Episode 104
ミツキが全身武装し、蛇と一緒に横須賀へ向かった十分後。
エレンも何もせずにはいられなかった。
「ミツキにできるなら、私にも……」
天向かって手を掲げる。
「Bu bir silah. Belli olmak! ‼」
エレンの武器である小刀が現れる。
「これで……」
エレンは小刀を見る。
手元を握る。
上空を見つめる。
上空には小さな生物ばかり。
しかしその本丸となる人物は見えない。
エレンは考えた。
奥にはカーテンのように目隠しをしている。
その奥にさらなる巨大生物。
さらに、キュバリルを手に取っていた大隊長がいると仮定を作った。
「なら、私がルーム長として行くしか無いわね」
エレンは空中を浮遊する。
「ちょっと、行ってくるわ」
アテナ、ミツキに続いてエレンも行ってしまった。
「あら~行っちゃったね~」
ダニエルは慧と一緒に勢いよく上空へ進行するエレンに口を開けたままでいた。
「たしか、ミツキが追いかけて行った大蛇はあそこらへんから出てきたわよね」
エレンは先ほどまでいた船からぐんぐんと高度を上げていく。
考えが外れていればと思う時もある。
透明な壁があった場合は確実に一時気絶する。
しかし、今は日本と世界の存続がかかる非常事態。
いつでも、どこへでも、敵が襲ってきてもいいように小刀は臨戦態勢で備えている。
終わりの見えない探索。
こんなにもポツンっと、高度を上げながら敵の元へ進んでいるのにもかかわらず、誰も襲ってこないことが不自然に感じる。
エレンは一時停止をする。
周りを見回してもあたりは青空に白い雲。
下には無限に広がる海。
先ほどまでいた場所を上から見てみる。
慧達がいる船は親指で隠れるほどにまで彼女にとって存在が小さくなった。
(何か変……)
エレンは微妙な異変を感じる。
「はぁ……」
後方から間近に息をするものがいる。
既に後ろからナイフで襲ってくる。
刃先はエレンの首元に今にも刺すほどの近距離と緊張感。
「あなたは……。素人さんね」
「だからどうしたんですか?」
ヴェラはエレンの元を霧化し、離れた距離に移った。
「いや~。こんな大事なところで素人さんを戦闘軍団の中に突入しようだなんて、世の中も変わったものだと思ってね」
「何が言いたいんですか?」
ヴェラは口元を広げる。
「今回の戦い。私たちが圧勝だと言いたいのよ」
敵の本丸を狙ったエレンもそれは作戦に参加する前から重々承知だった。
だが、自分自身の力にはまだまだ限界までたどり着くのはまだ先だと言うことも彼女は信じている。
「あなたの発言は軍人の立場での言い方だということは私も理解できます。ですが、物理的攻撃だけが、この戦いだけではない」
エレンは自身の武器である小刀を向ける。
踏み出し右足を前にヴェラに襲いかかる。
しかし、彼女も黒霧を用いて戦うスタイルに変わりは無い。
再び後方からは五本同時にナイフを投げてきた。
エレンは交わし、彼女に剣先を向ける。
(このままじゃ……、勝ち目が無い)
考える。
相手も姿を消し、頃合いに現れ攻撃を仕掛けてくる。
(私もそうできれば……)
自身に問いかける。
(教えて、このままじゃ私の力が出せない‼)
「ほら、行っただろ。まずは相手を見るんじゃ」
エレンの脳裏には塔の作戦時に会った老人の声を聞く。
しかし、あたりを見回しても彼の姿は無い。
「相手を見る……ふん」
「何が面白いのかしら、いい加減。諦めなさい」
ヴェラは全速力でエレンの元へ向かう。
足は一歩も動かない。
何十本という手に持ったナイフがエレンの腹部に直撃する。
しかし、ヴェラの姿が消える。
「馬鹿ね。本物はうしろ、は!」
彼女は小刀からの風圧に押され、海へ落ちた。
刀を降ったエレンの姿は全身武装の神々しい姿となっていた。
「危なかったけど、先生とあのおじいさんのお陰ね」
ヴェラを落とす一分前。
どこから来たのか。自身の記憶により作られた物なのか判断が付かない老人の言葉を耳にした後。
エレンは周りから作戦参加時に来ている服のままでいた。
しかし、密かに全身武装を行っていた。
武装時の効果、幻覚によりヴェラ含めた人物達は彼女の武装展開と纏っている力の変化に気づくことはできなかった。
「は~」
エレンはヴェラを回収し、乗っていた船に戻った。
彼女の姿に先ほどまで見物をしていた生徒達は驚いた。
「わ~。エレン。真っ白」
慧は見たまんまの感想を言った。
「なんか、その表現は嫌ね。けど、全身武装のきっかけみたいなものは分かったわ」
「どうするの? エレンちゃん」
ビデオ通話を通してサーカが聞く。
「具体的に武器を想像する。そして、全身武装を出す時は作戦時に会った人のことを想像するのよ」
「そうか。分かった」
バンは急速に理解した。
「Όπλο, εκδήλωση!」
バンは上空へ出て行く。
「後の皆も座禅すれば大丈夫でしょ。私はまだやることがあるから」
エレンもバンの後を追って出て行く。
Bチームのメンバーも多くが武装を出現させ、船を後にする。
しかし、内一人は混乱をしているサーカがいた。
「は~わわわわわ……。皆、いなくなっちゃったよ~‼」
(ふふふ。なら、君はこちらに来なさい。ここが君の居場所だ)
「う~。誰ですか~?」
地ベタに座る彼女が大きな独り言をしているようにしか見えなかった。
しかし、サーカには確かに男性の声がした。
サーカの右腕は引っ張られ、青空が広がっていた海上から黒いトンネルを渡った。




