Episode 111
希和子やアテナ達生徒は学校へ戻った。
横須賀には続々と来訪者達のプロフィール作りに関わる医師や行政職員達が市谷、横須賀に集まる。
鉱石研究と人体への影響に関する研究に関わる陰光大学の教員や医学部付属病院勤務の医師達も日割りで加わることに鳴っている。
それに先立ち、ピエールは横須賀基地に入った。
横須賀基地に着いて三日が経過。
一日に何百人と見る為、そこまで人好きでも無い彼も仕事だと割り切っているが、図鑑の人体を見ているようで、飽きがくる。
「はい。次~おねがいしま~す!」
昼の上から注がれる日差しを受ける間もなく、食堂で昼食をとる。
自室へ戻ったピエールは、書類の理解に時間を使う。
診察後の国外からの侵入者達は後々、母国へ返還するというのが通常。
彼らは自分達の力でここまで来た。だが肝心の指揮していた大隊長が死亡した。地球まで来た方法というものが分かるまでは彼らを帰還させる方法というものは確立していない。
国務大臣が集まった会議により、しばらくは、各地域の施設に労働者として輸送する。
彼らの立場は先進国では行われていない捕虜として送る。
これまでに予測していない事態に、日本政府は混乱を極める。
かつて宇宙人との交信や有無など、ある日は都市伝説などとして扱われていた異世界人も既に現実のものとなった今。
ごく一部の研究者を除き、一般市民もメディアに煽られ行動を起こしている。
「あっ。ここだ」
髪を結った女性はドアをノックする。
「よ! 元気だったか~」
イザベルは平然と同僚の部屋へ入って行く。
「うわっ! イザベル……」
突入した彼女に驚くピエール。
「勝手に部屋へ入ってくるのは……ちょっと、失望したな」
「え~。そういう希和もそうだろ?」
イザベルは何を期待しているのか。怪しげな話方をしてくる。
「あの子はそんなことはしたことないよ。一度もね」
「え~。もう一緒に住んで何年だよ~。いくら年齢が中学生でも、そろそろお互い意識くらいしているだろ?」
彼女は止まらずに、ピエールにしつこく聞き出す。
「意識はしていても、僕は彼女が大人になって本人が決めるまでその気にならないようにしているんだ」
ピエールは頑なに自身の理性を保っていると口にする。
「けど、それまでは限度がある」
チェンヤオからは現実的な人の弱さを言う。
「それは分かっているさ。けれど、最後の一線だけは絶対に守るよ」
開いていたパソコンを閉じる。
「さっ。仕事をしようか」
そういうピエールは席を立つ。
「さぁ。二人とも、出た出た」
ピエールにより、イザベルとチェンヤオは部屋を追い出された。
仕事の準備が整っている三人は仕事場である体育館へ向かった。
「はぁ~。終わった~~」
イザベルが起立した状態で両手を上げる。
秋が深まった今。
日の入りは刻々と早まり、帰宅時間には夕焼けがよく見える。
「お疲れ様でした」
助手の看護師が挨拶をする。
「お疲れ~」
診療室を後にした。
宿舎に戻ったピエールとチェンヤオ。
二人はメルタから渡された書類の読解に手をかけていた。
「こんな難解な。人体への影響部分はなんとなくは理解できるが、それ以外の分野はファウスト達に任せるしかないな」
二人は書類を漁る。
「こんな文章、俺達だけに見せた可能性はあるのか」
「というと?」
ピエールが聞き返す。
「いくら国内最高レベルの国立大学だからと言ったとしても、自分達だけでこの研究は始めることはできても、完結させることはできない」
たった二人の書類に囲まれた部屋の中心から、間が開いた。
「他に協力者がいると。まあ、あの人。顔は広かったみたいだから、あり得るかもね」
「彼女が意図的に送ったとなれば、俺たちの研究チームに加わって貰う必要が出てくる」
それは研究会の解体か進化か。二人の間では密かにその議案が持ち上がる。
二人は夜遅くまでメルタが遺した書類を読み込んでいく。




