第3話 魔族ってなに?
「そうだな・・・。まず、余はエルフの王であるが、魔王ではない。」
魔王はそう切り出した。
「ウソ言わないでください。教皇様は貴方を魔王だと仰っていました。」
神官がそう反論する。オレも王様からそう聞いたぞ。
「そもそも、お前たち魔族とは何者だと思っているのだ?」
魔王は神官を無視してオレ達に聞いてくる。
「えっと、魔力の濃い森の奥深くに住んで、スゴイ魔法使いで、長生きで・・・?」
戦士が魔族の特徴を指折り数えながら上げていると、
「「「「あ!」」」」
オレ達4人は一斉に声を上げる。
「わかったか、まんま、エルフであろう?」
出来の悪い生徒を教える教師の様に、魔王?が話す。
「森に住む、魔法に長けて、長生きの、人型知的生物、つまり、われらエルフのことだな。」
「「「「・・・」」」」
あまりのことに絶句するオレ達。
「じゃあ、なんで魔王とか言われちゃうの・・・言われちゃうんですか?」
魔法使いが、おずおずと聞いてくる。
「余が魔王と名乗ったわけではない。ニンゲンが勝手に我を魔王呼ばわりしているだけだ。」
魔王、いやエルフ王が少し憮然として応える。
「で、でも、ニンゲンに悪事を働くから、魔王呼ばわりされちゃうんじゃないですか?」
神官、いい事いうな。そうだよ。エルフでも悪い事すれば魔王だな。
「悪事なんぞしておらんわ。悪い事というが、具体的にはなんだ?」
エルフ王は、今度は憤慨しながらオレ達に聞いてくる。
「えっと、王都で領主の館や大商人の店に火を放ちましたよね。」
神官の追及に、
「あぁ、250年位前のアレか。この近くの領主が我らエルフを攫って奴隷商人に売りつけた件だな。」
いきなり爆弾発言だな。人さらいかよ。エルフ悪くねぇじゃん。
「ニンゲンから見て我らエルフは見目麗しいらしい。幼子をさらって、王都の『やみおーくしょん』で売りさばくつもりだったらしい。」
「近所の領主と、王都の商人が結託して、組織的にエルフ狩りを行っていた。大人も子供も男も女も見境いなしだ。」
王様淡々と話しているけど、すっげー怒ってねぇ? 握った湯呑ミシミシいってるよ。
「余も危うく誘拐されかけた。エルフの森の中だというのに、オチオチ散歩にも出れんかったな、あの時代は。」
王様まで誘拐されかけたのかよ、ホントに見境ないな。
「はぐれモンの犯罪だと思って調べたら、思った以上に組織的だった。当時の王室や教皇まで組織の重役だった。途中から大聖堂?の地下でやってたからな、『やみおーくしょん』。」
教会まで人さらいの一味だったの? 神官が頭抱えている。
「組織の全貌を暴いて、我が国の特殊部隊が関係者全員を成敗した。生き残っていた攫われた者も全員助け出した。我もニンゲンの王都で指揮をとったぞ。」
「全貌を暴くって・・・」
「おぉ、全部調べるのに70年ほどかかったかな。ニンゲンの王など、親子2代で『やみおーくしょん』に参加していたな。まとめて王宮ごと火だるまにしてやったわ。」
エルフ王、ちょっと得意げに話す。王様のドヤ顔なんて、需要ないぞ。
「で、ニンゲンの間では火を放ったコトだけしか伝わってないのか? なんで火を放たれたのかとか、ニンゲンの側に火を放たれるだけの理由があったのでは?とか、だれも疑問に思わなかったのか?」
エルフ王は「何が言いたいことは?」と言いたげにオレ達を見る。
「「「「・・・」」」」
オレ達は何も言えなかった。
(つづく)