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6 バックアップデータアーカイブ

 こんにちは!

 私は前山まえやまひとみ

 現役女子高生なの!


 私はちょっとかわいいくらいが特徴の、ごく平凡な『現役女子高生』!

 かわいいは正義!

 かわいいことはとても大切。


 だけどもし。


 かわいかったり美しかったりすることを理由に貴重な宝石のように扱われたら?

 本人の意思を無視してあちこちに売られたり転がされたり。

 それを求める欲望に晒されて、手に入らない者の妬みを買って。

 挙句にむちゃくちゃに破壊されたりしたら…。


 それでも「かわいいは正義」って言っていられるものかな。


 って何を言ってるんだろうね。



 ま。そんなことより本題に入ろっと。

 




 さて。

 女子だろうが男子だろうが、高校生の本分は学問なのです。


 やっと終わりました期末テスト!

 私は優秀な女子高生だから結果は特に問題ないでしょう。


 これであとは冬休み!

 それにクリスマスがあるね!

 今年は彼氏がいるから、クリスマスもなんかわくわくしちゃうかも。



 私の彼氏、乙女木おとめぎ竜由たつよし


 明るくて楽しいし、顔はタイプだし。今のところ不満はないよ。

 なんか魔族で信用置けない以外はね。



 そっかー。

 彼氏のいるクリスマス。

 へへっ。


 乙女木君には普段からいろいろお世話になってるし、クリスマスプレゼントくらいしなくちゃね。

 高校生らしいものがいいな。


 間違っても3,000万円相当のダイヤの指輪に匹敵する物とかアホなことは言わんです。

 それくらいの価格で買うのって高級車とかじゃないの。

 私も彼氏もまだ普通車免許取れる年齢じゃないもん。


 そうねー。

 やっぱり手作りのクッキーとかいいかな。

 予算も手ごろだし、クリスマスっぽい!


 お菓子作りとか、別に全然好きじゃないし得意でもないけど。

 でも食べるのは好きだから。

 たくさん作ったら自分でも食べれるじゃない。

 いいねえ。



「前山さん、試験終わったね!

 冬休みの予定は?」


 毎度のことながら乙女木君が下校時刻に合わせて来る。

 同じクラスなんだし教室から一緒に帰る方が手っ取り早いけど、やっぱりクラスのみんなにあんまり見られたくない。


 しかし私、最近は乙女木君と結構仲良くしてるけど、不思議なことにクラスメイトから「つきあってる?」とか言われたことないな。

 むしろ乙女木君に対してだけ塩対応とか思われてる。

 まあいいけど。


「明日は友達と一緒に買い物に行くの。

 年始には親戚に挨拶するんじゃないかな。家族と一緒に」


「買い物ならオレも一緒に行っちゃダメ?」


「女の子ばっかりだもん。

 沙美ちゃんと、恵梨香」



 大体ね。

 例のクッキー作る材料を買い出しに行くんだから君を連れていってどうすんの。


 それに女の子だけで遊ぶの楽しいよホント。

 甘いもの食べながらおしゃべりするの。

 服を見に行くのだって、女の子達の方が断然センスいいもん。

 それにあの子達とも本の貸し借りしてるから、感想話すのも楽しみ。


 あー、楽しいな。

 人生たのしー


「いいなぁ。楽しそうだなぁ」


「乙女木君は友達と予定ないの?」


「友だちかぁ…」



 だって乙女木君って友達多いタイプじゃん。

 クラスにも仲良い子いるじゃない。



「なんかさ、今はいいや」


 どうしたって言うんだろ。

 そんなこと言う人じゃなかったのに。



「どして? 友だちは大事だと思うよ?」


「んー…。あんまり聞かないで欲しいな」


「言いたくない事情があるんだ? ふーん」


 無理に暴こうとは思わないんだけどね。

 誰だって人に言いたくないことくらいあるし。



「なんか変なこと考えてないよね?

 オレ前山さんに秘密にするようなことないよ。

 そろそろちょっとくらい信じて欲しいなぁ」


 以前乙女木君に、私は魔王と同じで『疑り深い性格』だとか言われたね。

 

 でも女子高生って警戒心が強い生き物なんだから別に魔王じゃなくても安易に他人を信用しないものです。



「それはまあいいとして」


「話をらしたな。

 やっぱまだ信用してくれてないね」


「冬休みの予定。

 例の場所行く日の予定は空けておいてね」


「うん」



 例の場所。

 つまり魔王のバックアップアーカイブが封印されてる場所。


 試験終わったら行くって約束してたんだ。



「それと…。クリスマス。

 12月24日は一緒に過ごそうね?」


「……やった!!」



 あ、すごく嬉しそうだ。

 やっぱり乙女木君も楽しみなんだね。クリスマス。


 へへっ。クッキー持って行くからね。

 クリスマスの定番。

 ジンジャークッキー作るんだ。


 楽しい予定は、予定であるうちから楽しい。



 もしもその予定が消えてなくなってしまったとしても、その楽しい記憶くらいは大切にしたいものだよね。




 だけど現実には、期待が高ければ高い分


 それが実現されなかったときの悲しみは大きい。




_______________




 さて本日は、例の魔王のバックアップアーカイブに行こうと思います。


 乙女木君の話だと魔王って人間の世界に研究室を持ってたんだってさ。


 魔王のバックアップアーカイブの場所はその研究室の地下奥深くにあるんだそうな。


 魔王の研究ってどんなものなんだろう。

 ちなみに私はそのへんサッパリ覚えていない。



「それがさ、オレも本当に不思議で。

 だってオレ、魔王様の研究室なんて行ったことないんだよ。

 なんでオレが場所を知っているんだろう。おっかしいなぁ…」


「怪しいなぁ。

 それ本当に正確な場所なの?」


 気のせいだったりしないよね?



「行ってみないと位置はよく分からないけど、その場所は分かるよ」


 意味が分からないー。



「どうやって行こうかな…。

 ドアで行くか。

 多分まだ放置してから20年経ってないハズだから朽ちてはいないと思うんだよね。

 ドアくらい残ってるだろ」


 よく分からないけど、いつもの『どこでも』的なドアを使うということかな。

 魔王城から直通の。

 アレで行けるなら手軽でいいな。



 とにかく行ってみることにしましょ。

 クリスマス前に一仕事。

 いつもの魔王城のシアタールームから出発です。



「ドア開けるよ。

 あの場所を思い浮かべて~っと」



 乙女木君がドアを開ける。

 ぎぎぎと音を立ててドアが開いた。

 つまり向こうのドアは相当建てつけが悪いんだな。



「うわ、さむっ」


 そこは小さな小屋の中のようだ。


 隙間風がすごい。

 冬なので厚着しているとはいえ、これは寒い!


 長時間いるなら引き返した方が良いかも。

 けどここ、すごく狭い小屋だよ?

 研究室というワリに何もないよ?



「そこ。床のところに地下に通じるドアがあるんだよ。開けるね」


 確かにあった。

 床板で分かりづらいけど開いてみれば地下への入り口だと分かる。



「とりあえず寒いから地下に下りよう」


 そう言って乙女木君はさっさと地下に入ってしまった。

 縄梯子あるんだね。

 私もついて行くよ。



「ふー。風がない分、地下は寒くないね」


 これなら引き返さなくても大丈夫。


 地下は明かりがないけれど、なんか乙女木くんが魔力使って明るくしてくれた。

 


「地下へのドアもオレ知ってるし、なんでだろう。

 以前ここに来たことがあるのかな。

 でも本当に知らなかったはずなんだけどな」


 相変わらず乙女木君が不思議がってる。



「実は来たことあったりして。

 で、魔王が秘密を守るために記憶を消したとか?」


「いくら魔王様でもオレの記憶を消すのは難しいんじゃないかな」


 魔王が何を出来るかなんて私は知らんもん。



「で。地下なら何かあるかなと思ったけど…。

 ここも何もないねぇ」


「そりゃそうでしょ。

 魔王様がこんな分かりやすい場所に大事なものを隠すわけないし」


 魔王、慎重で疑り深いヤツみたいね。



「ちなみにここが地図上でどこかと言うと…えーと…」


「わかるんだ?」


「位置情報取得中~」


 あ。GPS付きの腕時計してやがるコイツ。


「機能性腕時計は男のロマンだから」


 ちょっと分かる。



「スイスのあたりかな?」


「…ま…マジなの?

 知らない間に海外旅行に来てしまった…密入国じゃない」


「山奥だね。

 近くに人の住むような場所はなさそう」


「なんで分かるの?」


「そのへんは魔力で」



 へー。そうなのか。

 GPS使ったり魔力使ったり忙しいね。



「で? ここから?」


「んー。オレの記憶はここまでなんだけど…。

 多分この地下深くに魔王様の転移次元があるんだと思うな。

 そこにアーカイブが封じられてると思う」


「行ける?」


「近くまでオレが運ぶよ。

 個人認証あるはずだけど前山さんがいるから大丈夫なんじゃないかな。

 魔王様のバックアップということだから本人に何があっても入れるようにするのが普通だと思うし」



 そりゃそうだ。

 本人がアクセス出来ないようなバックアップとか意味ないもんね。

 逆に本人に問題なければアーカイブなんて使わなくてもいいんだし。


「地下に潜るとき、前山さんのこと抱きしめちゃうけどいいかな」


 ・・・・・。


「他意は……?」


「ありません」



 まあいいか。

 どうぞっと。


 乙女木君が勢いよく私を抱きしめた。


「前山さんのニオイ…」


「怒るよ」

「ごめんなさい」



 ふたりの周囲に空間を維持したまま、乙女木君と私は地下にどんどん潜っていった。


 長いな。

 どれだけ深いんだろ。


 この深さは、魔王の疑り深さでもある。

 決して誰も近寄らせない魔王の中の闇の深さ。



 ふと、急に視界が開けた。

 到着かな。



 まっしろい場所だぁ。



「個人認証クリア出来たみたい。

 やっぱり前山さんがいるからだね」


 やっぱ間違いないんだなぁ。

 私の前世が魔王なの。



 そしてこの真っ白な空間の中心にある台座のようなものの上に『ソレ』はあった。


「あれがアーカイブ、だよねぇ」


 他に何もない以上、そうでなければここまで来た意味がない。


 緑の石?

 宝石みたいね。

 キレイ過ぎて、禍々しいくらい。


 ふと横にいる乙女木君を見ると、なんだか青ざめてるみたい。

 珍しいな。



「前山さん、やっぱ帰らない?

 アレ多分オレには触れないよ。

 前山さんのために持ってきてあげたいところだけど」


「そうなの?

 そんな危険なものには見えないけど」



 というか、むしろ懐かしいというか。


 そうね。懐かしい。

 見ていると何か思い出しそう。


 そいえば乙女木君言ってたっけ。


『魔王の身体の一部をバックアップデータ用に使っていた』って。



 そうだった。

 私の一部なんだ。


 私コレ知ってる。



 私の手が自然と石に向かってのびていく。



「前山さん?

 触っちゃ危ないよ」


 乙女木君が止めるけど、危ない感じはしないな。



 手に取ると、それは私の中に溶けてしまった。


 そうだよねぇ。

 だってもともと私の一部なんだから。



『データ復元を開始します』


 あれ?

 

 データ復元?


 それってつまりアレか。




 そうだ、私は









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宜しければゼヒ…


『魔王の顧問弁護士』の方は完結してますのでそっちも宜しければ。多分ちゃんとおもしろいと思うんで。

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