7話 さすがはハロルドの息子だ
その日の夜、村では宴が開かれた。
「グランディア王国に乾杯!宰相閣下に乾杯!」
飲めや歌えや
クロークもすこしお酒を嗜みながら村を見ていた。はやめに対処できたことは良かったとしみじみと思う。野放しにすればどんどん被害は拡大する。盗賊による死者はもちろん、山による収入を得ることができない貧困も考えられたからである。
「きちんと報告したか」
「はい。ここを直接管理していた代官が盗賊と通じていたことを報告いたしましたので、そろそろニクルハース卿の耳にはいるかと」
「年若いニクルハース卿も勉強になっただろう」
クロークは顔を青白くしながら事態の終息にはしるニクルハースを簡単に想像できた。代替わりして、まだ半年だからなとほんのすこし哀れに思う。
「宰相閣下ー」
「どうしたのかな」
村の子供たちが集まってきた。
「これを!」
子供たちはそれぞれが手に持っていたものをクロークにのせていく。
「これはみんながつくったのか」
「はい!」
「昼間の宰相閣下もとってもきれいで花輪作ったんです。似合うと思って!今の宰相閣下もとても似合います!」
「そうか、ありがとう」
クロークはふわりと笑うと子供たちの頭を撫でた。花輪をみながらこれはなんの花かを子供たちに教えてもらいながら楽しい時間が過ぎた。
「では世話になった」
「たいしたおもてなしもできませんで」
「いやいや!とても楽しかった」
クロークがハロルドに別れの挨拶をしているととことこと男の子が恥ずかしげに近づいてきた。
「ジムドゥ、どうかしたのか?」
「あの!あの…」
クロークがしゃがみ目線を合わせるとジムドゥが顔を上げてクロークの手をとった。ハロルドは慌てて無礼を謝り、叱ろうとしたがクロークが小さく反対の手を上げて止めた。
「これを」
ジムドゥはクロークの左の中指に花輪を通した。そしてにこっとクロークの瞳を見つめた。皆があっけにとられている中、クロークは楽しそうな声を上げた。
「さすがはハロルドの息子だ!」
その昔、ハロルドはこのジムドゥと同じことをした。さすが親子といってもいい行動である。
「忘れてください…」
恥ずかしそうに手で顔を覆い隠すハロルドをみて一層面白くなった。ハロルドとしては恥ずかしいの一言に限る。今より40年も昔でクロークも目頭のシワがなく今より若い様相であった。ハロルドは素敵な女の人だと一目惚れをしてジムドゥと同じ行動をした。右の中指に指輪をはめるのは好きですという思いを伝える行為である。
「ジムドゥ、私のようなおじさんにはもったいない」
優しく人なでするとクロークは馬にまたがった。
「いくぞ」
「はっ!」
ヘイルダムたちの返事とともにクロークたちの背は村から離れていった。ジムドゥは離れていく背中を見続けた。いつか必ずお役にたってみせる!すべてはあなたのためにと子供とは思えない決意のかたさをその心に秘めてハロルドは息子の顔を横目でみて、これは本気だと諦めと羨ましさを感じずにはいられなかった。
「ハロルドと同じ事をするとはな…さすが親子だな」
馬を走らせながら楽しげにクロークは二人を比較した。それにヘイルダムはため息をついた。
「なんだ?」
「なんでも… 」
クロークに憧れてあの少年はこれから頑張るのだろうなと目を閉じた。でもクロークは様のための人すなわちこの国の役に立つもの、別にいいことではないかと微笑んだ。
それからニクルハース領の首都に赴くととてつもない歓迎と感謝をうけ、辟易し次の場所に移動し話を聞いていく。城をでてから11日が経過した。
「これで最後だな」
王国直轄領である街に到着した。冒険者が多く定住もしくは長期滞在するため人が多くそれなりににぎやかなドルフである。そこでも問題なく視察は終わり、やっと城に帰ることができると思っていたときに事件は起こった。
こういうこともあるかなとw




