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妄想能力者と現実能力者の討伐戦  作者: 忽那 和音
Series3 UFW編
104/256

Episode 102

「あれ……。私、さっきまで上で戦っていたはずなのに……」

 ミツキは先ほどまでいた海上の冷たい風に晒されていた。

 目の前には自宅の書斎。部屋は共同で様々な本が置かれている。

 経済、文学、科学、数学、洋書。漫画まで幅広いジャンルの本達が収納されている。

 その中には勉強机も二人分が置かれている。

「さっきまで、戦っていたのに……。なんで、家に飛ばされるの」

「あなたはここから始まり。そして、ここにずっといるのよ」

 急に幼い子供の声がした。

 しかし、聞き覚えのあるとかすかに記憶が反応する。

 目の前には誰もいない。

 反射的にミツキは後ろを振り向いた。

 最初にいた書斎からリビングへ場所が移った。

 いきなりの出来事にミツキは驚きを隠せない。

 周りを見渡した。

 皆で食事を囲む食卓。

 ミツキが普段から座る椅子。

 そこには、幼い自身の姿がいる。

「あなたは……」

「幼い時のあなた。けど、自我が芽生え始めた時の私」

 幼い自分の存在と急な自宅への転送に当初は驚く。

 しかし、それはただの一瞬。

「あなたが手に持つ力をもって以来、半分の力しか受け入れてない」

「どういう?」

 ミツキは幼い自分に聞く。

「分かっているでしょ? あなたの生活上ほとんど順風満帆だけど、一桁パーセントの抵抗によって、真の力を発揮できない」

「抵抗って……」

 戸惑い、声が震えてしまう。

「分かっているはずよ。ママと本家との確執を」

「……」

 自身にとっての理論に口にする言葉も見つからなかった。

「あなたを取り巻く血脈の連鎖からは逃れられない」

「(そうだ……)私は一見自由で、本当は不自由なんだ」

 幼いミツキは話を続ける。

「そう、私の。血の半分は純血」

「そして、半分は混血の血」

 中学生のミツキは立ったまま、顔を下へ向ける。

「私は。私の家族は自分たちで一緒になっていても、大きな力からは逃れられない……」

 そのまま崩れるように体育座りになった。

「ずっとこのまま……」

「そう、あなたはずっとこのまま家という小さな場所でしか生きられない」

「友達も手を差しのばしてくれない……」

 思春期の脳内にはこれまでの記憶が思い起こさせられる。

 昼食の賑わう食堂。

 ミツキは周りにいつもの二年い組の友人達。

 トリンドルが目の前に座る。

 自身の卓上には特盛りカツカレーを食べる。

「もー。ミツキってば、食べ過ぎだよ~‼」

 普段から朝食に三食と変わらずに大量の食事を口にする。

「だってー」

 直らない大食い癖は日頃から友人達に注意されるほど。

「ふふふ。ミツキちゃん。私のカレー食べて」

 食の細いサーカは残りのカレーを進める。

「いいよー」

 ミツキは遠慮無く残りを食べる。

「いいな~。俺もそんなに食べれたらな~」

 慧はとんかつを食べながら、自身の限界を感じた。

「慧は一回の量が少ない分、食事回数は多いからそれで食べている量はミツキと同じくらいじゃないのか?」

「けどね~。ミツキさんは七回。俺は五回だからまだまだだよ」

 バンは既に心の折れた彼に事実を突きつけた。

 だが、彼の食べている丼は普通盛り。

「ミツキ。あまり食べるとこの後の体育で気持ち悪くなるわよ」

 うどんを食べるエレンは言う。

「ミツキちゃん。念のため、胃腸薬持ってきたから」

「おー。準備がいいね~。アテナ」

 ある日の記憶により、ミツキは我に返る。

 幼少期の自分に疑問を持つ。

 そして、口を開いて言う。

「いや……、それは違う……」

 口が震えながらも、自身の立場を否定した。

「私の友達はいつだって、手を差し伸べてくれた。どうでもいいことも、そうじゃないときも」

 彼女の左手には茶色のウサギ・たらこが抱きかかえられている。

「それ……。物心つく前からいる……。大事にしているんだね」

「これは……」

 小さいミツキはたらこを隠して言う。

「分かってる」

 自分には分かっていた。たらこは唯一の友達であることに。

「けど、私には家族と優しい友達がいる。だから、さみしくないよ」

 幼少期の小さな手を取る。

 ミツキは現在へ戻ろうと、リビングの窓に向けて走る。

 冷たい海中。

 ミツキは下へ黙々と沈んでいく。

「ミツキ! ミツキ‼」

(あれ? 一橋のじいさん……)

 目が開かないながらも、彼女の意識は目覚めていた。

「お前、本家に利用されてると思っているんだろ? それは違う。正憲と俺。彩子が責任を負う‼」

(パパ……)

 ミツキは父と従伯父の顔を思い出す。

(皆……)

目を開く。

「私……」

 海中から渦となって炎柱が下から立ち上る。

「はっ! ミツキちゃん‼」

 アテナは彼女の姿に安堵する。

 沈んだ姿を見たメルタ、マリン。作戦に参加する生徒達も沈んだ気持ちを取り戻した。

 彼女は火を纏った姿となり現れた。

「ミツキちゃん、ついに……」

 トリンドルが涙を浮かべて言った。

「ええ。ミツキさんの全身武装よ」

 二人目の武装解禁にサーシャは一つの課題解決に安心した。

 ミツキは剣を掲げる。

 中心から炎が吹き出す。

 頭上には火が渦を巻く。

 炎が徐々に拡大していく。

「ぎゃぁーおー」

 動物の声がする。

 しかし、相手ではない。

 それはミツキが作り出した炎竜だった。

 竜は高く上り、消えていく。

 しかし、ミツキの狙いは上空にいる巨大生物を倒すことではない。

 各船に近づいてくる小型生物を倒す。

 そして、近づけさせないように防御壁を作ることだった。

「バリア……流石ね。ミツキさん」

 サーカは彼女の考えに感心する。

「さて、次はでっかい蛇でも殺す――調理しよう――かな」


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