Episode 99
横須賀から許可無しに三機の艦隊が出発する。
市谷作戦本部は初耳の話だ。
「私たちはその話を了承した覚えはない」
しかし、大臣はある仮説を予感していた。
本部の中に裏で民間人を引き連れ、作戦に参加させるよう準備していた協力者がいる。
だが市谷全体として、そこまで憶測を考える余裕は現在なかった。
あくまで日本を守る軍隊として、プライドにかけて最前線の戦いと横須賀、関東・東海の海域を奪還することを指示する。
アテナ達は遠中近距離別に配置される。
海軍からの艦から上空へ攻撃をする。
空中浮遊のできないアテナ達を海上へ誘い出す計画。
しかし彼らにとっては蚊以下の存在だった。
生物からの攻撃にメルタが動く。
「危機を感じれば自ずと最大限の力は発揮できる。自分を信じて!」
メルタは生徒達を置いていき、空中に浮上する。
アテナ達は副校長の動きに感心する。
もう一隻に乗るマリンも浮遊する。
メルタが戦闘に立ち、本丸への進行を進める。
バッグにいるマリンが海上にいるアテナ達を含めた船を護衛する作戦。
アテナはあの時の感覚を思い出させようと呼吸を整える。
「ふぅ~」
そのときだった。
アテナの中には塔での戦いの光景が映し出される。
そこで感じた自身の力を引き出す光を見つける。
「これだ……」
アテナの体が浮上した。
「うぁ!」
一緒にいる慧達も驚く。
アテナは上空を浮く。
アテナはメルタに続き上空へ向かう。
「先生に追いつかなくっちゃ‼」
アテナは敵の方向へ手を伸ばす。
「Αιγίς! Έλα」
彼女の声に従うようにイージスの盾が出現。
盾から放たれる光を受けたモブクリーチャーを石化。
海上へ落ちるにつれて粉々に砕かれていく。
「すっすごい……」
ミツキ達は彼女の力に感心していた。
(私も早くあそこまで行かないと……)
メルタ、アテナに続いて鉱石を有さない慧はスーツを装着し、二人のサポートへ入る。
そしてキュバリルと再開を果たす。
「キュバリル。あなた、またこんなことをして! この前も言ったでしょ? あなたにはこの場所は会わない」
「分かっている! そんなことくらい知ってる。けど、私はそれくらいしないと……」
両手を拳に握りしめる。
「大切な人が……」
横からアテナが切り出す。
「大切な人がいるんじゃないですか?」
キュバリルはハッとした。
「大切な人の、人達を守るために私達の場所へ来たんですよね?」
彼女は笑った。
「ふん。な~んだ。分かっているじゃない……。なら……」
彼女は涙目になって強い口調で口にする。
「この戦いで勝たないと私の家族はどうにもならないということを分かってくれるわよね!」
後ろから大隊長が彼女を後ろから抱きしめる。
「何をしているんだい? キュバリル。いや、僕の番犬」
そして、顔に向かってナイフを向ける。
「悪いけど。この子は今、僕の捕虜なんだ。手荒な扱いだと思うと思うが、立場が立場何でね」
口元に笑みを浮かべながら彼女の肉体の隅から隅まで触れていく。
その光景にアテナは目を塞ぐ。
メルタは顔の表情を変えず、真っ直ぐな眼差しで大隊長とキュバリルを見つめる。
男は彼女の耳元へ小声で言う。
「いいね。ここで勝ちを続けないと、君は明日生きることもできないから……な?」
大隊長は霧と化しその場から消えて行った。
周りには連れてきた大小様々な生物と部下達が本土へ向けて進行する。
しかし、どこを見渡しても大隊長の姿はいない。
最初と本格的な動員が開始されてから、一時間が経過する。
メルタの後ろ。
敵軍勢側から第二軍が増員される。
「キュバリル。あなたのような人が品の無い男に墜ちるわけ無いわ。元の場所に戻りましょう」
諦めず彼女に手を差し伸べる。
しかし、彼女の体からは黒い霧を溢れさせる。
「ふ……。墜ちる……ですって……。私は捕虜よ。依存などしていない」
キュバリルは堅く拳を握る。
「ここであなたたちを倒して……。私の居場所を作るんだ‼」
メルタとアテナに向い、右手を伸ばした。
手のひらからは黒い霧が二人の元へ流れる。
それは槍のように先端が鋭い物。
空気に漂う曖昧なもののイメージ。
視覚からのイメージを自由自在に形に変更させて戦う戦闘スタイル。
特殊な彼らの武器にアテナは次の武器、方向、性質、強度などを予測するのに時間がかかる。
(次はどこ? 何?)
頭の中は数秒後の未来を予測している。
不慣れなアテナに対してある程度の経験値が備わっているメルタは剣で黒霧を切り裂いていく。
しかし一歩手前で彼女に近づくも、絶妙な距離を保って一撃を与えないようにキュバリルも動いている。
双方会話ができる距離でいながらも、一言も発さない。
口から出てくるのは呼吸のみ。
(入る隙が無い……)
二人の一騎打ちは終盤に差し掛かっていた。




