第12話 種族(所)違えば文化(品)変わる(ゴブリン王編第5話)
「コイツはオレのヨメだ!」
「「「「・・・・」」」」
ゴブリン王の叫びに、私達は言葉を失った。
「ウソだ! その女性、どう見てもゴブリンじゃねぇぞ!」
勇者がそう叫ぶ。
「そうです。ゴブリンって、あなたみたいに小さい人型じゃない!」
神官も声を上げる。
そうよ、ゴブリンって120センチくらいなのよ。この美人さん達170から180はあるわね。スーパーモデル級よ。ちっともゴブリンに見えない。
「ウソではないわ!ゴブリン族の女性はみなこうだ!」
ゴブリン王が更にキレる。
「え・・・」
あまりの剣幕に言いよどむわたし達。
「だいたい、後ろに立っているのは我の母だ。」
「「「「・・・え?・・・」」」」
思わず後ろを振り返ると、私達の後ろに並んで立っていた美人さん達の一人が、微笑みながらスカートをつまみ、優雅な礼をしてくる。カテーシーっぽくて素敵。
てか、これでゴブリン王のお母さんなの? めっちゃ若い!
「・・・ウソ・・・、何歳なの?」
いつも冷静な神官が動揺しているわ。気持ちはわかるけど。
「女性に歳を聞くのか、意外に失礼なやつだな、ニンゲンの勇者達は。」
「・・・スミマセン。」
ゴブリン王の正論に、思わず神官が謝っているわ。
「あと、我の姉と妹、そして妻の妹だな。」
ゴブリン王が、残り3人の美人さん達を紹介する。
美人さん達が、ゴブリン王の紹介に合わせてお母様と同じ様にお辞儀をしてくれる。
ザ・宮廷作法! って感じでとってもカッコイイ。
私を連れてきたぼんきゅっぼんな2人がゴブリン王の姉妹で、神官ちゃんに付いていたのがゴブリン王母と妻の妹、ってわけね、
「ぜんぜん違うじゃないか!」
勇者はまだ信じられないようね。わたしもそうだけど。
「あのな、オスとメスで姿が違う生き物ってたくさんおるだろうが。」
呆れたようにゴブリン王が言う。
「メタルクワガタとか、草原バッタとか、見たことないのか?」
そりゃ知ってるわよ。メタルクワガタのオスはデカいアゴ牙があるけど、メスにはないわね。草原バッタも、オスはメスの10分の1くらいの大きさだっけ。
でもあんたたち人型でしょ? ムシ系の魔物といっしょでいいの?
「でもゴブリンの女性がこんなだって誰もしらないぞ。」
戦士がそう反論する。
そうね、街の誰もそんなこと知らないわ。
「ニンゲンが勝手にそう思っているだけだ。」
憮然としてゴブリン王が答える。
「ニンゲンの冒険者どもが、我らの村を襲うと、男は皆殺し、女は全員さらわれてしまうからな。いつまでたっても本当の事が伝わらん。」
「「「「すいませんでしたぁっ」」」」
思わず謝るわたし達。
「・・・じゃあ、その首輪はなんなのよ。どうみても奴隷の首輪じゃない!」
私は、気になっていたことをゴブリン王に聞く。
美人さん達はみな、黒い大きな首輪をしている。
よく見ると、首輪はみんな少しずつ模様がちがっていて、太い鎖がぶら下がっている。
「これは結婚首輪よ。主人からもらったの♡(ポ)」
ゴブリン王の隣に座る、奥さん(王妃さん?)が両手をほほに恥ずかしそうに答える。
「「「「・・・(萌だえ死ぬ!)・・・」」」」
ほほを赤らめて恥ずかしがる姿に、私達4人が悶える。
美人さんがやると破壊力が違うわ。
「け、けっこんくびわって・・・」
戦士がオウム返しの様につぶやく。
「我らゴブリン族の男は、プロポーズのときに、この首輪を送るのだ。OKなら、女はこの首輪を自分ではめてプロポーズの答えとする。」
ゴブリン王が説明してくれる。
「なんで首輪なのよ・・・」
「我らゴブリンの伝統だ。文句あっか。ニンゲンも似たようなコトしてるだろうが。」
結婚指輪と一緒にしないでよ!
「我らからしたら、チンケな指輪なんぞ送るニンゲンの風習のほうが理解できんわ。」
「指輪は女の子の夢よ! 大きなお世話よ!」
なぜか神官が怒る。あんた神に仕える身だから結婚できないでしょ。
「あぁ、大きなお世話だ。」
ゴブリン王が重々しく頷く。
「だが、ニンゲンのお前たちが我らゴブリンの風習である結婚首輪にケチをつけるのも、大きなお世話だと思わないのか? 種族が違えば文化も違う、そうであろう?」
「・・・ソノトオリデス。」
神官は気まずそうにそう答えた。
次回予告
ゴブリンの首輪は結婚首輪だった!
その首輪に込められた意味とは?
次回! ゴブリン王編 第6話。「お前は、俺が守る!」 お楽しみに!
(つづく)