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妄想能力者と現実能力者の討伐戦  作者: 忽那 和音
Chapter 3 青春編 文化祭編
37/255

Episode 37

「私はもっと弾けたい!」

「へ?」

「では、以上で陰光生たちの日頃の鬱憤を叫ぶ大会を終了といたします。しばらくの間、休憩を取りたいと思いますのでご来場の皆様は学校内の化粧室などをご利用ください」

 陰光大学教育学部付属陰光中学・高校のステージイベントは全て終わった。

 しかし、アテナやミツキ達は未だに理解できない事があった。

「はー! 気分が良いわ! やっぱり、人前でカミングアウトするって素敵よね!」

 エレンは清々しい顔でアテナ達のもとへ帰って来た。

「そうよね! エレンちゃん」

「はい! 先生」

 何気に、エレンと中学で図書館司書のマリンと意気投合していた。

「ねえ、エレンちゃん。真面目キャラでいて辛いのは分かったけど、パリピになりたいって後夜祭のステージで大々的に言わなくても良かったのでは?」

 アテナが質問をした。

「しょうがないわ。学級会議で出場者人数が少なすぎるからくじ引きで各学年四人出てくるようにって言われたから~」

 井戸端会議のおばさん風に言った。

「そこも真面目か!」

 トリンドルは滅多に見ない鋭いツッコミをした。

「まあ、結局は真面目な性格はどうにもならないから、出たんだよね~」

 ミツキは長年の感でエレンの考えなどは理解していた。

「という事は、もしかして先生も職員揃っての会議とかで出るように強要されたとか」

 アテナは先生の身を案じ、深刻そうな顔をした。

「私はちゃんと、自分の意志で参加したんだけどな……」

 マリンの訴えも虚しく、生徒同士で話は盛り上がっていた。

「次の案内をお知らせします。大学校庭にて打ち上げ花火をします。大学校庭内での観覧はできません。高校校舎からご覧ください」

 日も沈んだ陰光大学の敷地内では終幕を知らせる花火が打ち上げられようとしている。

「皆、今日はステージで言えたから私に着いてきて!」

「はい! 先生」

 今回の陰光生達の日頃の鬱憤を叫ぶ大会という他に無い大会によって顧問であるマリンは率先して生徒達を花火の絶景スポットへ案内した。

 アテナの長く楽しい初めての中学学園祭が終わった。

「Good afternoon, please everyone.

 Welcome aboard Sunlight Stand Airlines flight 110 to Eastern Coast.

 We are now ready for departure.

 Please make sure that your seat belt is securely fastened.

 Your cabin attendants are looking forward to serving you.

 We hope you will enjoy your flight with us.

 Thank you.


  日本語訳: 皆さま、今日もSunlight Stand航空百十便、Eastern Coast行をご利用くださいましてありがとうございます。

 まもなく出発いたします。

 シートベルトを腰の低い位置でしっかりとお締めください。

 ご利用の際は、お気軽に乗務員に声をおかけください。

 それでは、ごゆっくりおくつろぎください」

 エンジンの轟音が響く機内。

 個室分けのようにされたグレードの高いシートに彼らは座っていた。

「フンフンフン~」

「ねえ、タマ! 日本のグミって本物の果汁を食べてるみたいで美味しいよ~」

「ポーレットちゃん、はしたないよ~」

「ポーレット他の人達も乗ってるんだから、タマに見せるんだったら、自分のシートからじゃなくて、自分で動きなよ」

 日本からアメリカへ帰国の飛行機に搭乗しているSunlight Stand 学園 Line coast 中学一年生。ポーレット・ミルズ、向明・ベネット・バーリー、タマーラ・グリゴリエフの三人は思いおもいに機内の時間を過ごしていた。

「ねえ、そういえば大食い選手権どうなったかな~」

 ポーレットはミツキが参加する後夜祭の結果を少し気になった。

「さあ」

 チャンミンは関心がなさそうに返事をした。

「着陸後にしかスマホは使えないから、私達が見る頃には時間が空いちゃうね」

 タマはポーレットの気持ちを汲み取るように時差の虚しさを離した。

「私も参加しようかな~」

「え、ポーレットちゃん。来年は陰光に行っちゃうの~」

「いや、留学だよ。なんとかして、ミツキと戦いたいわ」

「既にポーレットはミツキのライバルか」

「と言うか、二人は何かしたいとかないの?」

 大食い選手権に夢中なポーレットはチャンミンとタマに陰光への関心はないのかと問う。

「私は学校の皆や先生、家族から何かと頼まれごとが多いし、まだやる事が残っているから留学まではできないよ」

 ポーレットは機械の修理などに長けているため、中学一年ながら学校職員や地域の人達から頼まれごとをされる事が多い。

「僕も勉強と試合があるから、仮にポーレットが留学したら今度は他のメンバーも一緒に陰光に来ようかな」

 チャンミンは両親の影響で小さい頃から心理や医療分野に関わろうと日々勉学に励む。

 父の影響で中国拳法を幼い頃から習っている。

 現在は州内外で名を轟かすほどの実力となっている。

 タマと同じように、中学内外でも用事が詰まっているため留学という選択肢を取る事が難しい。

「僕達は家族や仲間などを理由に留学という選択はしないと思うけど、ポーレットは家族の事はいいのかい?」

 チャンミンはポーレットに問いかけた。

「私は……、いいよ、たぶん」

 ポーレットは小さい声で答えた。

 タマは席を立ち、ポーレットの手を握った。

「私達はいつでも、ポーレットちゃんの居場所だよ。どこに行ったとしても……」

「タマ……」

「ふん?」

「ありがとう……。あと、恥ずかしいからもう手は放して!」

 ポーレットは恥ずかしがりながらタマに言った。

「Now let me tell you about our in-flight service today.

 In a few minutes, the flight attendants will be passing through the cabin to offer you a beverage of your choice, as well as a light meal.


 日本語訳・それでは本日の機内サービスにつきまして案内いたします。

 間もなく乗務員が客室内を回りまして、お好きなお飲み物を軽いお食事と一緒にお配りいたします」

 三人達のもとにも軽食とドリンクが届けられた。

「ねえ、このバターブレッドめちゃくちゃおいしいんだけど!」

 パンを口に含みながら喋るポーレット。

「ポーレットちゃん、食べるか喋るかどっちかだよ」

「はーい!」

 タマのお母さん的注意を素直に聞いた。

「ふむ?チャンミンは餃子食べてんの?」

「そうだよ。でも、普通くらいかな。やっぱりパパが作った方がおいしいよ」

「ねえ、チャンミン。空港にVIPしか使えないHigh grade loungeがあるんだって」

「あー、なんか聞いた事がある。でも、それってVIPじゃなくて、沢山飛行機に乗った人が使えるところだね」

「なーんだ。でも、皆で行けるようになったらいいな~」

 ポーレットはつかの間の夢に浸かっていた。

「その前に私達は今回の研修のレポートを書かないと。もしかしたら、先生が沢山飛行機乗っているからそのおこぼれをもらえるかもしれないよ」

 タマは急に現実の問題を打ち付けるかと思ったが、意外な展開を予想した。

「あっ! それいいね~っていうか、詠先生は一人で最高級シート使ってずるいよね」

「しょうがないよ。仕事をしたいっていうから」

「この中距離、満喫しないなんてもったいないな」

 ポーレット、チャンミン、タマは一人機内で仕事を進める引率したSunlight Stand 学園 Line coast 中学・高校の教員、詠・スージー・セシルの様子を気にしていた。

「Good afternoon.」

「Good afternoon. The principal.」

「そこまで畏まらないで。この一週間、彼らの引率に感謝する」

「いいえ、私も気になっていた事なので……」

 詠は米国本校にいる学校長とテレビ電話を始めた。

 通常は飛行中の通信はできないが、国内有数の学校一貫校であるSunlight Coast学園は世界トップクラスの技術によって、飛行中の通信を可能にした。

 それは現在搭乗中の航空会社関係者も知っての事だった。

「それで、帰国途中ではあるが、報告を頼む」

「はい。向こうの教員達とも話しましたが、新年度に入ってから校長は姿を現していないようです。文科省は把握しているものの退任の命令などはしていないようです」

「そうか」

「はい。そして、今年の体育祭で提供会社からブレスレットなどの装飾品が優勝クラスとMVPの生徒達に配られたそうです。それ以降、授業中の失神、水泳中に溺れるなどの事例が多発しているとか。その生徒達の特長が優勝クラスのい組とMVPの生徒達だけである事」

「それは、何か因果関係があるとしか言いようがないような気もするが」

「診察した医師たちの関係からは特に何も起こっていなかったようですが、今後も監視活動は必要かと」

「今回の事と校長の長期不在。かつて親交のあった学校を運営している私達ができる事は彼ら、彼女らを守る事だ。陰光への留学プログラムの完成を急ごう」

「はい」

 詠は校長への中間報告を終えた。

 ソファを横にして、上を見上げた。

「装飾品、ブレスレット。そういえば、向こうの教員も何人か手にしていたわね。グルでの犯行?」

 詠の中ではますます、陰光への不信や謎が深まるばかりだった。


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