Episode 29
「は~い。一年い組はこっち一号車のバスに来て下さ~い!」
「ミツキ! 二年生の列に入らないの~」
「は~い!」
各クラスのルーム長と副ルーム長が所属別に生徒達の誘導をする。
「アテナちゃん、忘れ物ない?」
「大丈夫だよ」
「男子、遅いね~。何しているのかな~?」
「お待たせ~」
「大丈夫」
「ああ」
「大丈夫!」
「それじゃあ、乗り込みましょう」
最後にルーム長のエレンと共にバスへ入っていった。
担任のサーシャもバスへ入った。
「皆乗っているか班長さんは点呼して報告して下さい」
「バンいます」「◇◇◇います」「〇〇〇います」「□□□います」「△△△います」
「それでは、出発します」
程なくして、バスは一号車から順に出発した。
到着までの車内は中学生らしくカラオケをするなり、ゲームを楽しんだ。
車内で昼寝をしたアテナ。
青い風景に夢を見ているのではないかと疑ったが、それは現実の光景だった。
窓越しに海が広がっていた。
しかし、アテナが想像していたものとは違っていた。
砂は黒く、海は透明か灰色。
「これが海……」
宿泊先に着いた陰光大学付属陰光中学一学年は、荷物を取り出し各部屋に向かった。
「シャー!」
「わぁ! わっ和室だー」
「トリンドルちゃん、家に和室無いの?」
「そう。パパとママが洋物のコレクターだったりするから、皆椅子とかソファばっかりだよ。だから、この畳の独特なにおいが新鮮なんだ。ふーん、いい香り」
「あまりのんびりしていられないわ。荷物を置いたら、すぐに海岸へ出かけるよ。道具を持っていくわよ」
「はい、エレンちゃん」
部屋に荷物を置いた生徒達は、すぐさま持ち物を持って玄関前へ集まった。
「点呼は終わったわね。これから海岸へ行って、ゴミ拾いのボランティアを行います。あまり、ばらけないよう班ごとに行動してください。では、い組から行きます」
サーシャの言葉に従い、い組を先頭に近くの海岸へ向かった。
「エレンちゃん。海って、青くないの?」
「場所とか、天候によって違いは出てくるわ。ここは青くなくても、沖縄とかもっと自然が豊かな場所では綺麗な青色の海が広がっているわ」
「へー」
「学年が上がったら沖縄に行くから、そこは楽しみだね」
どうやら、エレンとトリンドルは青い海を知っている。
もっぱら、自然に関心のないアテナにとっては地球の神秘的な幻想童話のような話に聞こえた。テレビで見たとしても、加工しているのだろうと半信半疑の目を持ち続けている。
一学年全員が海岸に到着した。
「では、い組はこの範囲を掃除しましょう。ボランティア活動なので、遊ばないで真面目に行いましょう」
「はーい‼」
「私達はここを綺麗にしよう」
「はい」
「ねえ、トリンドルちゃん。なんか、海なのにでっかい木があるよ!」
「あ~。それは流木って言って、海から流れてきたりする木の事。ゴミとして捨てられてしまったりするけど、年月が経ったものは値段が付く場合があるから売ったり芸術品として加工したりするんだよ」
「へぇ~」
「金になりそうだな」
「ミツキ、ご飯でもないのによだれ垂らしているわよ」
エレンは別の班で活動しているミツキにすかさずツッコミを入れた。
別の班になっても、このコンビは変わらない連携だった。
実践向きかは未知数。
「それにしても、こまごまとしたゴミとか多いね」
「そうだね。ここは日本有数の観光地だから、人がいっぱい来る。その数字に比例してゴミも増える。もちろん、マナーを守る人だっているけど皆が皆守っている訳ではないから……。私達が少しでも綺麗にしないと。明日使うしね」
「うん」
開始から休憩を挟み、一時間ほどボランティアをした。
「お昼は歩いて近くの食堂で食べますので、今度はと組から先頭に二列で歩きます」
「い組は最後か~」
「食堂で海鮮を沢山食べられるかな」
待っている間、生徒たちは昼食への期待が膨らんでいた。
「えっ、海鮮……。私、食べられないかな……」
「あったぶん大丈夫だと思うよ」
「そうね。甲殻類は致命的だから、魚のフライくらいが来るのではないかしら」
「そっそうだよね」
エレンの予想は当たった。
「はい! 鮭フライ定食、お待ち同様」
「凄い。エレンちゃん、的確に当てた!」
「そりゃ~。もぶぅっエレンの予想はめちゃめちゃ当たるから、舐めない方がいいよ~」
「恐ろしや~これからエレン様の預言に従いまする~」
アテナは手を合わせ、道端のお地蔵様を拝むように擦り合わせた。
「やっやめてよ~土地柄とか、条件を考えた末に合たったまでの事だから~」
その後、数分エレンを崇めたアテナを謙遜し続けた。
昼食が終わり、生徒たちは宿泊先へ戻った。
「レクリエーション委員会の皆さんは広場へ集まってください」
旅館内に委員を集める放送があった。
「あっ、私そうだ」
「行ってらっしゃい、アテナちゃん」
「うん、行ってくる」
レクリエーションでは、各クラス用意した出し物を披露する。
い組はマジック。
各実行委員は広場で設営を行った。
夕食。
「今日の夕飯はぁぁ~カレーだああぁぁ!」
「ミツキ、声が大きいわ」
トリンドルとエレンがミツキの声で少し耳を塞いだ。
「ミツキちゃん、もうちょっと音量下げようか?」
「あー、ごめん……。カレーとなんだと思う?」
「サラダ」
「ゼリー?」
「私にも分からない」
「レクリエーション委員はこの後合流するみたい」
「皆、いないと寂しいからね」
「お~、来た来た」
「慧くん、バンくん」
「同じ班でも男女では別々で少人数だったら、他の班とか他クラスと一緒になるからな。だが、課外活動では固まるから問題はない」
「けど、バン。こっちに来ても、寝室スペースだけで筋トレするから汗臭いんだよな~」
「さっき、換気したぞ」
「いや~、シュッシュしないと消えないぞ~あれは」
慧のデリカシーの無い一言に若干ショックを受けていた。
(バンくん、しょげないで!)
「あっ、皆~」
「アテナちゃん」
「仕事は大丈夫?」
「大丈夫、無事終わりました」
「早く、席に着こう」
「そうだね」
アテナ達は班ごとに席に着いた。
「え~、それでは……。あなた、挨拶してくれる?」
指名された生徒が頂きますの挨拶を任された。
「では、いただきます」
「\\\\\\いただきます‼ //////」
「すごーい! 海沿いって感じの夕飯だね」
「昼食もすごかったけど、こちらも……」
生徒たちは夢中になって、食べた。
「\\\\\\ごちそうさまでした‼ //////」
食事が終わり、いよいよレクリエーションの時間。
生徒たちは広場へ集まった。
「いよいよ、始まるわ。皆この短期間でマスターしたパフォーマンスを披露するわよ」
い組生徒達は一人ひとり考えたマジックを披露した。
各クラスも、ダンスや演劇。思いおもいの特技を生かし、レクリエーションが終了した。
「はぁー楽しかった~」
「明日はいよいよ、臨海学校のメインイベント、海での遠泳だよ」
「今日は明日のために、早めに寝ましょう」
「そうだね」
「おやすみなさい」




