Episode 55
ポーレットと共に来日した男性が一人いた。
「皆さん、初めまして。ジョーシ・シン・ミルズです」
ポーレットの父親は、シルバーヘアーの高身長な男性だ。
彼は丁寧にお辞儀をした。
「あっ、いつもお世話になっています。トリンドル・クリア・ウォータルです」
トリンドルは率先して仲良くしているポーレットの父親に礼をした。
「あなたがトリンドルさんでしたか、娘がお世話になっております」
「いえいえ、いつもお世話をしております」
トリンドルは遠慮なくポーレットの話相手になっている事から、ある意味素直に言った。
アテナ達も簡単ではあるが、敬意をもって自己紹介をした。
指定された午後五時になり、アテナ、ポーレット達は大学の会議室へ向かった。
あくまで、午後五時には既に会議室にはいるという話だった。
十分遅れで入室アテナ達陰光大学教育学部付属陰光中学の生徒達は気まずいという気持ちになっていた。
誰かが扉を開けなければならない。
ちょうど、先頭にいたミツキは嫌がる事なく申し訳なさそうに会議室の扉を開けた。
「失礼しま~す」
「あ、皆さん。来ましたね」
平然とした顔で副校長のメルタ・エーマンがミツキ達の方向を向いた。
「それではアテナさん達陰光生は真ん中に。来客のポーレットさん達は左、廊下側の席に、最前列に座ってください」
(うわ~真ん前か。嫌いだな~)
ミツキは表面上では嫌だと表してはいなかった。
しかし内心はできるだけ座りたくはない席だった。
「どうしたんですか? これは授業ではないですよ」
陰光の教員達はミツキの心中を探るのが得意なのか、驚くほどに現在思っている事を口に出されてしまっている。
「は~い」
渋々、遅刻組は真ん前の座席に座る事となった。
「では、揃ったようなので、今後の私達の計画についてお話させていただきます」
(計画……?)
今日が初めての会議というのにもかかわらず、アテナ達無しで話が進んでいた事に関わるような意図ともとれる事を副校長は言い始めた。
「私達は昨年の体育祭以来、副賞として受け取った石の装飾品を装着した生徒達の事を観察していました」
生徒達はうまく話を飲み込めなかった。
(えっ。それじゃあ、私達って先生達に騙されていたみたい……な?)
「え、先生! それじゃあ、私達って――」
アテナは少々取り乱し、席を立ってまで口にするほどの衝撃だった。
「待ってください! 言いたい事は分かりますが、最後まで話を聞いてほしいです」
「アテナちゃん、落ち着いて……。まず、席に着こう」
この事を素直に呑み込める生徒はここにはいない。
それでも持ちまえのリーダーシップでエレンは率先して、周りを落ち着かせようと率先する。
「ごめんなさい。今まで黙っていて……。文化祭の副賞で渡されたブレスレットなどの品々は塔の出現。そして、校長の行方不明と関係しているわ」
普段では見せない暗い顔をしたメルタは話を続けた。
「あの塔は私達が敵としている組織が以前から作っていたもの。そして最終的には地球の連絡手段を断ち、人類を捕虜としての利用や滅亡をする事が目的と言われているわ」
アテナは口を開けたままで、言葉を発した。
「なっなんで、そんな大事な事を今まで教えてくださらなかったのですか?」
「ごめんなさい。でも、まだ石の適応には個人差があるの。だから、まだ去年の段階では口にはできなかったわ」
今まででも散々な目に合ってきた事は生徒を今回の事以前に危険にすり合わせる事になった。
塔に関して関わらせる事をためらっていたメルタ。
しかし、これしか方法はなかった。
「石の適合は成人前の子供でないと数値が上がらない。そこも考えて体育祭では副賞を皆が付けているものにしたの……」
告白をする前からある程度、生徒達からの批判がある事を考えていた。
ましてや、彼らを支える家族からの事も。
しかし、予想していた事とは違う事が起こった。
「先生、顔を上げてよ」
それはミツキだった。
「今、大事な事は私達が付けているものの事じゃないですよね」
トリンドルは今会議の趣旨について問いただした。
「私達は先生達の事を恨んでいません。むしろ、私達が塔を壊すきっかけになるんですよね?」
サーカも自分の気持ちを言った。
「Miss Merta. It's not time to cry now. Why did we come to Japan so far from the US?」
ポーレットもアメリカから招集された客人として、会議の参加者の一人としてメルタを励ました。
「先生、今までの事は怖いと思った事もありました……。けれど、今やらなきゃいけないのは……、皆を救う事ですよね」
先ほどパニックを起こしていたアテナは丁寧に状況と経緯を説明した。
少しではあるがメルタの置かれている状況を理解した。
「ぐぅん、ごめんなさい。わざわざ集めた私が……会議の妨げをするだなんて……」
メルタは鼻の調子を整えて本題となる話を再開した。
「では、塔の概要をお話しします」
「ここからは私、ラレス・サーシャがご説明をさせていただきます」
(サーシャ先生、そこまで知っているの?)
い組生徒達は右に立っているサーシャを見て驚いた。
塔の高さは五百十メートル。内部の構造に関しては不明。
最初に送り出された分隊の録音データが軍の通信データ内部に残されていた。
解析を進めた結果、無限にある螺旋階段というところまでしか分からなかった。
軍からの報告では、一回送り出した分隊がその日のうちに位置情報が掴めなくなる。最終的に死亡者リストに入った。
軍は空中からの弾薬やミサイル攻撃を行っているけれど、全くの無傷。
むしろ、日に日に防御が固くなっているというのが、現在の状況となっている。
「えっ、もうそれって、幽霊屋敷じゃないですか!」
ミツキがピリピリした真面目の真面目な空気の中に遊園地へ遊びに行った年相応の子供のような事をいった。
「ヤバいじゃんヤバいじゃんヤバいじゃんヤバいじゃんヤバいじゃんヤバいじゃんヤバいじゃんヤバいじゃん‼」
「ミツキ、うるさい!」
エレンの初めて聞いた野太い声でミツキの首にチョップをかけた。
「すみませんでした」代わりに謝った。
「ごほん。まあ、いきなりそんな事を言われれば誰でもパニックになりますよね。流石に危険な事を進んでやれとは言わないので、安心してください」
メルタはエレンの攻撃を受けたミツキを始め、生徒達に丁寧に説明をする。
「というよりも、軍が一回しか送り出していないのがおかしな話です。その為にミルズさんがいらっしゃっていますから」
メルタはポーレット。そして、その父の方を向いた。
ポーレットは右手の表を天井側へ向け、指パッチンの姿勢となった。
「ふん! やっと、私達の話ね! では、Let`s listen」
彼女は左手を上げる。
「パチンッ!」
彼女は涼しい顔をして、指を鳴らした。




