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ザッタとベツモノ

作者: GOISH KYOーKA

親愛なる山に捧ぐ。

ある星にて。

この星の生命体は、人間でいう頭部に器が付いている。

大抵の個体の器には雑多な何かが詰まっている。こういった個体を”雑多”と、呼ぼう。

驚くことに、彼らは器はまでもが酷似している。もちろん生まれたての個体の器は、均一ではなく、成長する過程で工業製品のようになっていくのだ。

個体の見分けがつかなくなるようなことはない。普通、ザッタたちは色とりどりの衣装で器を覆っているからだ。

彼らは、連結することで力を発揮する。昔は近くにいなければ連結することができなかったが、今は私たち人間の目に見えるか見えないかのチューブで常につながっているようだ。

彼らの社会の構造は、密集ピラミッド型から、緩いピラミッド型になったから、ザッタたちは自分が何につながっているのか、もはやわかっていないようだ。

彼らの社会の魅力は、みんなが同じ中身を共有していることだ。さらに、常時チューブでつながっているため絶えず中身が変化していく。

そして、驚きを禁じ得ないのは、均質な器を生み出す仕組みである。ザッタたちのほとんどは、自分の幼生体を自分の手で育てない、個人の手で同一の器を作り出すのはやはり難しいのだ。代わりに親個体は衣装を着せてやる。そして、幼生体たちは一箇所に集められ、器を変形させられていく。幼生体の器は柔らかくて整形しやすい。ある程度の数完成されていくと、整形が済んだ幼生体たちは連結し始めて、未完成の個体を整形し始める。こうして、ザッタは増えていく。

しかし、ザッタな社会で不幸にも器が壊れてしまう個体がいる。器が壊れると、中身がたちまち溢れ出して詰まっていた何かがなくなってしまうし、再び溜まることもない。そういった個体はザッタの連結から外れてしまう。

器が壊れる原因は様々である。幼生体の時に無理やり整形されたときの歪みだったり、何らかにぶつかった時の衝撃だったり、する。

こうして器が壊れたザッタは大きく二つの種類に分かれる。一つは無理やり何かで割れを取り繕い、そのままザッタの繋がりに復帰するものだ。最初は苦しそうにしているが、時間が経てば割れはなくなって以前通り雑多な何かがチューブによって供給されている状態に戻っている。まあ、元々いた場所ではないことが多いのだが。それにしても、こういうザッタが成体に多いのは、どうしてだろうか。

問題は、もう一方だ。困ったことに、大人しくザッタの繋がりに戻らない種類だ。こういう個体は、器が割れているにも関わらず、歩き回って自分で何かを詰めようとする。自分で何かを詰めようとしてこなかったもんだから、当然うまくいかない。中には途中で力尽きていまう個体もいるくらいだ。

やはり時間がたてば器は治るようだ。かろうじて生き残った個体の器に何かが溜まり始める。そうして、今度は器を埋める旅に出る。旅の間に鏡に出会い、写った自分の姿を見て驚く、器の形は歪なものになり、親からもらった衣装はもはやボロボロになっているのだ。ここで勘違いしてはいけないのは、それが驚くのは自分が器であるということである。ザッタの器はザッタが整形するが、必ずしも自分が何をしているのかは理解していないのである。

もはや、ザッタの特徴を有していないこういう個体を”ベツモノ”と呼ぼう。

ベツモノは、かわいそうだ。というのも、ベツモノにはチューブを繋ぐ場所がないのだ。また、ベツモノになりたてのころは、初めてのことだから仕方がないかもしれないが、とても愚かなのだ。ベツモノは、ザッタの衣装をめくり鏡に写そうとする。これはいけない。こんなことをすれば、そのザッタの器が壊れてしまう。ところが、大抵の場合は周りのザッタたちが止めに入るか、当のザッタが怒るかして、この愚かなベツモノを排除する。調和を乱すベツモノはザッタ社会には不要なようだ。

繋がることができなくなったベツモノにはザッタとともに生きる道は残されていない。

まあ、この星の観察記録はこんなところだ。それにしてもザッタの中身は一体何なのだろうか。


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