第17話(3章2話) ダンジョン
「それじゃ、行こうか。」
勇者の声を合図に、俺達は洞窟に入って行った。
光ささない洞窟の奥は、魔王の城に続くダンジョンらしく、闇の中である。
「聖なる光よ! ホーリー・ライト!」
「光よ輝け! シャイニング・ラウンド!」
神官と魔法使いが、それぞれ魔法で光を出してくれる。
俺が先頭、勇者が2番手、神官と魔法使いが3番目という、1-1-2で洞窟内を進む。
幾多の困難を乗り越えてきた、信頼と実績の隊形だ。
洞窟内の道は自然にできたものだろう、右に左に、狭く広く、上り下りとちっとも安定しない。
地下水が溜まったのだろうか、ちいさな池のほとりを歩いたり、底が見えないクレバスのような割れ目を飛び越え、俺達は進む。
不思議と魔物は出てこなかった。まぁ、俺達におそれをなしたのだろう。
洞窟内は時間の経過が判りにくいが、切りのいい時間にちいさな広場を見つけたので、今夜はココで野営することとした。無限収納から野営道具を取り出す。
「光の女神シャリーさま、我らに安らげる場所を与えたまえ・・・」
神官ちゃんが光の女神シャリーさまの護符に祈りをささげる。
テントを包み込む魔方陣が地面に現れ、魔物が入れない結界が生じる。
明日こそ魔王城へ乗り込んでやるぜ!
俺達は男女分かれて2つのテントに潜り込んだ。
洞窟内で気を張って歩いたからか、俺はすぐに眠りについた。
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次の日の朝? 俺はダンジョンの中であまり眠れなかった。
簡単に朝食? を済ませ野営道具を無限収納に片づける。
「さぁ、行こう! 今日こそ魔王城へ乗り込むんだ!」
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・・・あれから、何日経っただろう・・・。
既に食料も尽き、かろうじて地下水を飲んで渇きをいやす俺達。
魔王城どころか、現在位置も出口も分からない状態で、俺達はただ洞窟内を彷徨っていた。
俺は勇者のヤリを杖代わりに、かろうじて先頭を歩く。
俺の後ろには、勇者が魔法使いちゃんをおぶって歩きいている。
もともと体力のない魔法使いちゃんは空腹と疲労がたたり既に自分では歩けなくなっていた。
神官ちゃんは魔法使いちゃんの持つ勇者の杖と、自分の使う勇者の錫杖を頼りに、かろうじて歩いているが長くは保ちそうにない。
あらゆる魔物を貫く勇者のヤリも、どんな魔物の牙も通さない勇者の防具も、今の俺達には何の役にも立たなかった。
「・・・・もう、ダメ・・・(ドサッ)」
何かが倒れる音に振り向くと、神官ちゃんが倒れていた。
「神官! しっかり!」
勇者が魔法使いちゃんをおぶったまま叫ぶ。
「私はもうダメ・・・。お願い、ココに置いていって・・・」
「だめだ! あきらめるな!」
俺は倒れた神官ちゃんをおぶって歩き出す。
神官ちゃんの身体はビックリするくらい軽かったが、空腹にまみれた俺にはかなりの重量だった。
「ごめんなさい、戦士さん。」
意識もはっきりしないのか、神官ちゃんはうわ言のようにか細く話す。
「気にすんな。必ず魔王をたおすぞ。」
「まだそんなコト言ってるのね・・・」
憐れむような神官ちゃんの声をよそに、俺は空元気を振り絞って歩き出した。
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・・・だめだ、もう歩けない。
MPが枯渇し光魔法も途絶えた暗闇の中で、俺達4人は洞窟のなかでうずくまっていた。
執念なのか、勇者の武器シリーズは4種類とも手放すことなく持っている。
今の俺達には何の役にも立たないのに・・・。
・・・もう、ここまでか・・・。
魔法使いちゃんと神官ちゃんには、無限収納から毛布を出してかけてある。
2人とも衰弱して意識がないけれど、せめて寒くないようにと、勇者と俺とでかけてあげたんだ・・・。
俺と勇者は、2人のそばでへたり込んでいる。2人に毛布をかけてやるだけで、最後の力を使い切っちまった。
そばには辺りを小さく照らすランタンが置いてある。
この油が切れれば、灯りの無い俺達はおしまいだ。
・・・
・・・
・・・
勇者たちは、全滅した・・・。
次回予告
おお、勇者たちよ、全滅してしまうとはなさけない・・・
第3章はたった2話で全滅エンドか?
次回、第3章第3話、「神託」 お楽しみに!
(つづく)
3章2話収録後 スタジオ控室
魔法使い 「OPやらEDを端折ったわね!」
P 「なろう小説なんだからTV番組風の演出は1回でいいだろう。毎回やったら単なる文字数稼ぎだぞ。」
神官 「そんなコトより、今回私たち全滅なんですか?!」
P 「いつから魔王城にたどり着けると思っていた?」