Episode 61
光に包まれた世界にはすぐそばにいた皆はいなかった。
同じ第一分隊として塔の破壊・解体作戦に参加している副校長のメルタ・エーマン。
クラスメイトのバン・ヘルメス、トリンドル・クリア・ウォータル。
アメリカから来日した友達のポーレット・ミルズ。
第二分隊として後に合流した担任のラレス・サーシャ。
クラスメイトのミツキ・ペーター、エレン・クピードー・ジョンソン、金城 慧、サーカ・キューバス。
終始自分達の事を守ってくれた軍の皆。
夢なのか。現実なのか。区別のつかないこの空間にアテナは当てもない。ただ、白い中を歩いていた。
「ここは……」
時間の感覚、距離の感覚もあるのか分からない世界の目の前に扉が現れた。
そこは天使やオリーブの木や葉、実の装飾が彫られた立派な門だった。
「わぁ~凄い」アテナは壮大な門に関心の声をあげた。
「凄いですか?」突然、相手もいない門から男性の顔が現れた。
「えっ?」「へぇ?」二人は続けた。
「え?」「え?」この返しがあと十回ほど続いた。
ついにアテナの目の前にある門から扉を開けてもいないのに、妖怪のように顔が急に現れた。アテナのいる現実世界ではおかしいと気が付いた。
その瞬間、アテナからは声が止まらなかった。
「いっやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」
何処かのアニメで奇声を発している声優さんに負けじと劣らない声をあげた。
「ほら、言ったでしょ。アテナ様から現代の子は現実的にあり得ない事が起こると、パニックになって最終的にその人の事を信じられなくなっちゃうって」
空いていない門から瓜二つの同じ男性が現れた。
アテナは心の中で瓜二つの男性に名称として、表を表すtableの頭文字から取った男性T。
裏を表すbackの頭文字をとった男性Bと名付けて、二人の会話を暫く傍観する事にした。
右にいる男性Tが話す。
「あ~そんな事言っていたな~。でもでも僕達。滅多に二人に分裂しないから、これはこれでいい案だったね」
男性Bが話す。
「まあ、これもアテナ様からご命令を受けたあの方なりのご配慮だからな~」
男性Tが話す。
「次に来る少年にはどんな事をしよっか?」
(次に来る少年って、一体誰?)
その言葉にアテナは突っかかりを感じた。
男性Bが話す。
「う~ん。あちらもなかなか手強いからな~~。一回元に戻ってみるとか? ヘルメス様はアテナ様と違って、お金以外の事には興味ないからな。うん、初見相手だから、手柔らかにしているから、いいんじゃないか」
男性Tが話す。
「よし、そうしよう」
(何二人だけで納得しているの!)
勝手に変なところに来て、知らない瓜二つの男性にほったらかしをさせられて、いつまでこの時間を過ごさなくてならないのかとアテナは思った。
試しに二人に対して声を出した。
「あっ、あの~」
アテナの声に二人は気が付かない。
二人は続けて話す。
男性Bが口を開いた。
「ところで、時間は良いのか?」
男性Tはあごひげを触りながら上を向いた。
「あ~。そうだな~~アテナ様って、この世界って古代ギリシャがあった世界と違って時間の感覚が無いというのに、わざわざこっちでも時計を作り出して、部下達に五分前行動を徹底させているからな~」
男性Bは言った。
「ほんと、アテナ様にどこかの監督についてもらえば世界で優勝できると思うけどな」
男性Tが言った。
「そうだな~」
二人の話は止まる事を知らなかった。
アテナはもう一度声をかけようと試みる。
「あの~あの~」
こちらに気が付かない。
ここでは諦めない心が大事だとアテナは確信した。
言葉を圧するごとに声が大きくなったアテナは続ける。
「あの~!」
その一回の声は鼓膜が震えるほどの大音量だった。
「あ~そうだった」
やっと気づいたと思った。
「ちょっと待ってて、今開けるから」
しかし、あれだけ大きい声を出したのにもかかわらず、そのリアクションというものは全くと言っていいほど無かった。
この事が、アテナの心を少し、ぼーっとさせるものとなった。
そして、左にいる男性Bは門の左にあるパネルに手を触れた。
会話の中に出て来た古代ギリシャという言葉がなんとも、似合わないくらい使いこなしている電子パネルで何かをしていた。
「ゴゴゴゴゴゴ……」
重そうな扉がゆっくりと開いた。
「よし、出来ました。それじゃあ女神・アテナの使者候補。アテナ・ヴァルツコップさん。どうぞ円卓会議の下へご入場ください」
「へ?」
アテナは急に女神の使者候補と言っていた言葉に聞き捨てならないというような反応を示した。
「どうぞ!」
「あっ、はい……」
言われるがまま、アテナはゆっくりと前進した。
扉が開き、その奥へ進むアテナだった。
その間も扉までの距離ほどではないが、それでも長い道が続く。
やっと人影が見えた。
一人が立ち上がり、アテナがいる方向へ体を向けた。
目の前にまで近づいた女神はとても美しく勇敢な姿だった。
白いワンピ―ス姿に頭にはオリーブの木の飾り物を付けていた。
「よく来たな。我が使者よ」




