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3 魔王城がたまり場です


 こんにちは!

 私は前山まえやまひとみ

 現役女子高生なの!


 っていうか、ふと思ったんだけど。


 例えば『女子大生』って言った場合。

『女性の大学生』のことなのか『女子大に進学した女子』を言うのかイマイチ不明だよね。


 同じように『女子高生』も、女子高に進学した場合と区別つかないね。

 普通はどっちを指すんだろう。


 ま。そんなことはどうでも良かったね。


 本題に入るよー。





 えっと。

 私はちょっとかわいいのが取り柄の、ごく普通の女子高生!


 私の前世が魔王だったっぽいけど、それは今はどうでもいいって話。


 交際してる彼氏は魔王の側近だけど、私に服従することを約束したから、これで一安心。

 楽しくハイスクールライフを送っています。



 ところで高校生ってお金ないよね。


 私はまだバイトとかしたことないし、お小遣いも限られてるの。


 私の実力をもってすれば、変なオカルトめいた力とか使わなくっても投資でも成果を上げられると思うし、稼ぐ手段はいろいろ考えられるけど。


 変に荒稼ぎして目立ったらイヤだからね。

 ごく普通の女子高生を生きるためにはね。


 それにね。

「お金ないねー」とかボヤきながらチマチマやりくりしつつ日常を送るのって、なんかすごく普通の高校生っぽくて良いと思うのよ。

 青春!!



 と、私は思うんだけど、彼氏がねぇ…。


 最近お付き合いを始めた彼氏。


 乙女木おとめぎ竜由たつよし


 魔王の配下の魔族なの。


 以前はごく普通の男子高校生だったんだけどね。


 あいつが変な誘惑してくるのよ。

 私を喜ばせたいという気持ちは嬉しいんだけど。



「前山さん、どこか遊びに行こうよ。

 どこでもいいよ。海外でもチョモランマでも。

 オレが連れて行くからお金の心配は要らないよ」


 どこの富豪のセリフだよ。


 というか、もし富豪にでもなったら怒るよ私は。

 目立つようなことして欲しくない。


 そりゃ私だって予算を気にせず遊びたいという気持ちはあるよ。

 でも予算を気にして生きるこの生活そのものがとても大切だと思ってるの。


 君とは、週末にたまにショッピングモールまで歩いて出掛けたり、学校帰りにちょっとだけ寄り道してアイスクリームやクレープを買い食いしたり、そんな日常を楽しませてもらってる。

 それでいいじゃないの。


 思うんだけど、多分だけど。


 私たちが大人になってから、こんな生活を思い出して懐かしくなると思うの。

 すごく大切な時間だと思うんだ。


 根気よく説明するから分かってくれたらいいな。




________________





 さて今日も授業は終わり。

 私は帰宅部なのでおうちに帰ります。



 部活って、やった方がいいのかなぁ。


 でもどちらかと言えば余裕のある時間は読書をしたい。

 映画鑑賞もいいな。


 最近うちの親が動画配信サービスに加入するのを許してくれたから、映画もいろいろ観られる。

 スマホの端末からでも観られるけど、やっぱり映画はもうちょっと大きいモニターで観たいね。


 乙女木君と一緒に観たら楽しいかな。

 今度誘ってみよう。


 でも、どこで観たものかな。

 互いの自宅はちょっとね。

 家族に付き合いを知られるのは気恥ずかしいし。



 私が教室から出て玄関口まで行こうとしたところ、乙女木君に声を掛けられた。


 珍しいな。

 いつもなら校門を出てから合流するのに。



「前山さん、ちょっと一緒に来て欲しいんだけど」


「どこへ?」



 乙女木君のことはわりと好きだよ。

 でも警戒している部分もあるの。


「ちょっと来て」とか言われて素直に行くのは恐ろしすぎる。

 チョモランマに連れていかれるかも知れない。



「C棟校舎の4階」


 C棟4階?

 うちの高校の校舎は何棟かに分けられていて、C棟は特別教室や図書室があるね。

 

 でも4階は特別授業がないときはあんまり人が出入りしない。

 人がまばらなところに一緒に行って大丈夫かなぁ。


 女子高生というのは警戒心が強くないとやっていけない生き物なのよ。

 なにせ『女子高生』という記号は犯罪に巻き込まれる代名詞みたいなものだし?


 タチの悪いオトナがいっぱいいるからね。

 特に世の中は『女子高生ビジネス』的な?女子高生を性的に扱うメディアが溢れていて気持ち悪いくらい。

 それを社会が真剣に是正しようとしない以上は個人で気を付けるに越したことはないの。


 だけどテレビばっかり見てると、そんな扱いが当たり前のように見えてくるから怖いよね。


 だから私はあんまりTV観ない。

 読書の方が好きだな。

 


 そんなわけでただでさえ警戒心が強いのに、イマイチ信用し切れない乙女木君が相手だもん。

 

 ま、でも。C棟校舎に全く人がいないわけでもないし。

 大体、人がいようがいまいが、こいつにとっては関係なかった。

 結界を張ればいつだって2人きりの空間が作れちゃうんだから。

 魔族こわいなー。


「ね。ちょっとだけ」  


 そう言って乙女木君は手を合わせる。

 乙女木君の笑顔って、なんというかチャーミングだよね。


 ま。いっか。


 私は言われるままにC棟校舎4階についていった。



「社会科資料室…。

 なんでこんなところに用事があるの?」


 そもそもドアに鍵がかかっているんじゃないかな。

 この時間だと。

 廊下には誰もいない。



「いいからいいから」


 そう言って乙女木君がドアを開け、私が確認するのを待たずに背中を押して私を『社会科資料室』に入れた。



「え?」


 社会科資料室だと思ったのに。

 そこには無限かと思われるほどに広い空間が広がっていた。


 真正面にあるのは…。

 全体がプリズムを放つ、水晶で出来たような、お城…?

 キラキラ光ってる。


 眩しい。

 派手だな!


 これは間違いない。


 変な場所に連れてこられた!



 慌てて来たドアに戻ろうとしたのに、乙女木君はドアをパタンと閉めてしまって…。

 そのドアは消えてしまった。


 騙された!?

 さらわれた?

 閉じ込められた?



 やっぱりこんな魔族、信用しちゃいけなかったんだ。


 服従するという言葉を信じた私が愚かだったか…


 私は、また…




「どお? 転移次元に魔王城作ったよ。

 前山さんに使ってもらおうと思って」


 乙女木君は全く悪びれる様子もなく、ニコニコと笑顔でそう言った。


 いけない。

 冷静になろう。


 誘拐犯は被害者が騒ぎ立てると逆上して殺害行為に及ぶ傾向があるらしいから。


 ここはフリだけでも冷静にならないと。



「乙女木君、ちょっとね、確認事項が多すぎて私は困ってます」


「なんでも答えますよ」


「…とりあえず簡単なところから。

 まず一点目。これが魔王城?

 普通、魔王城とかいうのは、もっとこう…、シルエットがおどろおどろしい黒い建造物なんじゃないかと思うんだけど。

 なにこのキラキラしてるのは」


 重大な点はここじゃないんだけど、冷静さを取り戻すためにツッコミから入れることにします。


「女の子はこういうの好きかなって思ったんだけど…。

 いろいろリサーチしたんだよ。

 キラキラしたデコとか好きじゃなかった?

 お気に召さないなら修正します」



 確かにそういうの好きな子も多いけど。

 スマホとかポーチとか、すっごいキラキラしたデコで飾ってる子いるよね。

 すげーと思って見てたけど。

 でも私のスマホはシンプル系なんだぞ。


 …ってどうでもいいわ。


 少し落ち着いてきた。

 やっぱツッコミ大事。


「二点目。なぜ社会科資料室がこんなことになってるの?」


 社会科資料室を魔改造しちゃったの?


「出入りは社会科資料室でなくてもどこでもいいんだ。

 でも道端でオレらがいきなり消えたら目撃者がいた場合怪しまれちゃうでしょ。

 だから『ドアをくぐる』という動作が必要だっただけ。

 この時間なら社会科資料室の付近に人は少ないし、これでも目立たないよう慎重にしたんだよ」


「どこからでもここに来ることが出来るってこと?」


「そう。前山さんの認証をしておいたから、前山さんが来たいなと思ってドアを開けてくれればどこからでも通じるようになってるよ」



 個人認証システムなのかぁ。

 最近のクラウドサービスと同じ?

 どこの端末からでもアクセス出来るってヤツ。

 現代的だね。



「帰り道は?」


 これが重要な点です。


「来るときと同じで、テキトーに城内どっかのドアからでも帰れるよ」


 ふー。

 帰れるのか。


 とりあえず良かった。

 まだ確認が取れたわけじゃないから油断は出来ないけど。


「で。最後に一番重要な点なんだけど、なんでこんなものを作ったの?

 『魔王城』? それって私を魔王にする気なんじゃないの…?」



 私が人間として生きるのに協力するとか言って、実はやっぱり魔王にするために既成事実を作ろうとしてるんじゃないのかコイツ……。



「あ。『魔王城』ってのは仮ね。

 別に名前は魔王城じゃなくてもいいよ。

『クリスタルパレス』とか付ける?

 それなんかラブホみたい…。

 ! いや他意はなくて!

 じゃあ『前山城』は?

でもそっちだと和風のお城の方が似合いそうだなぁ。

 長野県にそんなのが…」


「名前じゃなくて、なんで!

 こんなの!作ったの!?」


 いけない、語気が強くなってしまう。


 不覚にもちょっとだけ『前山城』面白いかと思ってしまった!



「なんでって…。

 オレは前山さんと一緒にゲームしたりブルーレイ観たりしたかったから…。

 お菓子とかつまみながら」


 は?


「お互いの家に行くのは無しって言うからさ。

 でも毎回カラオケルーム使うのも金掛かるだろ?

 だから城を作ってそこにシアタールーム設置すれば学校帰りとか映画の一本くらい見れるかなって…」



 ・・・・・・・。


「シアタールームあるの?」


「むしろそれしかない!!」


「Wi-Fi 通じる?」


「通じるようにしてあります」




 えっとね…。




 やっぱり大画面で見る映画はいいね!


 シアタールーム、なかなか立派でした。


 ホントに他に何にもないのね…。

 マジにそれだけの目的で城建てたんだ…。


 あ。ゲームもある。

 次はゲームもやろうね。



 この設備はどっから調達したのか聞いてみたけど


「オレの転移次元の中だから、アレンジは自在なんで」


 だそうな。


 それもそうか。

 何もないところから城を作れるんだもんねぇ。


 ただ、最先端のVRゲーム機器とかは置いてないな。

 乙女木君に聞いてみたところ


「やりたいなら調達してもいいけど…。

 ここにある機材って基本的にうちにあるもののコピーなんだ。

 店にあるのを勝手にコピーするのってやっぱ悪いかなって思って」


 意外に節度あるな。

 うん、ここにあるので十分です。


 けど、参ったなぁ。


 私も乙女木君と映画観たいとか思ってたところだった。

 契約してある動画配信サービスの映画!


 

 私の彼氏は誘惑的過ぎるね。

 






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