第1話 勇者が魔王城にやって来た!
「どうしてエルフが魔王なんだよっ!」
彼は余の顔を見た瞬間、そう罵倒してきた。
(エルフでわるかったな・・・。後、余は魔王ではない)
初対面でこのように罵倒されれば腹も立つが、見れば彼は14、5歳位のニンゲンである。熱血系イケメンだな。ちくせう、もげろ。
まぁ、齢400年を超える余が、こんな雛鳥の罵詈雑言でいちいち怒るのも大人げない。
それに、「余は魔王ではない。」と説明しても理解してもらえないだろう。
「・・・で、何の用だ。というか、お前等、誰?」
余はなるべく冷静に、穏やかに彼らに問い質す。アポも取らず大勢でいきなり他人の家に押し入るとは、礼儀知らずな連中だ。
「ふざけないで! 私達は選ばれし勇者の一行! 魔王!貴方を斃しに来たのよ!」
最初に叫んだ少年の左に立っている少女が叫ぶ。黒いローブを纏い、黒い三角帽子をかぶり、右手に身の丈ほどの杖を持っている。いわゆる『魔法使いルック』というヤツだろうか。
ちょっとつり目の美しいが勝ち気な顔にふさわしく、強気な発言をしてくる。
(『選ばれし勇者』って、自分で言ってて恥ずかしくないか? 聞いてるこっちが恥ずかしいわ! あと魔王じゃないし。)
「そうだ、魔王! お前の悪事もこれまでだ!」
少年の右に立つもう一人の少年も、先ほどの少女に負けない位の大声で叫ぶ。こちらもかなりイケメンだな。すらっとした長身に、長槍を構えている。
(悪事とはなんだ、悪事とは。人聞きの悪いこと言うな。あと魔王じゃないし。)
「そうです、魔王さん、罪を悔い改めなさい。女神シャリー様に懺悔して抵抗せず降参するなら、苦しまずに滅してあげます。」
一番右に立つ白い神官服の少女が、錫杖を向けながら淑やかに宣言する。たれ目丸顔のカワイイ系少女で、この4人の中では一番丁寧かつ静かに話しているが、言ってることそのものは相当えげつない。
(ソレ降参しても殺しちゃう宣言だよね? てか、またシャリーの眷属かよ。あと魔王じゃないし)
余は改めて目の前にいる4人の少年少女を見る。まだあどけなさを残す顔立ちの4人は、それぞれの得物を手に、今にもとびかかって来そうである。
(めんどくせーなぁ、ホイッと。)
余は、拘束魔法と催眠魔法を使い、4人を無力化した。
・・・こうして、ニンゲンの勇者は捕まってしまいました。
(つづく)