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妄想能力者と現実能力者の討伐戦  作者: 忽那 和音
Series2 バベルの塔編
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Episode 54

 登校日の朝。

 イルカの立体的な絵や白い家具などが部屋に立ち並ぶ。

「それじゃあ、行ってくるね」

 制服姿のトリンドル・クリア・ウォータルはリュックを背負い、箪笥の上に飾られているイルカやウミガメのぬいぐるみに手を振った。

 螺旋型の階段を降り、学校指定のローファーを座って履いていく。

 右から履いて、次に左。右足には右に。

 左足には左側に靴を止めるチャックが着いている。

 履き終わり立ち上がった。

「行ってきま~す」

「行ってらっしゃ~い」

 家族達は玄関には現れなかったもののトリンドルの返事に反応した。

 トリンドルは学校までは歩いて二十分程度の距離がある。

 自宅近くからバス停までは数分距離がある。

 彼女とその家族は倹約家。バス代の一か月分を支払うのであれば、歩いて学校に行くという考えしか持っていない。

 小学校入学からおよそ六年間ずっと、徒歩での通学を行っている。

 トリンドルの持論であるが、バスよりも足が早いのは自分だと言う機械相手に負けず嫌いを抱いている。

 学校へ登校する通学路には誘惑が少ない。

 自宅近くは住宅街の為、あまり代わり映えの無い風景が十分近く続く。

 しかし、学校や駅近くまで来ると人気店などが立ち並んでいる。

 誘惑に負けないようにトリンドルは真っすぐしか向かない。

 今朝も何かの誘惑に屈せず、学校へ登校した。

 階段を上がり一年い組のクラスに入った。

「皆、おはよー!」

「あっ、おはよう。トリンドルちゃん」

「おはよう」

 教室内には友人のアテナ、エレン、サーカ、バンがいた。

 四人はアテナの座席に集まり、朝の談話をしていた。

「ねえ、トリンドルちゃん」

「何? エレンちゃん」エレンが何かを聞いて来た。

「ミツキが朝にここで待っててと言っていたのだけれど、何か知っている?」

「さぁ~」

 ミツキが登校前にMUSEメンバーに自分の机に集まるようにメッセージを送っていた。

 トリンドルも確認すべくスマホを開く。

 ミツキのメッセージ内容を確認したが、あまり連絡の来ない相手から通知が来ていた。

 しかも、電話とメッセージで一件ずつ。

 トリンドルはミツキのメッセージを確認する前に見かけない名前と番号の送り主と内容を確認する。

 通知ボタンを押し、先にメッセージを見た。

・・・・・・

Hi, Triendl.

 パパのお仕事の関係で一度、日本に来日します。

 十七時に指定した場所に来て欲しいです。

 もちろん、アテナ、ミツキ、エレン達も一緒で。

 では、よろしく。

 また会いましょう。

・・・・・・

 そのメッセージの送り主は、去年の文化祭に来たポーレット・ミルズだ。

 Sunlight Stand学園 Line coast中学の二年生。

 去年は十一歳ながら、中学一年生として年上の向明(チャンミン)・ベネット・バーリー、タマーラ・グリゴリエフを彼女の感覚では引っ張っていた。

「ポーレットちゃんからだ……」

 トリンドルはボソッと言った。

「ふぇ? ポーレットちゃん……がどうかしたの?」

 アテナがトリンドルの言葉に反応した。

「今日、緊急で日本に来日するんだって、それでも皆にも来て欲しいって」

「そんな急にどうしたのかしら……」

 エレンは何かあるのではないかと考えた。

「ミツキちゃん達にも来てもらいたいから、部活の件も考えないと」

 サーカも口を開いた。

「そうね。教室に来たら話さないと」

 朝のホームルームまで三十分以上時間があるのにもかかわらず、教室に担任のラレス・サーシャが来た。

「皆、おはようございます」

「\\\おはようございます///」

「アテナさん達、ちょっと話が……」

 アテナのみならまだしも、MUSE所属の全員がサーシャに呼ばれるなどあまりない。

 ともかく、アテナ達はサーシャに呼ばれるがまま、廊下に集まった。

「実は今日、陰光大学で会議があって……」

「あー。先生からの掃除指示ですか?」

「いや。掃除ではなく、あなた達にも会議に参加してもらいたい」

「会議ですか。何か私達にも関係があるんですか」

「まあ。時刻は十七時です」トリンドルとアテナ達はその時間にピンときた。それはポーレットからの集合の話だ。

「あーでも、ちょっと用事が……」

「大丈夫よ。トリンドルさんに電話とメッセージを送って来た人も関係するから」

 皆、頭に霧を伴ったクエスチョンマークが浮かび上がった。

 MUSEメンバーは深い理由も分からないまま一日の授業を過ごしていた。

 時間を追っていくうちにこの時期にトリンドルが父親と来日する事。担任もこれと言った取り乱した表情もない。トリンドルに連絡が入っている事。一連の出来事、行動を知っている事はサーシャとトリンドルは繋がっている。何かを行うという事だと各々、大まかな予想をさせた。

 放課後。授業自体は午後四時くらいに全て終わるが、トリンドルが書いた指定の場所がいまだに分からなかった。

 トリンドルは再度、メッセージの内容を確認した。

・・・・・・

 時刻は十七時。

 場所はSun陽駅の校舎にあるあんくーさんの前に集合よ!

・・・・・・

 場所だけが、問題だ。

 駅名は流石に仕方がないと理解する点が大きい。

 陰光大学の学生が多く利用する在来線が多く通っている燦陽駅の燦は非常に難しい感じだ。

 勉強して一年ほどのポーレットには燦をSunと書くしかなかったのだろうと思うところがある。

 しかし、校舎のあんくーさんとは一体なんなのか。

「とりあえず、大学へ行ってみよう」

 トリンドルは頻繁に連絡をとっているポーレットの事だからまた、何かと勘違いしたのかと思った。

 メルタとポーレットに呼ばれたアテナ達は一先ず、荷物を持って北東方面に位置している陰光大学に向けて移動した。

 アテナがふと思い出した事があった。

「そういえば、ポーレットちゃんって去年の文化祭から来ていないんだよね」

「言われてみれば……」

 確かに、去年の文化祭から再び来日したという話も聞いていなかった。

「けど、今の時代衛星写真で学校マップとかは確認できるから、そこで確認した可能性は?」

 ミツキの言う意見もある。

 しかし、付属中学へ通っていて、大学にも度々訪れているアテナ達でも思い当たらない。

 果たして、自分達の書かれた言葉通りの場所へ着く事ができるのか。

 半信半疑でMUSEメンバー達は使われなくなった高架下をつなぐ橋を渡った。

 陰光大学北口付近。

 アテナ達は燦陽駅川と書かれたところをポイントに北側を探す事にした。

「あんくーさん、あんくーさん、あんくーさん……。う~ん、分からないよ~」

 トリンドルはあんくーさんのいるところが全く分からなかった。

 あまりの難しさにしゃがみこんでしまった。

「ねえ。トリンドルちゃん」エレンが呼んだ。

「なあに? ぐじゅ、エレンちゃん……」

 少々涙目になったトリンドルはエレンを見上げた。

「あんくーさんはいないけど、安喰さんていう人ならいるわ」

 言われるがままトリンドルはエレンについて行った。

安喰(あんく)さんはね。陰光大学の前身となる学校の創設者なの」

 エレンは続けて、安喰さんについて説明を続けた。

 安喰(あんく) 公彦(きみひこ)は陰光大学の前身となる天山(あまさま)高等学校の創設者。

 天山高校から陰光大学へ学校名が変更されてから百二十年以上経過している。

 現在でも安喰の名を引き継ぐ教育者が陰光の小学校から大学・大学院まで教壇に立っている。

 そして、現在の陰光大学幹部に現・安喰家当主の安喰(あんく) 伯彦(はくひこ)が就いている。

「ほら、ここよ」

「わぁ~本当に安喰さんだ~」

 エレンのお陰で陰光大学医学部付属病院と陰光大学の敷地の間に置かれている安喰公彦の記念像の下へ着いた。

 スマホで連絡をし、アテナ達も合流した。

 十数分後。

 一台のタクシーが正面玄関前に着いた。

 勢いよく後部座席の左側に女性が下りた。

 彼女は以前着て来た所属する中学の制服で颯爽と現れた。

「Hi, everyone. How are you~? Hum, hum. そうね~私がいなくって寂しかったのね~」

 ポーレットは去年にもましてキャラを増しましでやって来た。

 これ以上にアメリカというのはパワフルな国なのだろうとポーレットは少々羨ましげに思った。

「いや、そこまで」

 ミツキが正直な感想を言った。

「It's okay~. 分かっているわ、私には。半年もの間は私の存在を求めていた事を」

「ポーレットちゃん、去年にもまして体力がアップしたんだね」

 トリンドルは変貌したのか、体力面などで進化を遂げたのか不明な部分がある。

 ともかく、こんな混沌とする状況の中に再会できた事、元気にしている事に安堵した。

 タクシーに同席していた男性が後部座席に運転手側から出て来た。

「そんな事より、そろそろ言われた場所へ行った方がいいのでは? 皆さん――」



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