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妄想能力者と現実能力者の討伐戦  作者: 忽那 和音
Series2 バベルの塔編
53/255

Episode 52

 放課後の陰光大学教育学部付属陰光中学・校内。

 新年度が始まり二か月が経過した。

 去年度の夏から終業式にかけて生徒の気絶事件が起こり、その研究が行われている最中の現在。

 昨年から姿が現れなかった陰光大学教育学部付属陰光中学・校長を務めるジョージ・アールヴ。

 およそ一年ぶりに副校長のメルタ・エーマンと二年い組担任のラレス・サーシャの前に現れた。

 しかし彼は校長・ジョージの皮を被った悪魔だった。

 ジョージの身柄は確保した。未だ昏睡状態が続く。

 検査の結果長期間自分の意識で体を動かしてはいた。

 一年以上も何かを思ったり、感じた事がなかった人に現れる脳の一部が動いていない状態があるという。

 覚醒したとしても、今までの仕事はできない可能性が高いと言う医師からの判断があった。

 公には誰かに乗っ取られていたという話はメルタ主導の研究チームが判断して公表は避けた。

 遠い場所に一人で過ごしていたところを発見されたという嘘の話に被せた。

 実質校長職も兼任していた副校長のメルタは教育委員会に校長交代の提案を持ちかける。

 理由としては、これまで行方不明だった校長が現れたもののすぐに校長職へ復帰ができない。

 メルタ一人で校長職をこれ以上継続するのは負担が大きいという事だった。

 去年からもメルタや付属陰光中学の教員達からの提案を却下し続けた教育委員会。

 一部のメディアからはこの話が知らずしらずのうちにリークされている。

 問題の規模を小さく収めるためにも今回はやむを得ず、検討するという事になった。

 後日。後任の校長を決定する会議を開いた。

「私はこの方に校長に着いていただきたいです」

 メルタは候補としてあがっている五人の中、履歴書の一人を指さした。

 彼の名はジェローム・ジョン・ウィリアムソン。

「Sunlight Stand大学・理工学部を卒業。しかし、小学校までは陰光大学の付属に在籍していたか」

 だが、教育委員会のアメリカ学校へ対する嫌悪感は想像以上に強いものだった。

 彼女がジェロームを推す理由は出身学校関係なく実力や能力で優秀な人材育成や学校運営を行いたいからだ。

 メルタは訴える。

「なぜ、いつまで学校名で人を判断するのですか。なぜ、陰光出身だけで人を纏めようとするのですか? 私には分かりません」

「これ以上、表の名前だけで偏見するのはやめましょう」サーシャも口にした。

「はぁ」教育委員会の一人がため息をつく。

「分かりました。では、一先ず代理として就任をさせましょう。しかし、後任が決まるまでの一年後です」メルタとサーシャの顔が柔らかくなった。

「ありがとうございます」二人は委員会へ深い礼をした。

 数日後。

 新聞などで陰光大学教育学部付属陰光中学の校長代理としてジェローム・ジョン・ウィリアムソンが就任する事が発表された。

 後々明らかになった事だったが、教育委員会だけでなく教育庁長官からも校長代理としての推薦を得られた。

 四日後。

 校長代理として陰光大学教育学部付属陰光中学に籍を置く事になったジェローム・ジョン・ウィリアムソンが今日、アメリカからの飛行機で来日する。

 ビザの用意は余裕もなかったが、何とか手配が整い、出発前にはメルタのスマホに通知が入っていた。

〈Good morning. Miss Merta.

あ~~、そっちは夜中か。

まあいい。もうすぐ離れるので、最後に連絡をしておきます。

詳しい話は入国後に〉

 二人は入国口前で待つ。

「久しぶりね。ジェロ」

 スマホを見ていたメルタ。スマホの画面を閉じる。持っていた右手と一緒に両手をポケットの中へしまった。

「メルタ先生。コーヒー持ってきましたよ」

 一緒に着いてきたサーシャが両手に紙コップに詰めたコーヒーを持ってきた。

「いよいよですね。先生」

「ええ」

 アメリカからの旅客機・機内。

「Everyone, We will soon be landing at Japan Tokyo and Yamanashi Airport.

 乗客は既にシートベルトを着用した状態となっている。

 ジェロームはビジネスクラス席で目隠しと耳栓をして眠りについていた。

 一時間後。

 ジェロームが乗っていた旅客機は空港に着陸する。

 機内の乗客数はほぼ満席。飛行機を出てスーツケースを取る。他の乗客達も並んでいて手続きまで長い列ができていた。

 着陸から一時間。待つ二人の姿を探す。

 コーヒーを片手に談笑する女性二人が立っていた。

 近づいてくる足音にメルタは気づいた。

「Hi Jerome」

「Hi Metra. How are you?」

「I'm good. Thank you.」

 二人はお互い通例の挨拶をした。

 挨拶を終え一緒に待っていた彼女へ視線を向けた。

「She is Miss Lares Sasha?」

「はい、ラレス・サーシャです。陰光大学教育学部付属陰光中学で二年生の担任をしております」

「そうでした。これからよろしくお願いしますね。サーシャさん」

 ジェロームは車に荷物を乗せる。彼は後部座席に座る。

助手席に座るサーシャ。ジェロームの横に座るサーシャから詳しい話を聞く。

 来日する前に起こった学校の事。

「一年ぶりに校長が来たんだね」

 ジェロームは事前に予備知識程度の内容を伝えられていた。

「ええ。けど、あの時の校長はそのものではない。明らかに何者かが乗り移っていた姿だったわ」

「その何者かを突き止めるために、生徒達を連れて……」

 ジェロームは深刻そうな顔をした。

「僕達は大切な生徒を人質にとるような真似を……。けれど、それを承知で託したんだよね」

 メルタは真剣な眼差しで真っすぐ前を見つめた。

「はい、全ての責任は私が」

「先生だけに負わせません。会議には参加していませんが、マリンも一緒に責任を負わせます」

 サーシャは自分も責任を持って、今後携わると言った。

 さらに会議に参加していない者まで巻き沿いをさせる事も一緒に行った。

「ははは、マリンって……、マリン・ヘルベドール君の事かい? 君も酷い事をするもんだ。でも、そうだね。関係ないけれど、自分も責任を負うように動くのもこの国性格的なものだったかな」

 ジェロームは暫く離れていた日本の空気を久々に感じた。

「けれど、今は学校の再建が僕の仕事だ。それが終わるまではなんと言おうと引けないよ」

 緊急来日した彼は陰光大学教育学部付属陰光中学をクリーンなものにしようと行動を起こす。


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