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妄想能力者と現実能力者の討伐戦  作者: 忽那 和音
Chapter 3 青春編 文化祭編
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Episode 41

 個展が始まってから一週間が経過。

 部員達は午後からの補修など受ける生徒はいないため、スケジュール通りの担当分けをして、個展の運営をする。

 今日はアテナとトリンドルだった。

「はぁ~。もうすぐ、春休みだね~」

 トリンドルがしみじみと季節の変わり目を学校行事で感じていた。

「トリンドルちゃんは休み中も練習?」

「そうだよ。でも、エースの先輩が今中学三年生なんだけど、卒業したら別の学校に行っちゃうんだって」

「そうなんだ。この学校外へ進学していく人もいるんだ」

「この前の学園祭に来たポーレットちゃん達の日本校なんだって」

「あー、Sunlight Stand 学園? だっけ」

 アテナは半信半疑で言った。

「そう、日本校は本校に一年間半分行くの。場合によっては本校で練習とかできるんだって」

 トリンドル曰く、日本校へ行くとレートの関係で学費などが安いなどの理由でSunlight Stand 学園に限らず、海外に本校を置く学校へ高校、大学へ進学する人も一桁パーセント程だが何人かいる。

 海外の学校へ行く理由としては金額だけではなく、海外のトップレベルの選手も何人か在籍する学校としても有名で、他分野でも設備の良さもある。

 しかし、陰光大学も学力のレベルは引けを取らない。

 事実上国内トップの学校は日本校に吸収される以前からある分野でも著しく優れたものが数多くある。

「その学校に悪いイメージは持っていないけど、少し離れた国内の学校へ憧れの先輩が進学するって思うと寂しいんだ」

 トリンドルは珍しく暗い顔をして、机にうずくまった。

「その先輩も競技のために別の学校に進学するから、トリンドルちゃんも水泳を続けていれば、また再開できるのでは?」

 アテナはあくまで傍観者ではあるが、トリンドルに一つの可能性を出した。

「そう、だよね……。競技をやめるとは言っていなかったし、たぶん……、会える……よね」

 トリンドルは少し混乱していたような様子だったが、話をしたからか、落ち着いた様子だった。

 個展開催中に行われる卒業式、終業式。

 一日で完結するが、午後にまで及ぶためこの日限りは個展の開催を休止する。

 式典が始まる前にトリンドルはこの日限りで陰光大学教育学部付属陰光中学を卒業し、他校へ転校してしまう先輩へ挨拶をしに行った。

「私達もあと数日で二年生かー」

 ミツキが数日で訪れる進級を口にした。

「二年生になったら、私達どんな感じになるのかな」

 ミツキは自分たちの中学生として初めての先輩と後輩に挟まれる一年を妄想していた。

「特に何もないのでは……」

「エレン!夢がないよ!」

 ミツキは現実的で面白味も無い中二像について強く批判をした。

「中二だよ。中二なんだよ!」

「だから、何よ」

 エレンはミツキの言う中二を強調する理由を理解できなかった。

「中二はね。中二病と言って、左右どっちかの腕が呪われる一生に一度あるかないかの年なんだよ!」

 本気で中二の特別性について話しているミツキだった。

「全く分からないは。外的からの怪我で腕が故障してしまうのはまだ理解できるけど、呪われるとか……。無いわね」

 その後もミツキ、エレン、サーカで中二と中二病と特異能力について話合っていたが、アテナには全く住む世界観の違う場所だったため、三人の近くにはいたものの完全に聞き手側についていた。

「はぁ~皆ただいま~」

 卒業生に挨拶へ行ったトリンドルが帰って来た。

「トリンドルちゃん!」

 三人の会話についていけなかったアテナにとって、トリンドルの帰還は救世主の他に無かった。

「あ~トリンドル! 用事済んだの?」

 ミツキが問いかける。

「うん! メルアドもらっちゃった」

 トリンドルが嬉しそうに話した。

「ところで、四人で楽しそうに話していたけど、何を話していたんだい?」

「中二の特別性についてだよ」

 ミツキが答えた。

「あー。中二ねー夢があるよね~。ロマンだね~」

 まさかのトリンドルにも共感するもんがあった。

「ちょっ、ちょっと、トリンドルちゃんまで数少ない言葉で理解されると、私がずっと分からないままだよ~」

 アテナは戸惑った顔で、四人に中二について問いかけた。

 四人は中二について理解できていないアテナに特殊性、中二病の症状などを事細かに説明した。

 暫くの間、教室を後にしていたサーシャが一年い組の教室へ戻って来た。

「皆さん、もうすぐ卒業式が始まりますので、廊下に整列して下さい」

 サーシャの呼びかけに速やかに動いた生徒達。

 ルーム長のエレンもすかさずに動いた。

「皆、整列したわね?それじゃあ、行きます」

 エレンは先頭に立ってい組生徒達を誘導した。

 一年い組以外にも続々と各在校生のクラスが体育館に入って来た。

 二階にあるベンチには卒業生の保護者達が整列していた。

 全在校生のクラスが揃い十数分後。式典に開始に先立ち、進行役の教員が右前のマイクへ移動した。

「これから陰光大学教育学部付属中学校・卒業式を開始します。国歌斉唱、起立。保護者、来賓の皆様もご協力をよろしくお願いします」

 国歌、校歌斉唱が終わった。

「続いて、校長祝辞」

 しかし、今回も陰光大学教育学部付属中学校長のジョージ・アールヴは現れなかった。

 これまで、今年度入学生を迎えてから、一年生は一度も校長の姿を見た事はなかった。

 ここまで最初から最後まで姿を現さなかった校長はいるだろうか。

 アテナやミツキ、エレンはもちろん、一年い組、中学一学年、二、三学年。

 教員など、多くのこの学校関係者が校長の行方を心配していた。

 学校の今後を不安していた。

 入学式からこの卒業式まで校長代理として登壇し続けた副校長。メルタ・エーマンもそのうちの一人だった。

 メルタは表情を変えずいつも通り落ち着いた面持ちで卒業式の舞台へ立った。

 彼女は机の前に着き一礼をした。

「今回は当校の校長、ジョージ・アールヴは体調が優れないという事で、副校長の私、メルタ・エーマンが代理として祝辞を申し上げます。卒業生の皆様、卒業生の保護者、ご家族の皆様。ご卒業おめでとうございます――」

 続いて、来賓者祝辞、来賓者の紹介、在校生代表祝辞、卒業生代表祝辞。

 最後に別れの歌など、粛々とその後も式が行われた。

「卒業生退場」

 卒業生が退場し、保護者も退場して行った。

 卒業式は終わり、休み時間終了の後は中学の終業式が行われる。

「生徒の皆さんは各自椅子を持って、教室へ戻って下さい」

 体育館に誘導の放送が行われる。

「これで、終業式かー。この後どこか行かない?」

 ミツキは終業式が終わり、始業式までは皆で集まらないからとMUSEで学校帰りに寄り道をしようと誘う。

「私は大丈夫だけど……」

 アテナは何も用事が無かった。

「私も」

 トリンドルも今日は部活が無かった。

 その他の部員達も予定が無いという事だったので、放課後は一年間の総括として駅の方へ寄り道をする事になった。

 休み時間が終わり、生徒たちは校内放送の指示に従い、移動を始めた。

 い組は所定の場所へ着き、他クラスが来るのを、全体の指示を待った。

「これから二学期終業式を行います。校歌斉唱」

「学年ごとのまとめ」

 一、二、三学年ごとに二学期の活動内容を発表した。

「校長談話」

 登壇するのは卒業式同様、副校長のメルタ・エーマン。

(あれ、なんか……ちゃんと、式行われてるのに……何も入ってこない……しかも、なんか地球がずっと反転して戻って反転戻っての繰り返し……)

「バタン!」

 式が始まってから、アテナは集中しているのに話が入ってこなかった。視界の上下が反転を繰り返すというような通常ではない状況や感覚に襲われた。

 それは、アテナの身だけに起こった事ではなかった。

「はっ! アテ……ナ……」

「ミッ……ツキ、アテナ……ちゃ……ん……しっかり……うっ!」

「さっ、慧……ぶっ!」

「皆……、どうして……」

「アテナ……ちゃん……、ミツキ……ちゃん……、エレン……ちゃん……、サーカ……ちゃん……。バン……く……んっ」

「おいおいおい! 皆どうしたんだよ! しっかりしろ!」

 辺りは騒然とする。

 一年い組では数人が正常な状態で周りのクラスメイトが急に倒れた事に驚いている。

 慧もその一人で、いつも一緒にいるバンやアテナ、ミツキ、エレン、サーカ、トリンドルが一斉に倒れ込んだ事にも動揺を隠せない。

「式を一旦、中断します。生徒の皆さんは先生達の指示に従い、速やかに落ち着いた行動をお願いします」

 体育館内は一時パニック状態となったが、放送と担任、副担任によって生徒達は各クラスへ移動していた。

「皆!」

 一年い組担任のラレス・サーシャが駆け付けた。

「一年い組で体調が悪くない人達は教室で待機していてください」

「今すぐ、大学病院から救援を!」

「脈拍確認!」「息あります!」「こちらも!」「運べ!」

 次々と付属病院の医療従事者達が体育館へ大勢やって来るや否や、アテナ達は意識朦朧とする中、病院へ運ばれた。

「サーシャ先生。気負いしないで」

「はい……。すみません、副校長……」

「大丈夫、あの子達なら、私達の目標を達成してくれます」

「そう……ですね……」

 一面、四方八方が暗闇の空間。

 しかし、一人の物影があった。

 それは髭を生やした大柄の男。

「私達の土地保有数は全世界の六十パーセント近くを占めるほどとなった。さらに軍事力保有数も十五倍」

「これだけの土地を強固なものとして、保持し続けるにはこれだけは必要でございますかな」

「ええ、けれど……。帝の期待にはまだまだほど遠く。このままのペース、それ以上の勢いで戦闘と獲得を行わないと陛下やご子息もさぞかしご立腹よね~」

「しかし、古代朝界を除いて。あとは簡単な害虫駆除をするようなもの。ましてや、人類を敵などほど遠い話とな~」

「けれど、もし何かを仕掛けていたら、話が変わってくるわ」

「その時はその時だ。私達の力、スピード、威厳にはどの派閥、国家、軍もかなわない。そうだろ~?」

 画面上で七人ほどの人物が会話をしていた中の一人から画面の向かう八人目の相手に問いかけた。

 それは大柄の男。彼は鼻で笑い答えた。

「はい、もちろんです」


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