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妄想能力者と現実能力者の討伐戦  作者: 忽那 和音
Series2 バベルの塔編
52/255

Episode 51

 大規模の地震発生や謎の塔が出現した日から一夜。

 周辺の交通網は鉄道、バスともに回復しており、学校側から今日は休校するとの通知が来た。

 アテナ達も避難後最後の提供である朝食を食べた後、各々自宅へ帰宅した。

 発生から十八時間を経過した現在。影響は遠くの震源地で続いていた。

 江戸湾付近の建物の電気が使えないなどの停電や海上の船舶同士の電波障害が発生していた。

 原因は不明だが、海上保安庁の発表では塔が何らかの妨害をしていると考えている。

 影響は限定的な為、他の地域への影響は起こっていない。

 教員室に設置されているテレビ。夜通しで災害対応を行っていた陰光大学教育学部付属陰光中学の教師。一人二人かはテレビを見ていた。

「では、次のニュースです」

 一昨日の夜からトップニュースは一気に大規模地震、江戸湾の二酸化炭素の大量排出。

 突如として現れた黒い塔についてだった。

 黒い塔の出現によって、漁業関係者の出航が禁止されている。

 時に電気を使用した製品が周辺で使えなく事態が起こっており、それは軍や海上保安庁が塔の調査への機会を阻んでいた。

 死傷者や行方不明者がいないという事は不幸中の幸いだった。

 午前十時。

 横須賀海軍基地にて、軍人達が整列していた。

 彼らは謎の多い黒い塔を調査する特別部隊。主に陸軍の偵察と歩兵の十人で構成された分隊。

「では行くぞ」

 電子機器の使えなくなる電子パルス攻撃。通称・EMP攻撃のような現象が発生する可能性があるため、必要最低限の機器は装備していく。

 ファラデーケージを応用した保護シールドを使用し、必要性の無いケースはなるべくしぱっておくよう事前に決めた。

 塔までの海を渡る手段は軍が保有する小型船舶を使う。

 そこにも念には念を入れた策として、EMP攻撃を受けた場合は手漕ぎボートを使う。

 船を走らせ二十分後。

「ふぁ! 見えてきました」

 偵察隊員が船の操縦席付近で望遠鏡越しに塔の入り口になりそうな場所を発見した。

「よし、調節します。到着まであと十分ください」

 操縦を行う隊員は停泊できる場所に合わせ速度を変えていく。

「何があるか分からない。慎重に行こう」分隊長が言った。

「ぐぅんにゃんぐぉぁん」突如、船舶の電源がシャットダウンされた。

「隊長! やられました」

「くぅっ、仕方がない。ここからは漕いでいこう」

隊員は速やかにボートを用意、乗り込んだ。各隊員、櫂を手にして塔まで突き進む。

「一、二、一、二、一、二……」

 分隊は掛け声を合わせ目の前まで来た塔に船は停泊位置を見定めた。

「よし! 着いた……」

 隊員達は続々と塔の出現によってできたごくわずかに人がおりたてるスペースに上っていく。

 途端、彼らの鼻には焦げ臭い匂いがした。

「ぶしゃ~ぶしゃ~」

 塔の敷地に停泊したボートはみるみる焼かれ、一瞬にして跡形もなくなった。

「帰ったときには救援を呼ぼう」

 降り立ったものの塔の周りを探しても人が入れるような扉というものは用意されていない。

 分隊長の判断で当てずっぽに壁を破壊して内部へ侵入する。

 各自手作業での破壊を行う。

「カン……カン……カン……」

 隊員達は三、四人組となり三か所から壁を破壊していく。

 壁は溶岩のような不規則な凹凸で形成されている。

 その壁は強固なもので一時間ほど経った現在もびくともしない。

「皆、集合!」分隊長は隊員を呼んだ。

「このままでは時間だけが過ぎてしまう。これから数少ない火薬を使用しこの塔の壁を破壊する」

 分解して持ってきた爆弾を組み立て、一か所へ十個ほど集中させた。

「カウントダウン開始します!」一人の隊員はスイッチを入れた。

「三……、二……、一……」

「バァーン!」

 隊員達は耳を隠し、鼓膜が破れるのを防いだ。

 爆発により発生した煙は分隊がいる反対側にまでせき込むほどの量が広がった。

 偵察の一部が爆発を行った場所を確認に行った。

「空きました……。穴が開きました!」

「よし、行くぞ」

 続々と仮にできた入口に向かった。

 姿勢を低くして塔の内部に入る。中は真っ暗。ヘッドライトをつけて中を見渡す。上を見上げる。無限に続くような螺旋階段が上に登る唯一の手段だった。

 爆弾で開けた場所はちょうど螺旋階段が通っている所だった。

 複数人が塔内部に入る物音が響く。

「ここには誰かいるのか……」

 ライトを持ち塔の下から上まで見てみた。

 幸先が真っ暗で本当に無限に続くものだと隊員達は信じ込んでいた。

「行くぞ」分隊長を先頭に螺旋階段をの登る。

「これ、幾つあるんだろうな……」

「さぁな」

「帰ったら、新作ゲームしよう」

「はぁ~お腹空いたな……」

「おい、余計な話はやめろ」

 誰の返事も帰ってこない。

「任務中だ。分隊長の言葉には返事を――」

 後ろを振り返った時には誰一人彼に着いて来た隊員はいなかった。

(どういう事だ……)

 こんな場所で偵察任務が終わる前に無断で帰宅する者は誰もいないはず。

 いたとしたら、それは軍法違反で罰則が付け加えられてしまう。

 では、なぜいない。

 本当は誰かが近くにいて分隊員を襲った。

 ある程度の武術を身につけた隊員達には特殊な非人間ではない限り、対応は可能だ。

 分隊長は短時間にありとあらゆる可能性を持って、三十分以内に隊員が消えた理由を出そうとしたが、出てこなかった。

「仕方がない。あの者達は最後に――」

 辺りは真っ暗となった。

 外の光は数日前のサイレンが鳴り響いた不穏な空気とは違いい、見ていて気持ちの晴れる空をしていた。

「ははははは……」

 厚みのある書類を持った女性が階段を駆け上がり、教員室へ入る。

「はっ、はっ、は……」

「どうしたんですか、サーシャ」

 学校内の仕事をしていたメルタは走って来たサーシャを心配した。

「せっ、先生! ははは……、せっ、政府から……」

「政府がどうしたんですか?それよりも落ち着いて……」

「政府から至急、当の調査をしてほしいと打診がありました!」

 午後三時。

 メルタとサーシャは至急の会議とし、大学内の部屋で研究チームの会議を始めた。

「話はもちろん、ニュース番組で持ちきりのアレですよね~」

 ナタリーは知った被って言った。

「ええ、私達がこの期間で積み上げてきたものをここで使う事になる」

 彼女には反面懸念があった。

 今回は大勢の大学研究者が派遣されるがその中にはメルタが主導する研究チームに所属する研究員も含まれる。

「皆にお願いがある。私は……あの子達を連れて来たい」

 メルタは研究チームにお願いをした。

「それは分かっています。けれど、まだ中学生」

「可能性はなくはないですが、危険にさらす事になる事は理解していますか?」

 研究チームの何人から批判意見が上がった。

「私からもお願いします」

 サーシャも研究チームへお願いをした。

「危険にさらす事は十分にあり得る事です。けれど、この状況を打破できるのは彼女達しかいない!」

 彼らは互いに目を合わせ、考えた。

「分かりました……。けど、まず塔に行かせるわけにはいかない。これからいう事を守っていただけるのであれば」

「ありがとうございます!」

 メルタとサーシャは研究チームのメンバーに礼を言った。

「ピロン!」

 スマホに通知が入った。

『Si identitatem meam cognoscere vis, ad principale munus accede.』

「ちょっと、呼び出しがあったので行ってきます」

 メルタやサーシャは未だ現れない校長をより不信に思った。

 案の定、それは校長からのメールだった。

 校長室へ呼び出された彼女達は真っすぐな目で中学校の校長室へ向かった。

「コンコンコン」

「失礼します」メルタは反応の無い校長室を平然と入った。

「よく来たね~二人とも」

 校長・ジョージ・アールヴは反対に手を後ろで組み、上空を見ていた。

「長い間、生徒達のもとに現れませんでしたが、何をしていらっしたのですか?」

 怯む事なく質問をする。

 しかしサーシャの目には左手が極度に震えていた。

 言葉や表情には表さないが、心の底では怖がっている。

 彼女の事を守らなくてはと思う。

「さぁ~それよりも、私の学校で勝手な事ばかり……、何が目的なのかなぁ?」

 二人の顔を除いたジョージの顔は以上に歪み、出血はしていないものの傷だらけ。

 さらには、ジョージの目は通常の茶色から深紅に変わっていた。

「うぅっ。あなたは、誰……」

「ははははははっ……ははははははっ! 知りたければ、漆黒の塔へ来い! 神の力を与えられた者達を連れてな!」

 ジョージの体から黒い霧が現れ、そこから上半身だけ人型の像が現れたが、窓をすり抜け何処かへ行ってしまった。

「避けられない……。ごめんなさい、アテナさん……。皆」


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