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妄想能力者と現実能力者の討伐戦  作者: 忽那 和音
Series2 バベルの塔編
44/255

Episode 43

【タイトル】

Episode 43 (6-2)


【公開状態】

公開済


【作成日時】

2022-06-01 18:55:21(+09:00)


【公開日時】

2022-08-26 17:00:27(+09:00)


【更新日時】

2024-01-28 23:11:14(+09:00)


【文字数】

5,639文字


【本文(183行)】

 一か月近く生徒達に用意された春休みの期間はアテナ、ミツキ、エレン。気絶をした生徒達にとっては日常の自由を阻害されるようなものだった。

 一週前から終業式当日まで行われたクリエィティブ部活・MUSEの部活動。春休みに入ってからも次の個展開催へ準備を続けていた。しかしアテナ達が気絶した事。定期検査を受けた影響により部活動時間が大幅に変更となる事態となった。

 幸い春休みに予定していた個展は無事終了する事ができた。

 また彼ら彼女達が気絶するなど部活に参加できない事態にならないとは限らない。影響が出てくる可能性があるとして、新年度スタートと共に会議の場を設けようと話し合った。

 新年度を迎える前、一年い組のMUSE所属メンバーはある事が気にかかっていた。

 目にした夢について。それぞれ覚えている範囲や内容は個人差がある。起床時にはほとんど忘れている事がある一方で鮮明に記憶している事もある。

 一年い組のMUSEのメンバーだけでなく、水泳の授業で溺れた生徒も終業式に倒れた名簿に入っている。だが溺れた生徒の全てが終業式の日。一緒に倒れた訳ではなかった。

 一部の授業中に気絶や倒れたという高校生は、見た夢の内容をはっきりと覚えていた。

日本とは違うもっと別の場所に立っていた。皆話している言語は自分達が使っている言語とは全くの別物だった。

 しかし自分と話すある一人は口に出している言語が母国語と違うはずにも関わらずちゃんと会話をしていたという。そして彼らはこう答えた。「我の能力を恵与しよう」と。

 証言の数々は医師達が把握している。時間が経ってから人伝えで聞いた証言の数々。MUSEの面々には共通点があった。

「私、寝ている時に神殿? みたいな場所にいたの」

「俺もだ」

 アテナは世界史の資料集を開く。開いたページの端には古代ギリシャと書かれていた。

「まるでこの神殿みたいに。白くて大きな支柱がきれいに並んでいて」

「彼らは円卓を囲って座っていたな」

 アテナとバンは共通して同じものを見ていた。古代ヨーロッパの人達が神殿で会議をしていた。

「私は森の中にある社殿にいたよ。京都? なのか。仙台? なのか。どこか私にはさっぱりだったけどね」

 ミツキは日本にいるという事は分かっていた。いた場所が日本だと分かるのは唯一小さな社殿や大きな社殿がまばらに建立されていたからだった。

 歩みを進めた先に見えたひと際大きく輝かしい社殿。重なる階段を上り終えた先に見えた社殿は白い布で先はよく見る事が出来なかった。

 しかし先に誰かがいる事は辛うじて下から見える足元と話し声で分かった。

 エレン、トリンドル、サーカも見た夢の内容がバラバラだった。

 お互い気分が良くもなく、それでも悪くもないはっきりとした記憶を根拠のない気持ちではあった。

しかし見過ごしてはならないのではないかという気持ちにさせられていた。

 後日、今回気絶した関係のMUSEの部員達。詳細には一年い組のアテナを筆頭に夢の内容についての研究をする事にした。

 見たものの内容は人それぞれであるため、見覚えのある建物などを頼りに中学や大学の図書館で調べものをしていた。

 それは部活活動日以外に出来る限り内緒で行うものだった。

 気絶の件はただの貧血や悪いものを食べたというのが公の理由になっていた。

 大勢の前で倒れた生徒達の事を心配する人達は多くいたが、果たして以上の理由で原因不明という理由はかぶせたのかは不透明だ。

 医療チームも教員達も当事者である生徒達も本当の理由を突き止めようとしていた。

 新年度が始まって二週間が経過した現在。

 アテナは大学図書館で調べものをしていた。

 中学の本棚では今後の進路に興味を示すものや教養程度のものがほとんどで奥深くまで神話について書かれた書籍はなかった。

 中学生があまり利用する事のない大学図書館へは今後の自由研究のネタを見つけるという理由で使わせてもらっている。

 稀に付属の中学生・高校生達が使うという事なので、あまり特別な事ではない。

 アテナは今、バンが共通して見たという手描きの神殿と記憶を頼りに古代ヨーロッパの建築物から古代ギリシャのものだと特定する事が出来た。

 ギリシャ神話の資料については多数存在している。

 夢で見た姿と実際の姿。

 第三者が作った仮の姿なのか。

 全てが偽りに見える中、唯一信じられるものは自分の記憶だけだった。

「あの~」

 近くに女性が誰かを呼ぶ小さな声が聞こえた。

 アテナは気づかず本を読み漁る。

「あの~、あの~」

 ついに、アテナの肩をポンポンと優しく叩く。

「はっ、はい!」

 読書に集中していたアテナは少々驚いた。

「あっ、ごめんなさい……。集中しているのに驚かせちゃいましたね」

「あ~はい」

「神話に興味があるんですか?」

「あ~ちょっと調べものがあって。えーっと……」

 アテナは図書館で見ず知らずの人と話す事を想定しなかったためか。

 調べものに熱中していたからか。

 次に出す言葉が頭から思いつかない。口は小さく空いたまま。

「私は人文科学を主に専攻しているカレン・ルイーズ・オスマンと言います。カレンと呼んでください」

「はっはい、カレンさん。あっ! 私は付属陰光中学二年のアテナ・ヴァルツコップです。アテナとお呼びください」

「アテナちゃんね。えーっと、ギリシャ神話? の中で何か探している事があるの?」

 カレンは積極的にギリシャ神話についての話を受ける。

 ギリシャ神話の概要をあまり知らなかったアテナにとっては時代によって失われる。新たなものとして作り出された事が多い。起源にも様々な説があるため、現代で忠実には伝わっていないという。

 しかし様々な意見を読んでみて各々考えるのもまたロマンだと言う。

「とりあえず、これだけ読んでおけばギリシャ神話の基本的なところは理解できるかな」

 短時間の間に大学図書館中からギリシャ神話に関する本を集めてきてもらった。

「あっ、ありがとうござ……うっ……」

 アテナはめまいに襲われた。

(まただ……この世界がゆっくりと歪んでいるようなこの感覚。私、また……)

 それは先月起きた終業式のあの時と一緒だ。

「アテナちゃん? はっ! は……いっ今すぐ先生を」

「ん……ふぁあ……」

 アテナはようやく意識を外へ向かう事ができた。

 ゆっくりと目を開いた目の前の光景は外からは明るい光が部屋の中へ指していた。

 天井には見覚えのある凹が均等にある白い色。この何もない光景を見たのは二回目。

 第三者から言われなくとも、ここは陰光大学医学部付属病院だという事が理解できた。

(そっか、また気絶したからか……)

 気持ちの過半数は安心していた。

 それは気絶の原因について研究している病院である事。学校の系列である事。今日が幸い週末だった事。

 つまり今日は登校日ではない事だった。

「あ、起きましたね。おはようごいます。血液検査をさせていただいたので、結果だけお渡しします」

 原因としては軽い貧血も含まれていたという。

 起床後に服用する薬を処方された。

 何も知らない両親には後で連絡をしなくてはならない。怒られる事は無いとは思うが、余計に心配をさせてしまう事が一つ増えた。

「あっ。あの、同じ学校の子が搬送されましたか?」

「いいえ、今日はアテナさんだけです。ここ最近は忙しかったと思うので、チェン先生からゆっくり休んでくださいと」

「あっはい……」

 看護師が後にしたアテナのスペースにはテレビが置かれており、テレビをつけてみると倒れた翌日の朝になっていた。

 数日も寝ていたという訳ではないので、その部分でも少々安心した。

「あっ、そうだ。アテナさん。一緒にいた方が持ってきた図書館の本があるのでと言伝をいただきましたので、よろしくお願いします」

 何冊もの本がワゴンに乗ってやってきた。

 そこにはアテナが図書館で見た量の倍がさらに詰まれていた。

 アテナはワゴンに詰め込まれた本を一冊手に取りページを捲って読む。

 タイトルは『まんがで分かるシリーズ ギリシャ神話編』。

 今後の研究にはこれだけの資料があればある程度の事は理解できるだろうと期待している。

 バンにも情報を共有させるために下調べとして仮読みを行う。

「ふんふんふん~」

 誰か、アテナのいる入院室に入ってきた。

 その人は鼻歌を歌いながらいたが、何かざわざわとして気分がした。

 鼻歌の音量は若干大きくなり、右端に見えた人影は大きく濃いものになったと感じていたが、アテナは読書に夢中になっていた。

「アテナ・ヴァルツコップさん、ちょっといいですか~」

「はい、どうぞ」

 そこには、気絶した後にあった説明会で脳神経外科医師としていたピエール・ド・アズナヴールだった。

 彼の姿は以前見かけた白衣を着た姿とは違いポロシャツにジーンズ姿だった。

 その上には白衣は羽織っていなかった。

 ピエールはにこやかに話しかけた。

「お加減はどうですか?」

「あっ、大丈夫です……」

 アテナはその時、休日にやって来たピエールに対して少々不信というのか、違和感という不思議な感覚を抱いた。

 ピエールは慎重に答えたアテナに続いて口を開いた。

「ところで……。君の学校の副校長先生に関して何か悪い噂があるのかな~?」

「いっ、いや~そんな事は~(何ですか~)」

 アテナは心の中で少々涙目になりかけていた。

 そんなに笑顔の小さい声で話しかけられたら後々拉致去られるのではないかと恐怖を感じていた。

「でもでも~こんな半年の間に同じ縦学級、クラスの子達が立て続けに倒れていくのはいかにもおかしいな~と思っているんだよね~僕は」

「はっは~。(何~こっこの、お医者さんは。もっもしかして、この人は偽物の免許を持っているんじゃ~)」

 病室へ二人が入ってくる足音がする。

 そこには見かけた事の無いアテナと同いくらいの伸長をした子供とピエールと一緒に説明をしていた内科医師の黃哲堯。通称、チェン。

 いよいよ表情から困っている感じが現れ始めたアテナのもとに希和子とチェンが来た。

「こらこら、病み上がりの患者さんを質問攻めにするな。それに今日は希和とデートなんだろ」

 アテナは目を疑った。

(希和って誰ですかー? あっ。あなたは恋人とのデートをすっぽかして私のところへ来たんですかー?)

「あ~、まあ。そんなところだけど~」

(この人は女遊びをする人なのか)

 アテナはチェンとピエールの話の内容についていく事が出来なかった。

 そしてなぜアテナと同年代の女の子が来たのか。

 するとピエールの全体を見ると腰回りを後ろから抱く両手が伸びていた。

 後ろをよく見ると、チェンと一緒に来たアテナと歳の変わらない女の子がだった。

(あっ、あなたが希和ですか!)

 彼女は人見知りなのか、すぐにピエールの背中へ隠れた。

 ピエールはアテナが後ろの女の子へ目を向ける事に気づいた。

「あ、紹介していなかったね。この子は僕の家に居候している閏間 希和子ちゃんだよ」

「いっ、居候! あっ、あの~居候っていうか、もしかしてその女の子とデートを……。(まさか、不健全な関係を……!)」

「あ~~違う違う。決して」

 ピエールはとんでもない勘違いをしているアテナに希和子との関係について丁寧に説明をする。

 一時間後。

「ふぅ~良かった理解してくれたみたいだね」

 持っていたハンカチで冷汗を拭いたピエールだった。

「いや、普通。小学生くらいの子と居候しているのが、異常だけどな」

 誤解が解けてチェンから今日中に退院できると言われた。

 さらに入院が伸びるのはごめんだ。すぐに病院の服から図書館で着ていた服に着替える。

 数時間後。

 アテナは受付で手続きを待っている。

 すると、少し離れたソファに座っていたのは先ほどピエールの後ろから抱いていた希和子が一人ぽつんと座っていた。

 アテナは彼女が人見知りという事をチェンから聞いた。勇気を振り絞って彼女に話しかける。

 人見知りが激しい性格の希和子。

 その性格と現在の生活環境からか同年代の友人がいない。

 ピエール、チェンはここに来てから初めて見た同年代の女の子であるアテナに少しでもいいからと話しかけて欲しいとお願いをされていた。

 アテナはゆっくりと少し距離があるところから彼女に話しかける。

「あっ、あの〜」

 すぐさまこちらの方を向いた。しかしパッと下を向いた。

「あ、きっ、希和子ちゃん……。ちょっと、お話しない?」

 遠まわしで話すよりも本題から入った方がいいと簡単に話す事を提案した。

 希和子は下を向いたまま。

 しかし、静かに縦に首を振った。

「こっここに……座って……いいよ」

 小さい声ではあるが、口を開いてくれた事をアテナは嬉しく思った。

「私、アテナ・ヴァルツコップっていうの。アテナでいいよ」

「わっ、私。閏間……希和子。十……歳……」

「それじゃあ、私と一つ違いか。私は今年で十二歳だよ。今は中学二年生なんだ」

「中学……」

「希和子ちゃんは今、何年生?」

 アテナは学年を聞いた。

「二年生……」

 希和子は小さい声で答えた。

 アテナは続けて質問した。

「それじゃあ、同じ中学生だ!」

 この答えに関しては首を横に振った。

「私……大学生……」

 アテナは暫くの間開けた口が閉じなかった。

「えっ、希和子ちゃん。小学生から一気に大学生になっちゃったの?」

 再び首を横に振った。

「高校は少し通ってた。早く医学部に入りたかったから、飛び級したの」

 アテナは驚きを隠せなかった。

「いや、それにしても凄いよ。希和子ちゃん」

「そう……?」

「そうだよ。しかも、医学部だなんて……。こんな優秀な友達欲しかったな~~」

「でも、その年で中学二年生だから……、あなたも優秀だと思うよ……」

 アテナはいい事を思いついた。

「希和子ちゃん、一緒に遊びに行かない?」

「遊ぶ……? どこへ?」

 すぐには思い浮かばなかったアテナだったが、良いアイディアを思いついた。

「遊園地! 遊園地はどう?」

「ゆう、えん、ち……。いっいい……よ……」

 用事を済ませたピエールは二人で話しているところを邪魔しないために、少し時間を与えた。

 二人は後日遊園地へ行く計画を実行する約束をした。

 そして、希和子はピエールとのデート(仮)に行った。


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