Episode 18
決勝直前。
女子バレーボールの試合は昼食休憩を挟む。
種目によって混雑を避けるために昼食時間をずらしている。
一年い組女子バレーボールチームも昼食を食べようと食堂に来た。
皆が昼食を食べている。
しかし、アテナは一人考えていた。
「ここまでは来たものの。優勝できるのかな。運動下手でも可能な範囲のボールをお願いしたいです」
アテナは許容範囲を見越し、激化する試合内容に備える。
「プレイにリスクがあったままでは、こちらの減点になってしまう。アテナちゃんだけでなく、チームにも運動が苦手な人はいる。それに対して、相手チームはチームワークが完璧。なら、こちらもチームワークで戦うしかないわ」
エレンはこれまでの試合傾向を考えて今できる事を考えた。
「そうだよ! 時間が残りわずかな中で、私達ができる事はご飯を食べる事だよ!」
そういい、ミツキは次々と昼食を口に入れる。
「ミツキは食べすぎないようにね」
今日の意味付きは気合いが入っている。
一人で唐揚げ丼とかつ丼を食べている。
トリンドルは彼女を心配した表情をする。
アテナはフィッシュフライ定食。
エレンはラーメン。他のチームメイトも一品ものや定食を食べている。
「ミツキちゃんがチームの柱だけど、後々影響しないか心配だよ」
アテナは彼女のいつもと変わらない食事量に不安を感じる。
「安心して、アテナ! 私はこれでも、この学校の文化祭で恒例の食べ歩き大会と大食い大会、さらに早食い競争で優勝するほどの胃袋の持ち主なんだ。これはきっと、午後の試合には全てエネルギーに変わっているはず」
ミツキはクラスメイトを前にキメ顔で言った。
「けど、小学校の時も学食ではないけど、そのくらい食べて、一試合は出れたけど、終わった後にトイレで水をがぶ飲みして、その後の試合は欠場したものだわ」
エレンが不穏な前例を口にする。
「えっ!? その時の結果は?」
結果の知らないアテナは固唾を飲み込む。
「もちろん、完敗よ。しかも、小学生同士の試合だったのに、四十点も差がつけられてしまったわ」
結果を聞いて血の気が引いたような顔をする。
それは想像以上に圧倒的なものであったからだ。
「そっそれじゃ、こっ今回も……。私達は決勝で負けが確実なの?」
ここまで来て決勝まで負けたくない。
何百本ものボールに触れてきたアテナ。
今回ばかりは本気だった。
「けど、この食欲を止める事は誰もできない。最終的な作戦として、ミツキが使うトイレやあらゆる水道水を監視しなければならないわ」
自制の効かないミツキの食欲。
エレンやトリンドル達内部進学組は彼女をただ見届けるだけしかなかった。
「そっそんな、ミツキちゃんの為にそんな事をしなければならないなんて」
アテナは試合が終わるまで保護者もしない過保護以上の監視をしなければならないと落胆する。
「とりあえず、今から飲水管理しなければ、この後の決勝に関わる。皆。優勝の為にミツキを全試合出場させるためにも、皆の力を貸してもらわないと!」
負けられない戦いがある。
「はい! 私にはこのチームには、ミツキちゃんの力が必要です。皆でミツキちゃんの飲水管理をするよ!」
「おー!」
一年い組の女子運動部稼ぎ頭のトリンドルが鼓舞した。
昼食を終えた一行は会場へ戻ってきた。
決勝戦。
ミツキの健康管理という名の飲水管理。
一歩間違えれば、人権など権利にかかわるような事を数時間して来た。
昼食の爆食いの影響は今の所、出ていない。
「ミツキちゃん。体の方は大丈夫?」
アテナは体調チェックする。
「うん! 皆が私の為にペットボトルの水を買ってきてくれたり、定期的に休ませてくれたから大丈夫だよ」
喋り方からもミツキの状態は良い。
「二年ろ組と一年い組のチームは、集まってください」
体育館内に決勝進出クラスのバレーボールチームを集める放送が広がる。
「選手は列になってください」
両チームは並行して一列に並んだ。
「では、陰光大学付属陰光中学・高校体育祭バレーボール決勝を始めます。お願いします」
「\\\\\\お願いします‼ //////」
全員、礼をした。
両チームメイトはポジションに着く。
「では、始め!」
審判が開始の合図を出す。
直後にタイマーも鳴る。
サーブはニ年ろ組。
「はっ」
相手がボールを放つ。
「アテナちゃん来たよ」
「はい!」
エレンの指示に前衛のアテナがボールを上げた。
「私が行くよー!」
「お願い、ミツキ」
「そーれ!」
ミツキはアタックをした。
ボールは勢いよくフィールド内に落ちた。
い組のサーブがろ組の前衛へ向かい下降する
「先制点なんて、絶対させないんだから。えぃ!」
ろ組の強力なアタックがい組を襲う。
「あっ、ボールを上げて」
「うわぁー!」
い組のクラスメイトの顔面にボールが当たった。
「だっ大丈夫!?」
「いっいたーい!」
女子生徒は顔を覆いあたった箇所を労わる。
「一時中断! 一旦、保健室へ行ってきて」
一人を除いた状態で試合は続行された。
(一人抜けた分を私が頑張らなきゃ)
アテナは自身の気持ちに緊張感を増やした。
「アテナちゃん、危ない!」
斜め上に、ボールが接近してくる。
アタックレベルのものだ。
(私、駄目なのかな……)
「アテナ、手を上げてー!」
ミツキの声が体育館中に響く。
アテナは片手を上げる。
体が宙に上がったように飛び上がる。
ボールを勢いよく前へ当てる。
ろ組の事を狙い踏み出した。
「こっこんな――こんなアタックって、あり~~!?」
相手チームが太刀打ちできないほどの攻撃だった。
チームメイトも驚くほどのものだった。
ゲームは一進一退の攻防が続き、始まって三十分経つ。
ようやく決着が着いた。
「ミツキちゃん!」
「ミツキ!」
「\\\\\\ミツキ! //////」
アテナ、エレン。クラスメイト達はミツキの名前を口にした。
「とおりぁー!」
ミツキが打ったボールはろ組の事内外すれすれで着地。
インとアウトの境目に落ちたボール。
審議に時間がかかる。
結論が出たのは五分後だった。
「今のアタックは、ろ組事内に着きました。合計点数を加算して、い組の勝利です」
「やったー! やったね、アテナ」
ミツキはアテナと抱き合わせて喜ぶ。
「わっ私、優勝しちゃった……」
当の本人は自覚するまで時間がかかった。




