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妄想能力者と現実能力者の討伐戦  作者: 忽那 和音
Series2 バベルの塔編
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Episode 59

 先発隊が基地を出発して三十分後。

「見つけたぞ!」

 先発隊は塔を目の前に停泊ポイントを確定させた。

 前回は見つけるられなかった。

 以前、到着させた偵察分隊のお陰で停泊ポイントが増えた。

 それは、塔がわざわざ作り上げた罠なのか。

 それとも、幸運の一部なのかは彼らには分からなかった。

 しかし、これは持ってもない機会。

 先発隊は程なく塔の停泊ポイントに到着。

 速やかに隊員達も上陸に成功した。

 十分間隔で発生するEMP攻撃を避けるため、連絡担当の隊員がファラデーケージのシールドにより守られていた通信機器で基地にいる後発隊に連絡する。

「こちら、先発隊。これから塔の開口作業に入る。出発をお願いする」

「こちら、後発隊第一分隊。了解。これから出発する」

 連絡終了直後、アテナ達後発隊第一分隊の乗る艦がエンジン音を響きかせた。

 いよいよだという空気が民間人であるアテナ達の中にも伝染のように広がり始めた。

「大丈夫。私達もいるから」

 メルタが優しく強張っていたアテナの右手を包んだ。

「出航!」

 艦内に大きく響いたアナウンス。

 塔の自己防衛能力の一部である穴が塞ぐ事も考慮し、後発隊の第一分隊を出発する。

 十五分後。最後の後発隊第二分隊も出発。サーシャ、ミツキ達を乗せた後発隊第二分隊の艦が基地を離れた。

 天候は晴れ。波もほとんどなく安定している。

 あの塔が出現してから、江戸湾や整備され普段から穏やかな横須賀基地も波がほとんど立っていない。

 塔が出現した場所が高濃度の二酸化炭素が排出されていた場所。

 出現後は赤潮が大量発生する。

 これまでの二酸化炭素で死んだ魚達がこの影響により、さらに養殖部門の魚や海洋生物にまで被害を受けた。

 関東地方の水産業は壊滅的。

 この事を知らぬ漁業関係者はいない。

 組合からもなんとか、破壊してほしいという願いと近隣住民から海から排出されていると思われる異臭騒ぎの苦情が担当する地方自治体や県庁。

 また政府にまで話が伝わるまでに至っている。

 一人ひとりの暮らしを守る事も任務達成の一つではある。

 現場ではそこまで頭を回す暇話ない。

 一般人がこの作戦に関わっている事自体が隊員一人ひとりの行動に責任が関わっていると言っても過言ではない。

「まもなく、塔に到着。客員は上陸準備に移れ」

 艦内のアナウンスで上陸準備の命令が入った。

「皆さん。もうすぐ、到着なので準備をお願いします」

 日本軍の隊員がメルタ、アテナ達に上陸に向けての準備に入るように指示を出した。

 船の出入り口と塔が連結した。

 先頭にいた隊員達が先に上陸し始めた。

「では、行きましょう」

 民間人のアテナ達の先頭はメルタが上陸する。アテナも続いた。

 最初は上陸する場所がないと言われていたが、人二人が余裕ですれ違えるほどのスペースが出来ていた。

 路面は依然として不安定だ。

 まるで溶岩で覆われ固まったような見た目をしている。

 事前に、出来る限り塔には触れないようにしてほしいという話をされていたアテナ達は気を付けて歩く。

「皆、足元気を付けてね」

 メルタは生徒達に声をかけ続けている。

「だっ駄目だ……。こんな、硬い壁。どうやったら……」

 隊員達は最初の関門である壁の破壊に苦戦を強いられていた。

 偵察分隊が持っていた装備をそのまま一緒に持ってきていた。

 外部からの攻撃によって出現当初と比べより強化された壁。

 日頃、厳しい訓練に身を投じている隊員達の口から弱音を吐かせるほどの厳しいものだった。

「こんな壁、あの人達よく開けられたな」

 隊員達からは前者達の功績や壁の強固さしか口にはできなくなっていた。

 壁の破壊をしようと試みていた隊員達にメルタは声をかけた。

「そこは入口ではないので、皆さんは侵入する準備をしていてください」

「いっ、いや……、でも、女性の力では……」

 隊員の一人がメルタの発言にこの状況で冗談を言っている彼女を少々、変に感じた。

「出入口は少し先なので、奥まで動いていただけますか?」

 隊員達は困惑した。

 こんなところで力を使って、後々の戦闘に影響が出た場合の事を考えた彼らは言われた通り、奥へ行った。

「ありがとうございます。皆さん」

 メルタは出入口だと言う、場所まで動いた。

 そして、壁に手を合わせた。

「Se on Mamiyan muuri. Herrani, käskenyt ikuiselta Jumalalta. Hän tuli lähettiläänä pohjoismaisilta asgardeilta, kreikkalaisilta ja japanilaisilta jumalilta. Avaa ovi ja tapa tämän tornin Herra.」

 メルタの口からは異国の言葉が次々と唱えられている。

 その言葉や意味が何を示しているのかは隊員にも、アテナ達生徒にも分からない。

 しかし、その効果は覿面(てきめん)だった。

「ぼごっ」壁の動く音がした。

「ごろごろ……ぼこぼこぼこ……」

 メルタが手を付けて謎の言葉を唱えた場所には侵入する事のできる場所が完成した。

「では、行きましょう」

「はっ……はい」

 アテナ達も開いた口が閉じなかったが、平然とメルタは内部へ入っていく。

 続いて、隊員とアテナ達も入って行った。

 内部は報告されていた通り、上も下も無限に続く螺旋階段が広がる。

「わ~凄い」

 アテナは呑気に塔の内部を感心していた。

「なんか、創作に使えないかな?」

 持っていたカメラで内部を撮っていた。

「アテナ。もうちょっと、緊張感持った方がいいんじゃないか?」バンから指摘された。

「あ~、ごめんなさい」申し訳なさそうに言った。

「でも、ここで撮ったものとか録音したものは全て国防総省持ちになるから、そこは頭に入れておいてね」

 第二分隊の隊員が侵入口から入って来た。

 続いて、ラレス・サーシャ、金城 慧、ミツキ達が入って来た。

「あっ、ミツキちゃん!」

 アテナがある程度階段を上がった上の位置からミツキに手を振った。

「や~!」

 ミツキもそれに答えるように手を振った。

「うっ、うえ~こんなに無限に広がっているなんて、おっ、俺、気持ち悪くなりそうだ~」

 そこにはポーレットから支給されたスーツを着た慧、ミツキ達が来た。

 十五分遅れでついて来た第二部隊も塔の侵入作業での間でその距離は縮んでいた。

「皆来たようね」

 メルタも第二分隊の隊員や生徒、サーシャ達も合流した事に気が付いた。

「皆、私が先頭に行くので、サーシャ先生を後ろに動いてください!」

メルタは塔内に響く大きな声で言った。

「分かりましたー!」サーシャも反応した。

 塔内部に入って三十分程経過。

 無限のように続く、螺旋階段に生徒達は退屈を感じていた。

 飽きっぽい性格のポーレットは慧にも支給したスーツを着て、バテかけていた。

「あ~。It's so tired.」

「でも、まだまだ続くよこれ~。なんか、もっといいやり方があるんじゃないかと思っちゃうな~」

 トリンドルは日頃、文明の利器に頼っている生活をしているからか、他の方法を考えてしまっている。

「俺達が日頃どれだけ恵まれているかがよく分かるこの階段だな」

「バン君。今日はよく喋るね」

 トリンドルはクラスや学校の中で一番話す相手として、今日の様子について話した。

「そうかな~」

「それは、バン君が言うセリフだよ! ポーレットちゃん!!」

 気力が半分ほどとなってきた隊は階段を上り続ける。

「ふんふんふん♪ うぇ!」

 暇だったので、よそ見しながら鼻歌を歌っていたトリンドルは前を歩いていたポーレットの背中に当たる。

「うわ~なんでいきなり止まるの~ポーレットちゃ~ん」

「し! 何かがいる」

 トリンドルを静まらせたポーレットは何らかの気配に気づいた。

「うわ! はわはわはわはわはわ……、ぽっぽぽぽ、ポーレットちゃん……」

 何かに気づいた声をあげるトリンドル。

「どうしたの? トリンドル? こっちは気配を探して……」

 ポーレットは塔の全体を観察し、何らかの気配の場所を探していた。

「こっこれ、これ何!?」

 怯えた声が収まらないトリンドルが向ける視線をポーレットは向けた。

 そこには、液体のようなものが上から垂れていた。

「うっうわ~~! あちぃーーあちぃぃぃぃぃーー!」

 隊員の一人が怪我を受けた声が広がっていた。

「皆、気をつけろ! 液体状のものは服や皮膚を火傷、分解させる!」

 その言葉に耳を疑った。

 ポーレット、トリンドルの前に現れた液体状のものは自立をして、二人のもとへ近づいてくる。

「いっ、嫌だ~!」

 その時だった。

 二人の周辺に光が満ちた。

 周辺が光輝いた事は誰にも詳細な事は分からない。

 しかし、その危機的状況を打破できたのは、紛れもなく力を受け継いだ者達から発せられた力だった。



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