上った。
五十階手前の階層で液体状の自立型生物が正体を襲う。
液体状の自立型生物は創作上の話で定番のように登場するスライムに近い存在だった。
アテナ達の世界ではそのような生物は現れていない。
そのため、想像上のものの名前をそのままの名称として使う事が出来なかった。
隊員達は、所持していたピストルのみが唯一の戦う手段であり、切り札だった。
生物は隊員達に襲い掛かり、服や肉体を分解。
肉体にまで被害が及んだものは傷口が火傷した形となった。
最終的に作戦に参加した隊員、六人が軽傷、四人が重症の火傷を覆った。
救援要請に従い、現場に到着した化学班は塔内を確認した。
発生元が分からない液体状の生物は、建物にダメージは与えない無害なものだった。
日頃、理化学研究所などとも研究を共有しているが、自立型の液体状生物で人を攻撃するものは聞いた事が無かった。
化学班は負傷した隊員達を救出のために階段を上っていくが、あまりにも多い階数と防護服に彼らは苦戦していた。
その途中。
上の階で何かが光輝いた。
それはアテナの持っていたブレスレットに埋め込まれている石が発した光だった。
光を発していた状況までは皆、分からない。
各々、脳内の出来事、共通に見た夢。または現実の事だったかは不明。
唯一分かっているのは使者候補として石の力を持つ者達は各々、神々に呼ばれていた。
塔内に光が広がっている瞬間に行われたのは力の継承だけではなかった。それは、選別の光でもあった。
その瞬間はピエール達海軍基地にいる医師や駐在担当の隊員が目の前にしていた。
塔から基地敷地内に移動したのは小隊の隊員全員、アメリカから来日したポーレット。
ミツキと後発隊第二分隊として参加していた金城 慧。
医師達は目を疑った。
だが、一部帰って来ていない者達の事も気づいていた。
そして、力の継承と選別後の現在。
アテナ達も放出後に移動していた。
(回想終了)
・・・・・・
「ん。こっ、ここは……」
階段の途中で横になっていたアテナ。
上や下にはミツキ、エレン、トリンドル、バン、サーカが寝ていた。
その格好は横になったり、壁に背中をついたりなど様々だった。
「は~無事……?」
人数を減った事に気がついた。
「これは選別の影響よ。石を持っていないと危険だと彼らが判断したのね。立てる?」
メルタは事の状況を説明した。手を差し出した。
「あっはい……ありがとうございます」
副校長に支えてもらいアテナは立ち上がる。
アテナはメルタに聞いた。
「先生、アテナって」
「あなたに力を与えてくれた神よ」
彼女は周りの生徒達を起こした。
現在、六十階にいるアテナ達、残った作戦部隊は最上階に向けて走る。
毒々しい色に強烈な匂いのする液体が登る階段に散乱している。
先ほどの生物と比べるとヘドロと似ている姿となった。
アテナはそれらを不思議そうに見つめていた。
「あれはさっきいた生物死骸よ。大丈夫? アテナさん」
「はっはい」
気になっていたサーシャが説明をし、注目を最上階へ向けた。
なぜ、先ほどまで繁殖と進行速度が速かった生物達が死んだ姿となっていたのかは明らかだった。
アテナの持つ石から発せられた光だった。
一度に塔全体に生物を死滅させるほどの強大な力があればこの先も勝てるとアテナは考える。
メルタも同じ事を確信していた。
上の目線には今まで見えてこなかった光の入り方をしている場所があった。
それは最上階。
「来るわ。皆、気を付けて……」
皆、最後の階段を踏み越えた。




