界斗の帰郷と日常・2
学校に着いてから、すぐに教室を探し、教室――2年A組――に向かった。
途中で光は、1年の教室へ一つ会釈してから向かい、俺達は軽く手を挙げて教室へ行き、雷は入っていった。俺は教室の外で、ホームルームが始まるのを待っていた。
「ふ~」
雷の安堵のため息が、教室の外にも関わらず聞こえた。
それから雑談の声が二分間ほどあり、チャイムの音が聞こえたと同時に、担当の先生が入っていった。
「席に就け、ホームルームを始めるぞ」
ガタガタガタガタと全員が座ったのを見て、
「じゃあ、まずは転入生がいるのは全員覚えているな。では、入ってもらう」
大きく息を吸い、扉を開けると、
『うおおおおおおおおおおお!!!』
『きゃああああああああああ!!!』
野太い雄叫びと黄色い歓声が上がった。先生は、それを見て微笑みを顔にあげている。
正直、驚いていた。何せ、覚えている皆に少しも変わっていないからだ。因みに、雷は雄叫びに混じって、叫んでいた。
「そこまでだ。全員、名前は覚えているな。よし、お前の席は窓際の一番奥だ」
しばらくして、先生が制止して俺の席を指差した。
「久しぶり、界斗。あと、よろしく」
隣の席の、知り合いの森宮優香が挨拶をしてきたので、返事をしてから席に座った。
◇
「はぁはぁ、あー疲れた」
今は、学校が終わった帰りだ。今日は始業式が大体で、後は連絡事項やその他諸々少しあって、その後は、
帰りだけなので、今は追いかけられていたのをまいた後だ。
なぜ、追いかけられていたのかは、俺が帰ってきたからだ。この町には、学校が各々一つ二つしかないのに、全員積極的だからお互い仲が良い者同士が集まりやすい。だからこそ、感情表現が激しいので、俺の帰郷を全力で喜んでいるのだ。
因みに、雷や優香などの特に仲が良い奴らは、明日の放課後に付き合って、との事だ。
「ただいまー」
「おかえりー」
家に帰ると、居たのは未来姉さんだけだったので、
「あれ、皆は?」
「光と愛と悠はもうすぐ帰るって。それと、春斗と鋼太郎は最後の仕上げに入るんだーって、言っていたからなぁ~。遅くなるんじゃないの?」
首を少し傾けながら、そう言った。
最後の仕上げ、か。本当に迷惑をかけちゃてるな。そう思っていたら、
「ただいま」
「ただいま帰りました」
「たっだいま~」
光と愛と悠が帰ってきた。
「おかえり」
「おかえり~」
そう言って、俺は自分の部屋に戻って着替えてから、リビングへと向かった。
途中、悠が部屋に飛び込んで来て、驚いて倒れた俺に、悠が滑ってしまって、俺と悠がキスをしてしまうトラブルがあったが、まあこれがいつも通りだよな、と俺は割り切ってしまった。
◇
「ぼ~」
っと、悠が半分以上放心状態になっていた。心なしか、顔が赤いような気がする。
しかし、俺はそれを指摘せず、無視して夕食を食べていた。
「ごちそうさまでした」
そのまま食べ終わると、食器を片付けて、ひそひそと喋っている光と愛に、こちらを見つめて心配している未来姉さんを横目に、二階の自室に入っていった。
150cmぐらいのケースを開け、中から太刀を取り出し、持ったままベットへ飛び込んだ。
「ふう」
夜が近くなっていくにつれて、全身が緊張していくのが感じる。
『そう緊張していたら何もできねーぞ』
すると、いきなり太刀から荒々しい、男性か女性の中間ぐらいの声で、頭に直接響くように言ってきた。
『もっとリラックスしねーとな』
『そうよ、もっとリラックスして』
「わかったよ、二人共」
もう一つ、今度は内側からの声がして、俺は内心驚きながら、二つの声に頷いた。
太刀からの声は、太刀に宿る自我からの念話。
そしてもう一つの声は、俺の中に宿るもう一つの魂、夕空鈴音だ。
彼女の声を聴くたび、罪悪感と自身への無力感があふれ出してくる。
『ごめんなさい。でも、今はこれが一番だと思ったから』
「うん。分かっている」
彼女は俺の緊張感から少し目を逸らす為に喋ったんだ。責める権利なんて、誰にも無い。
そして俺は深呼吸をして、緊張感を和らげた。
◇
日が変わる直前に、俺は真っ黒のフード付きのコートを着て、同じ色の靴を履き家の屋根上に立っていた。
『始まるぞ。5、4、』
太刀が残りの秒を読み始めた時、俺は腰を下げながら、いつでも抜刀出来るように構えた。
『3、2、1―――』
日が変わったと同時に鐘の音が聞こえた。
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