Episode 13
「着いた」
トリンドルに着いて来たMUSEの生徒達は意外に思う。
「図書館。トリンドルちゃん、もしかして顧問をお願いするの?」
廊下に立ちアテナは聞く。
「そうだよ」
トリンドルは続ける。
「他の先生は忙しそうだし。何より怖いじゃ~ん」
彼女の上向いている指先はビクビクしている。
彼女の言葉にアテナは思い当たらない。
他の生徒達も誰の事かさっぱりだった。
扉の先にいるのは、陰光大学教育学部付属中学図書館を管理する。一人の図書館司書。マリン・ヘルベドール。
「行くしかないわ。トリンドルちゃん」
エレンは当たって砕けろの精神で挑もうとする。
その反面、彼女の選択にミツキは心配する。
「でも、マリン先生って図書サークルの顧問をやってたよね。それに司書としての仕事も大変そうだし」
「大丈夫、私が先頭に行くから」
今日の彼女は頼りになる背中に見える。
トリンドルは先に図書館へ入る。
マリンへ交渉をしに行った。
「快く快諾してくれるかな~」
自信の無い状態が続くのはミツキにとっては珍しい。
それほど、中学の教員達は多忙だ。
トリンドルが図書館に入り十分が経過した。
廊下で待つ一同は顧問の有無で創部の道が閉ざされると不安に思っていた。
扉がついに開いた。
出てきたのはトリンドルだった。
彼女の表情は入っていく時と変わらず、落ち着いていた。
「皆、入ってきて」
トリンドルに促されて図書館へ入る。
図書館へ入った先にいるのは、マリンだった。
「先生」
「皆。トリンドルさんから話は伺いました。顧問の話お受けしましょう」
明るい表情でマリンは言う。
彼女の一言にアテナは聞き返す。
「ふぇっ、いっ良いんですか?」
「はい! 皆で頑張りましょう」
マリンは顧問の申請を承諾した。
「皆のその熱意に私は感動しました。書類は持っていますか? 名前を書くので、後で提出してきてください」
アテナは手に持っている書類を取り出す。
マリンは机に併せるように屈む。
すらすらとサインを書いた。
「よし」
「ありがとうございます! マリン先生」
アテナは提出に必要な書類を持ち、図書館を後にする。
直ぐさま教員室へ行く。
「失礼します」
教員室へ入っていく。
出入り口から担任を探す。
サーシャはパソコンで書類作成をしていた。
提出先へ向かって歩く。
「お仕事中失礼します」
「あら、アテナさん。どうしましたか?」
創部の申請用紙をサーシャに渡した。
サーシャは中身を確認する。
「受理します。頑張ってください」
「はい! ありがとうございます」
サーシャに応援され、アテナの背筋は伸び切っていた。
アテナは出入り口前に行く。
「失礼します」
数分の滞在で職員室を出た。
現実と妄想のリンクを表現する探求譚が始まる。
車が忙しそうに何台も走る大通り。
二十何階の階層があるビルが立ち並ぶ。
一棟毎に何十件もの会社が入る。
その内、一つのビル。
半分以上の階やスペースをを持つ会社の最上階。
晴天の日に照らされ、車が左右行き交う道路や歩道を歩く人々を見下ろしている。
「もうすぐ、付属中の体育祭ですね」
髪を後ろに束ねた一人の女性秘書
彼女は社長のデスクに置かれている書類をまとめる。
「準備は整っているか」
白髪交じりの短髪の男性はガラス窓から中心に押されているソファに座る。
彼は冷めたコーヒーを一口飲む。
カップは空になった。
「はい。着々と」
まとめた書類は封筒の中へ入れた。
「よし」
男性は再び席を立つ。
「我々の持つ力は唯一この世界で敵に対抗できる力」
話を続けながら、鏡を取り出す。
「それを未熟な子供たちに託すのはリスクを有する。しかし、今の世代の子たちにしかできない」
小さくため息をついた。
そして、上を見上げた。
「やむを得ないが、彼らに託すしかないのだ。最善の支援を尽くす。我々にできるのはそれだけだ」
彼はソファから離れた。
女性秘書とともに、社長室を後にした。




