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妄想能力者と現実能力者の討伐戦  作者: 忽那 和音
Series3 UFW編
109/257

Episode 107

 エレン、バン達が戦闘中の同時刻。

 大型蛇との戦いが片付いたミツキはのんきに腹ごしらえのおにぎりを食べていた。

「ふ~ん。美味しいね~」

 両手におにぎり二つを手に取る彼女の姿を見る遠距離攻撃担当達。

 トリンドル、莉はいつもの彼女だと安心する。

 しかし、数回しか見ていない彼女の食事姿に一色兄妹は今回も恐ろしく思う。

「凄いね。ミツキちゃん」

「ああ。こんなおなか壊すような状況でおにぎりをあんなにも……」

 二人並んで、頭部から暗い影が見えていた。

「そのメンタル。文化系の私達も欲しいわ」

 一言ずつ声量が小さくなっていく一色兄妹。

「先輩、大丈夫です。ミツキちゃんがおかしいだけです」

「そうですよ。こんなにも食べられる事がおかしいんですから」

 トリンドルと莉は二人をフォローする。

「そうかな~。二人が言うんだったら私達。少しは自信持つよ」

 春菜は暗かった表情がほぐれた。

 彼女達の様子を見向きもせず、サーシャは真っ直ぐと望遠鏡越しに海上の様子を見つめる。

「混沌としてきたわね」

「先生?」

 担任の一言にトリンドルは不穏な気配を感じる。

「ミツキさん。胃袋のキャパが二十パーセント超えたと思うから聞きますけど、ここに来るまで何かありましたか?」

 ミツキは視線をサーシャのいる方向へ上に向く。

「んん~~。皆同じようなカラフルな丸いのが沢山いましたよ」

 距離の離れた自分達でも知る範囲の状況だった。

 思い出した。さらに話を続ける。

「そういえば、きちんと見えなかったけど、バリバリバリみたいな音が鳴っていたよな」

 サーシャは心あたりがあった。

「それはガラスが割れるみたいな?」

「はい」

 状況的にまずい顔をした。

「あ~そうそう。それで、倒した蛇とは違うでっかい目みたいなのが、奥に見えたような」

 眉をひそめた。

「それは……、私の持つ情報には無いわ。もしかしたら、別の……」

 顎に手をかけたサーシャ。

 彼女の反応にトリンドルは違和感がある。

「先生。ミツキちゃんが先に言ったガラスが割れるのと、でかい目が見えたのとは違う物なんですか?」

 サーシャは説明をする。

「そうね。ガラスが割れたのはもしかしたら、計画に無い増援。または、最終兵器と言ったところね」

 手を添えて下を向く。

「けど、あの何も見えない中でミツキさんが巨大な目が見えたとなると、話が変わる。情報通から受け取った話とは大分変わってくる」

 莉は口にする。

「先生。その情報通って人は信用できるんですか?」

「私は間近で会ったことが無いわ」

 サーシャ曰く、密かに情報収集をする専門の要員がいるとのこと。

 しかしその情報は鵜呑みにはできない。

 あくまで、自分達は最大限の対策をする。

 サーシャは視線を横須賀近海に移す。

「けど、この状況を見るともう前半の戦いは終わっている」

 海の向こうではアテナとメルタが協力してキュバリルを追い詰める。

 エレン、バン、サーカ達は各々、自身が持つ役割を全うしようと雲隠れしている本陣へ向かう。

 サーシャは遠距離からの監視に戦い全体が終わりに向かっていると感じていた。

「うん?」

「どうしたんですか? 春菜先輩」

 莉は一色春菜の耳に手を当てる姿を見て問う。

「何か、聞こえない?」

「何も」

 彼女の姿に違和感を覚える。

「春菜。何も聞こえないぞ」

「いやっ。何か吸い込まれる音がする」

 耳を澄ませる反応が終わらない彼女を心配するチームのメンバー。

 サーシャも見かねて、分析用に持っているタブレットを開いた。

 そこには、周波数の変化や周りの状況を各艦から送られてくるものを見渡していた。

「三十秒前から周期的に振動が発生している」

 一分が経過しようとしている。

 屋上待機のミツキ達も上空の異変を空気伝えで感じられる。

「にょ~~んぬぉ~~ん」

 なんとも言えない、どこにも交わらない曲がった空気と共に現れたのは血管が浮き出た巨大な目。

 それは充血しているそのもの。

「せっ、先生! あっ、あれはなんですかー?」

「あれは最終決戦用に改良を重ねた生物型兵器砲よ」

 元いる生物を巨大化、兵器化するように改良、研究をしていったものの完成形。

「こんなことの為に、生物を監禁するなんて」

 トリンドルは胸を痛める。

 生徒達は現実に無力さを感じる。

「監禁……。こちらの人間達も同じことをしているけどね」

 生徒達が彼らを裏で生き物の生きる権利を奪いながら研究してきたという事実を聞いて、心が複雑になっている。

 しかし、教える立場の大人は広い目で自身も同じように殺生を行う。

 襲来者に悪いことをしている気にもなる。

 だが、半分は利用された生き物の気持ちと研究者の宿命的な気持ちにもなった。

「大樹さん、春菜さん、莉さん、トリンドルさん。私達もそろそろ仕事に入りましょう」

 サーシャは武器である銃を手にする。

「武器を出現させていない人はとにかく瞑想!」

 現在の状況、遠距離チームで武器を出せる者はいない。

 生徒達は最優先事項の武器出現に集中する。

「でっ、はぁはぁはぁ……。つっついに……、できましたー‼」

 下から登ってきたのはアテナ達が出発前。

 アメリカにいるポーレットから渡されたスーツの取説翻訳に尽力していた女性隊員だった。

 急いで翻訳したものの専門用語が散らばったプロ仕様のスーツは難読なもの。

 隊員は分かり次第、通信で連絡するという約束をしていた。

「助かります。今すぐ、メルタ班へ繋ぎましょう」

 サーシャは横須賀基地通信部を通して、海上にいる金城慧へ連絡をする。

 メルタチームの乗る船。

 皆に置いていかれた慧はポツンと乗船する隊員と船内に避難していた。

「慧くーん‼」

「おっ! トリンドル」

 陸上にいる同級生の反応にうれしく感じた。

「元気そうで良かったよ。皆飛んで行っちゃったからね」

「ほんとだよ。ってか、ミツキ。なんで基地にいるんだ?」

 先ほどまで別の船で隣同士にいた一人が基地にいることが不思議に感じる。

「詳しいことを話している暇はないわ」

 サーシャが音声を通した再会に首を指す。

「私が説明します。メルアドにも送りますので、一緒に見てください」

 翻訳作業をした女性隊員はスーツの説明をする。

 船から出る前に散々弄ばれたスーツの機能を頭に入れていく。

「最後に腕の複数あるボタンの内に飛行機能があります」

「試して見ますね」

 右腕に搭載されているボタンの飛行マークを押す。

「おー」

 体に搭載されている細かい空洞が風に乗り、浮き上がる仕組みになっている。

 実践的に言われた通りにボタンを押していく。

「これで説明は以上です」

「ありがとうございました」

 一通り説明が終わった。

 サーシャは口を開く。

「遠距離チームは攻撃に集中します。基地にいるミツキさんと慧さんは防御に徹してください」

 休憩をしていたミツキとスーツの操作を覚えた慧はサーシャのチームをサポートする係に任命された。

「はい!」

 慧は元気のいい声で返事をした。

「それじゃあ~。そろそろ働きますか‼」

 ミツキは口いっぱいにおにぎりを詰め込みながら言う。

 立ち上がり、片手の拳を右手に受け止め気合いを入れた。

 慧はスーツを着用した。

 すぐさま船を後にした。

 同時にミツキも再び全身に武装を身に纏う。

 慧が飛び出したと同時に基地からも赤い一直線が飛び出して行くのが見える。

「私も! ミツキちゃん達だけに負担をかけさせない‼」

 トリンドルは仲間達を守り、周りにいる人達の為に。

 手からは大気から作り出した水柱を握っていた。

「わー! トリンドルちゃん‼ てっ、手がーー‼」

 クラスメイトの莉は彼女が突如トリンドルの手から出てきた水に驚く。

「先生! 私も狙えます‼」

 サーシャを呼んだ瞬間、水は霜以下の小さな粒子となり飛び散る。

 その中にはトリンドルの武器であるライフルが出現した。

「お願いします。トリンドルさん」

 うつ伏せの状態で狙いを定めるサーシャの左隣に同じ態勢となって調節を行う。

「すうーっ」

 目玉の怪物は白い部分が徐々に血管が浮き出た表面を広げていく。

「来る」

 サーシャは小さい声で言う。

 それは、後ろから小さい生物が現れることを意味していた。

「トリンドルさん。小さい生物を倒していきましょう」

「はい!」

 本土に近づけさせないために、基地に設置されている砲撃と共に攻撃を行っていく。

 一人の武器覚醒により、どこまで戦力が増強されたかは本人には分からない。

 しかし、最前線の防衛地点を絶対に突破されまいと必死の思いで一つずつ潰していく。

「巨大生物の砲撃は基地内最大級の自走砲にて行いますので、お任せください」

 通信指令室からの通信からは目玉の生物対応について、一任を提案する。

「お願いします」

 サーシャはひとまず任せることにした。

 しかし、一部の懸念として調合した特性弾薬による砲撃により、倒すことを失敗する可能性が大きいことを念頭に置いていた。

(やはり、切り札は彼女たちの全身武装の実施ね)

 一方的な望みだが、トリンドル達。

 遠距離チームの全身武装を完成に希望を持つしかなかった。

「砲撃開始!」

 砲撃指令から一斉に攻撃指示が下された。

「私たちも始めましょう」

 サーシャの指示の下。

 トリンドルも一つ一つではあるが、着実に数を重ねている。

 砲撃を行っている機体の一部は、目玉の怪物を狙っている。

 しかし、全くと言って言いほどビクともしない。

 むしろ、血管の範囲は時間を経過するごとに広がっていく。

 それは人の目玉を超える外にまで拡大した。

「先生。なんであの血管あんなにも広がっているんですか?」

 様子を見る莉は恐る恐る聞く。

「詳しいことは分からない。自己防衛の為かしら」

 広がった赤い線は目玉を守るように絡み合いながら大きくなっていく。

「ふん? 何か、光が重なっている?」

 春菜は望遠鏡を通して巨大生物の細部を確認していた。

「まさか、危ない!春菜さん。望遠鏡での監視を止めて!今すぐ、サングラスをつけて‼」

「ええ!?」

 サーシャによるいきなりの指示に回りは慌てる。

 赤い光から白く強い輝きは海からの光全てを横須賀基地が受け止めていた。

 音は砲撃によるものも聞こえない状態となっていた。

 トリンドルは耳を守るように手で塞いでいた。

 しかし、ゆっくりと海域を見てみると、スーツを着た慧が守っていた。

「あぁー‼」

 彼の悲鳴は痛々しいものとなる。

「金城さん。下がって! あなただけでは守り切れないわ‼」

「俺はぁ! 絶対に‼ 足手まといになりたくないんだぁー‼」

 これまで自身の意向で鉱石の装着をしてこなかった。

 しかし、心の中ではその力無しでも、皆と戦いたいとずっと思っていた。

 それがやっとかなった今日。

 慧に退避という二文字は思い浮かばなかった。

「慧君……。私、皆の事を……守るから‼」

 トリンドルは水と化し、基地から消える。

「トリンドルちゃん!? 消えちゃった……」

 莉が彼女の安否を心配する。

「大丈夫よ。彼女は海にいるわ」

 サーシャが海の方向へ指を指す。

 攻撃を阻止していた慧の前には水柱が高々に上がっていた。

「うわーー」

 目の前で起こった現象に唖然する。

 激しい水流の中には先ほどまで基地にいたトリンドルが中にいる。

 かすかにしか確認することしかできないが、彼女は両手を前に打ち出し、目玉の怪物の攻撃と対していた。

 対している境目から爆発が起こった。

 水を含む爆発は慧にもとにまで、飛び散る。

 水柱も消え中から現れたのは、全身武装化したトリンドルだった。

「トリンドル……」

 彼女は後ろを振り返る。

「大丈夫?」

「おっ、おお。けど、そっちこそ急に現れて」

 余地も無く現れた彼女に衝撃が収まらない。

 しかも、相手からの攻撃によりスーツの一部が破損してしまい自力で浮いているだけでもギリギリの状態。

 下を向いた慧は自身の足下が濡れていることに気づく。

 トリンドルの武器が持つ副作用的なものにより、一時的に浮くことができていた。

「あー。そういえば、そうだね」

「おーい! 私を置いて話を進めるなー‼」

 ミツキも全速力で基地からやって来た。

「そうそう。先生から三人であの目玉を倒せって命令だよ」

 サーシャは基地よりも前に出た三人を中心に作戦を進めることを指令した。

 それは、単なる砲撃では彼らを倒せないということの裏付け。

「先生も軍を差し置いて……。こっちの人達は事情を知っているものの。上の人達を激おこにしちゃうだろうな~」

 慧は大人同士の井戸端会議を地獄耳している間になんとなく内部事情は感覚で覚えてしまった。

「しょうがないよ。だって、私たちでしか勝てないんだから」

 トリンドルはあっさり割り切る。

「よし! じゃあ、始めよう」

 ミツキの一声で三人とも気持ちを決め、行動に移す。

 敵に近い攻撃を得意とするミツキと慧は砲台のトリンドルの護衛役として脇を固める。

 その間にトリンドルはエネルギーチャージと強烈な一発を放とうと準備をする。

 上空にいながらもうつ伏せの態勢になる彼女を見るミツキ。

「ここにいても、スタイルは変えないんだね」

「なんか、この方が落ち着くというか……。へへへ」

 発射準備は相手も同じだった。

 通信の一部を慧がキャッチする。

「発射から十五秒しか経っていないのに、もう発射態勢整ってるって通信部の人が慌ててる」

「それがどうしたの? 私が力負けするわけないよ。ピンチになったら、エネルギーの塊であるミツキちゃんから元気をもらうからね」

「なんだとー!?」

 冗談をかましつつ、気持ちを整えるトリンドル。

(大丈夫……。いつも通りに。いつも通りに)

 訓練の日々を思い出す。

 目玉の前には光る玉が現れる。

「行くよ。それー‼」

 同時にトリンドルがビーム砲による攻撃を放つ。

「行っちゃえー‼」

 彼女の勢いが加わり、目玉の怪物目の前まで近づき貫通した。

 傷口からは大量の出血をしている。

「何? この悲鳴は」

 サーシャが異様な音に反応する。

「やばい。再生してる‼」

 ミツキはその再生速度に驚く。

 内部から血管が繋がっていき細胞が肉体となり、集合化していく。

「これじゃあ。また最初からやり直しかよ……」

 再び攻撃を受けた時の事を考えたら、自分達で守り切れるか不安になった。

「私達じゃ。駄目だったのかな」

 無力感。ただそれだけの重力が彼女の両膝にのし掛かった。

「まだ、諦めないで! トリンドルさん。皆‼」

 基地にいた春菜の声。

 振り返る三人は、武器を手にした莉、一色兄妹、担任のサーシャが来た。

「力をトリンドルさんに集中させましょう」

 サーシャは次の作戦を提案する。

「そうか! 主砲に電力を集めるいわばエネルギー供給の役割として皆来たんだね!」

 計画的な打開策にトリンドルは感心する。

「ついに皆も、戦隊もの的な感覚が身についてきたと言うことか」

「それは違う」

 ミツキの上下男子に囲まれた日常が現在の発想に至っている。

 しかし、大樹は地味な反応をする。

「皆。私の方に手を置いて‼」

 トリンドルは自身の水泳で鍛えた柔軟な肩を三人に預ける。

 サーシャは監督役としてバックに立つ。

 なんの役にも立たない訳ではない。

 彼女は遠距離攻撃の切り札。

 皆。頼りにして後ろを任せている。

「それじゃあ。GSバズ――」

「ジェイドキャノン‼」

 防衛のミツキは技名を言おうとしている最中。

 トリンドルからの横入りされた。

「そんな~」

 無念の一言。

 トリンドルはスマートな武器からバズーカ砲の形に変化した砲撃を放つ。

 目玉の巨大生物も肉体の修復がほぼ終わる。血管状の防衛ラインや砲撃口が作られる。向こうから赤い光が一直線に向かって来た。対峙してトリンドル達も強力な一線を放つ。

「今度こそ!」「ここを!」「突破して!」「やるんだからー‼」

 ほぼ互角のエネルギーがぶつかり合う。

 莉、大樹、春菜、トリンドルの四人は力を合わせ巨大な敵に一撃を放つ。

「\\\やぁぁぁぁーーーーーーーー‼ ///」

 きれいに真ん中に境目があったものが、目玉の獣が優勢状況となってしまう。

「こんなところで、負けたら……」

 トリンドルは歯を食いしばる。

「トリンドル。下からエネルギーを吸い取って」

 聞き覚えのある声がした。

「そうか……。あの人も。分かったよ」

 寝ている時に出会ったあの人。

 自身の得意性質を頭の中に入っていなかったことに気づく。

「come in‼」

 左右からは水柱が発生する。

 水柱はトリンドルの腰に入っていく。

「良い‼ これならいける‼」

 トリンドルから放たれる砲撃は一秒を刻むごとに生物へ向かっていく。

「\\\行っけーーーー‼ ///」

 砲撃は距離だけではなく、発射口には似合わない太さに広がる。

 肉体は塵と果てる。跡形も無く。

「やったねー! トリンドルちゃん」

「えへへへ」

 莉はトリンドルを抱きしめた。


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