第14話 先代ゴブリン王と先代勇者(ゴブリン王編第7話)
「父王や姉妹の夫は、50年ほど前に戦死した。お前たちの先代と闘ってな。」
「森で平和に暮らしていたゴブリン族の国に、先代の勇者一行が襲い掛かってきたのだ。」
当時を思い出すのか、ゴブリン王は瞑目してわたし達に話してくれる。
「襲い掛かってきたって、そんな人聞きの悪い・・・」
戦士が思わず反論してる。そうね、襲い掛かるなんて、先代勇者が魔物みたいじゃないの。失礼しちゃうわ。
「何が違う?! ゴブリンの国は魔の森の奥深くにあって、ニンゲンの国とは関りを持たん。先代勇者たちは、わざわざゴブリンの国までやって来たのだぞ、お前たちと同じように。」
そう言われれば、私たちも森の中で何日も野宿してこの国に来たんだっけ。おかげで汗臭くなって大変だった。お風呂にはいれて良かったわ。ありがとう。わたしは感謝を忘れない女なの。
「先代勇者達は、問答無用で村々を襲い、非力なゴブリンを次々と皆殺しにしていったのだぞ! 父王や義兄、義弟は戦える男どもを率いて先代勇者達を止めるために城で迎撃したのじゃ。」
ヒドイ言われようだわ。それじゃ先代勇者が悪いみたいじゃない。
「ゴブリン王、アンタはどうしたんだよ。先代勇者と闘わなかったのかよ。」
勇者が少しバカにしたようにゴブリン王に聞く。そうね、アンタ何してたのよ。
「お兄様は次代の王を継ぐ皇太子だったの。だから私達女子供や老人を連れて隣の国に避難させるために、戦いには出られなかったわ。」
「城の方が静かになったので、偵察用ドローンを放って様子を見に行かせたの。城は燃え、父王や夫は勇者達と刺し違えて戦死、周りはケガ人死人の地獄絵図だったわ。」
「「「「・・・・」」」」
ゴブリン王のお姉さまと妹さんが静かに話してくれる。その声に滲む哀しみに、わたし達は声を失う。
「我は皆と共に死者を弔い、けが人を治し、村々を再建し、城を立て直したのだ。・・・再建に40年、ようやく皆が笑えるようになって10年・・・。」
ゴブリン王の声に、静かな怒りがこもるの。無意識に放たれる魔導波がハンパないわ。
「もう二度とかような悲劇は繰り返すまいと、我は武術や魔導を極めた。お前たちを一蹴できるほどにな。」
「「「「・・・・」」」」
そーでした。わたし達ゴブリン王にワンパンされたんでしたっけ。
「まぁ、いい。済んだ話だ。お前たちを恨みはせん。」
ゴブリン王はため息を一つ吐くと、気を取り直したようにわたし達に聞いてくる。
「それよりお前たち、帰りたくはないのか?」
次回予告
お話も終盤、いよいよお帰りイベント発生か?
次回! ゴブリン王編 最終話。「勇者たちの帰還」 お楽しみに!
(つづく)