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妄想能力者と現実能力者の討伐戦  作者: 忽那 和音
Chapter 3 青春編 文化祭編
33/255

Episode 33

 澄み切った空。

 空気が少し冷たい。

 だが、清々しい。

 十五分ほど歩いた先にある付属中学と隣接する付属陰光高校。

 合同で学園祭が開催される。

 通常はボブのベージュヘアーを今日は学園祭仕様にした。

 後ろ髪を三つ編みで下にかけてまとめたヘアースタイルにして学校へ向かっている。

「は~、もう学園祭か~」

「おはよう、アテナちゃん」

「あっ、おはよう。トリンドルちゃん。もしかして、私の独り言って……、聞こえてた?」

「ちょっとね。緊張するよね。夏休み中に一回個展へ行っても緊張するよね」

「やれる事はやった。あとはお客さん達に見てもらうだけ」

 その後、続々と生徒達が登校してきた。

 会場中に学園祭のアナウンスチェックを声が広がる。

 担任のサーシャも来て、朝のホームルームを速やかに済ませた。

「では皆さんはそれぞれ、クラスと部活とスケジュールを見ながら活動してください。お客さんには温かくおもてなしをしましょう」

「\\\\\\はい//////」

 アテナとエレンはMUSEの展示場所へ行き、公開の準備をした。

 前々日から設営を完了させていたため、電源を入れるなど準備はとても簡単なものだった。

「アテナちゃんと私がまず、受付・監視役ね。次にバンくんとサーカ。皆、メールをしあって連絡は取りあうから、サボる人はいないと思うけれど」

「ここの学校って、真面目な人が多いから大丈夫だよ」

 アテナは違いを感じる。

 以前通っていた学校は陰光中学や大学全体の違いとして、真面目な人が多い。

 皆、落ち着いていた。

 とは言え、陰キャラな人やそのような人がいたとしても誰も否定的な事を言わないと感じた。

 この学校の方針なのか。

 一人ひとりの軸がそのようにできているのか。

 アテナには入って日も浅いこの学校の事をまだ熟知していなかった。

「ようこそ! 陰光大学教育学部付属陰光中学・高校学園祭へ。お越しになった皆様は中学、高校のどちらでも受け付けを済ませる事が可能です。詳しくは玄関前の受付担当の当校生徒や教職員にお尋ねください」

 高校からの放送がこちらにも薄っすら聞こえてくる。

 アテナ達MUSEの展示場所は南棟の第二美術室。

 第二美術室は第一美術室と比べて物が多い部屋だ。

 隣の美術室には美術部の展示が行われている。

 この長方形のスペースを使って、展示しようか考えた。

 結局のところ用紙による展示数を少なくする事。

 しかし、MUSEにはプロジェクターという展示方法がある事。

 中学・高校レベルは先進的な表現方法だろうこの手段によって、小さなスペースの展示が可能となった。

「もうそろそろ、お客さんが来てもいい頃ね。時間の半分ずつで受付と監視役を交代しましょう」

「うん。頑張ろう、エレンちゃん」

「ええ、頑張りましょう」

 開始から一時間経過後。

 数人の見学客がやってきた。

「あら、ここは何の展示かしら」

「こちらは、私達が独自で作った映像やイラスト、音楽を融合して楽しむ展示となっております。もし、お時間があればいかがですか?」

 二時間ほどが経過した。

 次の当番であるバンとサーカが来た。

「エレン、お疲れさま~。お客さんの状況はどう?」

「数人来たくらい。午後になったら、また来るかもしれないけど、一回、放送してもらわなきゃいけないかな。この後、私は放送室へ行ってお願いしてくるわ」

 エレンは放送室へ向かった。

「アテナちゃんも時間だから交代するね」

「あとは、俺たちに任せろ」

「ありがとう、二人とも」

「あっ、ここの学校何かと展示とかが多いから、今のうちに全部見てくる気持ちで言った方がいいわ」

「分かった。ありがとう、サーカちゃん」

 アテナは一旦、持ち物を取りにため、一学年が教室を使用している荷物置き場へ向かった。

 荷物置き場の部屋は休憩場所の無い生徒に向けに、休憩室としても使われる。

 アテナは昨夜、母のエリスから頼まれているものがあった。

「アテナ」

「なんで、あっ、な……にっ……?」

「明日から学園祭でしょ?何か買ってきて」

「それは……、強制?」

「いや、好きなものでいいのよ。お好み焼きとか、たこ焼きとか」

「う~あまりそういうものを食べないから分からないけど……、何かあったら……、買ってくる……わ……」

 エリスが何を望んでいたのか分からなかったが、何か持ち帰れるものがあれば、買う事にしようとアテナは思った。

「あっ、いた。アテナ~」

「あー、ミツキちゃんどうしたの?」

「今日は、中学。明日は高校で大食い競争があるんだって! 私出るから来てくれない?」

「まぁ~見るくらいだったら」

 アテナはこれから大食い選手権に参加する予定のミツキに付いていった。

「二日続けて大食い競争開催とか、凄い学校だね」

「なんか今回は志高い大食いが中学にも高校にもいるらしく、中学生も高校へ高校生も中学へ参加できるみたいなんだ。こんな最高の舞台、一生にあるかないかだよね」

「テレビで放送しているのも、上位に行くまでに大変だから、無理しないでね。あくまでも学校のイベントだよ」

「分かってる。けど、私はここで少し命を燃やしたいんだ」

 ミツキの気持ちは堅いものだった。

 大食い競争は二日続けて、後夜祭に行われる。

 いくら広大な敷地面積を誇る陰光大学教育学部付属陰光中学・高校であっても、駐車場などで使われてしまえば土地が無いのと一緒だ。

 そして、会場の混乱を避けるためだ。

「エントリー会場はこちらです! 参加対象は陰光大学教育学部付属陰光中学・高校の生徒である事と健康状態が良好な人に限ります」

 ミツキのエントリーが済まされた。

「私はこの会場で、この学校で爪痕を残すんじゃあぁ!」

「みっ、ミツキちゃーん! 分かったから、椅子の上の片足を乗せないで!」

 アテナは友人として恥ずかしながらも、小声でミツキに声をかけた。

 アテナとミツキは一緒に中学の出店や出し物、展示などを見た。

「学園祭って初めて?」

「前の学校でもあったけど、こんなにも賑やかじゃなかったかも。お好み焼きとかなかったし」

「なんか、地味っぽい?」

「そうだったかも」

「じゃあ。一通り、これ食べたいっていうのをリストアップしていこう」

 アテナはマップを出して、各教室やタイムテーブルを確認した。

「あっ、駄菓子屋さん……」

「アテナ、駄菓子好きなの?」

「もちろん。駄菓子って、誰でも好きなような気がするけど」

「私も好きだよ。特に、一桁で帰る棒菓子とか」

「私はきなこ棒かな」

「じゃあ、駄菓子屋さんへ行こう!」

 アテナとミツキは一緒に駄菓子屋さんへ向かった。

「いらっしゃいませ~」

 そこは、一年は組のクラスの出し物だった。

「ゆっくりごらんくださ~い」

「わ~、駄菓子いっぱいだね」

「あっ、トリンドル」

「えっ、本当。トリ――」

 教室内にいるトリンドルへ声を掛けようとしていたが、その音は途中で止まってしまった。

 その状況に驚愕してしまったからだ。

 トリンドルはすでに会計している最中だが、その買い物の量がスーパーマーケットのカゴ三つ分の量を購入するところだった。

「すっ、凄い。流石……。一年い組の甘いもの担当だ……」

 アテナとミツキの存在に気付いたトリンドルがこちらへ手を振る。

 十分後。二人のもとへ袋三つ抱えたトリンドルがやってきた。

「二人とも~、何か決まったの?」

「決まったの~じゃないよ! これじゃあ、私よりトリンドルが目立っちゃうよ」

「いや、そっちの心配……。それにしても、凄い量を購入したね。トリンドルちゃん」

「え~そう~。もう駄菓子屋さんが周りにないから、全商品買っちゃったよ。ちなみに一番のお勧めは、大判麩菓子だよ」

 トリンドルの持っていた荷物の中でもっとも面積を取っていたのはこの大判麩菓子。その大きさは座布団一枚に相当するものだ。

「そっそれは、いつ食べるの?」

「う~ん。学校で食べたら掃除大変そうだし、家で食べる事になるかな」

「ほんとに、学校で食べないでね! これから残るはずの私の爪痕が薄くなってしまうから」

「爪痕?」

「トリンドルちゃん、気にしないで……」

 トリンドルは荷物置き場へ購入したものを置きに行った。

 アテナとミツキも駄菓子屋さんで少々購入した。

 後々に二年へ組で出店されているお好み焼きで合流する約束をした。

 お好み焼きを購入したアテナ、ミツキ、トリンドルは教室で食べていた。

「アテナちゃんは駄菓子屋さんで何買ったの?」

「私はチョ事きなこ棒だよ」

「ミツキちゃんは?」

「私は各種棒菓子だよ。しょうゆとか、塩とか、みそとか」

(ラーメンの味……)

この期に及んでも、ミツキの口には食事味しか合わないのだと。やはり、自分とミツキは似て非なる存在。今後も相対することは少ないだろうと信じている。

「でも、黒糖味ってあるらしいけどなかなか入ってこないんだよね」

「それ、沖縄にあるらしいよ」

「そうなの! 来年の臨海学校、絶対行こう!」

 三人で中学校舎を回った。

「あっ、そろそろ当番の時間だ」

 トリンドルは時計を見て、MUSEの展示会の仕事が近づいている事に気づいた。

「そういえば……」

「二人は楽しんで! あと残り僅かだし」

「いや、私の学園祭はこれからだ」

「ミツキちゃんこれからある大食い選手権に出るんだって」

「噂である事は知っていたから。ミツキちゃんも出るのかなって思って……」

「ミツキちゃんも!」

 アテナは聞く。

「い組からもバンくんと慧くんも出るんだよ」

「そうなの?」

「そうか、バンと慧がライバル……」

「ミツキちゃん、どうしたの?」

「受けてっ……、受けて立とうじゃない!」

 トリンドルのその一言がミツキの闘争心に火をつけた。

「わぁ~ミツキちゃん燃えてるな~。じゃあ、終わったら応援に行くね」

「あっ。うん……頑張って~」

 たまにアテナは思う。

 この子はどこか一部が幻想の世界に住んでいるような人で回りを見ていな感じがするのに、こういうときに限っては人を奮い立たせてしまうのだと。

 怒涛の学園祭一日目が終わり、後夜祭が中学で行われる時間となった。

「大食い選手権出場者はこちらへ来てください」

「いよいよだね」

 アテナ、サーカ、トリンドル達はまとまって、チームメイトであり部活メイトであり友人であるバン、慧、ミツキの勇姿を見届ける決意を持って応援する。

「さー今回の大食い相手は、これだ!」

「おっ……」

「今回の相手は、おにぎりだ!」

「一個のカロリーがだいたい百八十カロリーなので、二つ食べたとしてもご飯のお茶碗軽くいっぱいの倍は食べてる事になります。あー失礼、私今回の大会の解説を行います。陰光大学でスポーツ科学を研究しています博士課程二年の増田 振掛です」

「同じく医学研究科博士課程一年の筏 昇です」

「実況は私、陰光大学教育学部付属陰光中学三年放送部の青雲 カリオンがお届けします。ちなみに、具は何も入っていないので、塩おにぎりのまま食べてください。観客の方から梅や鮭、ふりかけを渡していただいても反則とはなりませんので、ご安心ください」

「そうなの……。あっ、でも私達何も……」

「安心して、アテナちゃん。私これ持ってきたの」

「そっそれは……」

「では、そろそろ競技が始まります。よーい、スタート!」

 競技が始まった。制限時間十五分以内でどこまで行けるのか、アテナには未知数のバン、慧、ミツキのスタマチキャパシティーをアテナは真剣に見守っている。

 出場者は皆、どんどん食べていっている。

 慧はよく噛んで、バンは次々に口に入れている。

 ミツキは水を飲まずに両手におにぎりを持って食べている。

「競技開始から五分経過しました。現在トップが中学一年い組のバンさん。口に詰め込むスタイルで食べている!」

「大食いに効果的かは見ものですね」

「あっ、ミツキちゃんの手が……」

「いけない! これじゃあ、学校の覇権を握ろうとしているミツキちゃんの野望が破綻してしまう」

「いや、そこまで考えてはいないような……。けど、このままじゃ、ミツキちゃんが負けちゃうよ‼ どうしよー」

「あれ? 後ろから何か、あっ、わさびふりかけ? 誰がって」

「そういえば、サーカちゃんがいない」

「もしかしたら、何か後ろで渡したのかも」

 トリンドルとアテナの予想は当たっていた。

「はーはぁー」

(あー。お腹には入るんだけど……、味に飽きちゃったなー)

 両手におにぎりを抱えて食べていたミツキは塩のみの味付けに飽きていた。

「ミツキちゃんミツキちゃん」

 後ろから聞きなじみのある声がした。

「後ろ、後ろー!」

 後ろを向いたミツキは大好きな味の入ったふりかけセットをサーカから受け取った。

「特別に山賊焼きと牛のしぐれ煮も入れといたから」

「ありがとう‼ サーカ」

 大好きなわさびふりかけを使って、ミツキのスピードが上がった。

「おーっと! ここでミツキさんのスピードが上がったぞー! これは、仲間からの差し入れのおかげかー‼」

「調子が戻ってきた! これなら」

 ミツキは最初とは比べ物にならないほどの速さでおにぎりをかきこんでいく。

「残り一分! みなさん、きついと思いますがここで出し切ってください」

「頑張れ、ミツキちゃん‼」

 アテナも距離があるが、頑張って声援を送る。

「しゅうりょう! では、集計作業を始めますので、出場者の皆さんは一旦、移動をお願いします」

 生徒たちは興奮冷めやらない会場で、結果を待った。

 机や椅子などが片付けられた会場に司会の青雲が経った一人でステージの中心に立つ。

「では……、結果発表をしたいと思います……」

 生徒達は静寂の空気を作り出した。

「優勝は中学一年……い組……」

「ミツキ・ペーターさんです!」

「やったー!」

 ミツキは優勝賞品の唐揚げ一日無料券をもらった。

 初日が終わった。

 二日目の学園祭。

「う~ん‼ 日本のかき氷は苺味が一番ね」

「ブルーハワイって、こんな味? ハワイと近いとは分からないけど、不味くはないですね」

「いやいや、宇治金時が一番だって。これがThe Japanって感じでね」

「というより、これ終わったら本当に友達の友達に会いに行くんだよね」

「Of course~私は彼らに会いに来たのよ。その目的は忘れてはいないわ。まだ時間はあるから、かき氷は味わって食べるわ」

「それでね~」

「Excuse me~ Lady」

 アテナの目の前には見知らぬ三人が現れた。



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