4章緑竜を滅ぼす3
クロークは飛び下がるとアーツを見上げた。その目には理性が感じられた。
「アーツ…」
「久しぶりだね…こんな再開望んでなかったんだけど」
「なによ!なんで動けるのよ!」
アーツの足のしたから苦しそうなヘレナの声が聞こえる。アーツが足を退けるとボロボロなヘレナがいた。ヘレナはクロークを睨み付けると空気に霞むように消えた。
「逃がしたか…アーツ、ありがとう」
「お願いがあるんだ…わたしを今度は体ごと消滅させてほしい」
グウェンシークたちは動きの止まった竜がクロークを助けてくれたことでほっとひと息ついていたが竜の言葉にまだ戦うのかともう一度剣を構えた。
「…」
クロークはアーツの言葉にとっさになにも返せなかった。そんなクロークにアーツはすまなさそうな目尻をさげた。
「辛い思いをさせるけど、いつまでわたしの理性がもつかもわからない。誰かに操られるのはごめんなんだ」
「……わかった」
クロークは苦しそうな声で返事を返した。アーツはお礼をいうと一歩下がった。クロークは閉じていた目を開けしっかりとアーツをみた。アーツを見送るために笑顔をうかべながらみつめあうとクロークは歌いはじめた。
安らかなる終焉
グウェンシークたちは聞こえてきた旋律に剣をおろしクロークたちを見つめた。安らかな表情のアーツ、背中しか見えないが歌っているクローク、戦いによって焼けている地にはそぐわないが不思議と違和感を抱くことはなかった。
「聞いたことのない歌だ」
グウェンシークの言葉にいつの間に来ていたのかシーフがいった。
「終焉の歌です、陛下」
「終焉の歌?」
「ドラゴンたちのための歌です。ドラゴンは死んでも朽ちることがないのです。死んだ竜はそのままか見つけたものたちに利用される運命です。しかし体ごと天に召すことができる歌があるのでドラゴンは死ぬ前にその歌を求めると聞いたことごあります」
「あれがその歌というのか…クローク以外が歌うことは」
「できないでしょう…クローク様だからあの歌が力を秘めるのです」
「なぜクロークだけなのだ」
シーフは聞かれたくなかった質問だと思い悩みながら濁して話すことに決めた。
「クローク様は終焉の竜の力を秘めるのです秘める竜人です」
「「終焉の竜だと!?」」
グウェンシークたちは驚いた。終焉の竜は遥か昔にこの国を救った竜、その竜の力を秘めているなどと思いもしなかった。
グウェンシークはすぐにクロークの安全を考えた。竜人は長寿と強さを秘め、容姿もよい。それに加えて終焉の竜の力を秘めるのは完全に盛りすぎだ。クロークを欲しがらないものはいないとわかる。
あたりを見渡すと幸い、意識を失った兵士たちを救援したあとのため残っているのはグウェンシークとヴァルツ、ヘイルダムだけであった。
「このことは誰にもいうな。シーフは前から知っていたのか」
「はじめてお会いしたときに気がついたので」
さすがに巫女の長だなと感心した。この話をしている間も誰1人としてクロークから目を話すものはいなかった。
クロークの歌は天に上るようであった。現に光の粒子が天に向かいゆらゆらと上がっていく。クロークはつらかった。理解はしていても、友を見送るのは辛い喉が震えそうになるのを耐えて歌い続けていたが、最後の一章の前に声がでなくなった。
「デイメント…」
うっすらと輝くアーツが優しくクロークを呼んだ。クロークは深呼吸をすると最後の一章をつむぎだした。
その歌声は震えていたが誰も下手だなんて思わない、誰もが悲しみを覚える歌声であった。
歌いきるといっそうアーツは輝きだし粒子となりはじめた。
「デイメント、これを」
アーツは喉の逆鱗をクロークに差し出した。ひとの姿では一抱えもある鱗を受け取ると抱き締めるようにもった。
「さようなら…アーツ」
「さようなら…クローク。すぐにお前のもとにきてやる」
そう言い残すと完全に粒子となりアーツは天に上っていった。空を見上げ続けるクラークに静かにグウェンシークが近寄った。
なんとかけるか悩んだが結局呼ぶことしかグウェンシークにはできなかった。
「クローク」
クロークをゆっくりとグウェンシークの方をみた。クロークの顔をみた瞬間、グウェンシークは抱き締めていた。
「泣いていいんだぞ…クローク」
「なく…っ!」
クロークはグウェンシークに言われて自分が泣きたいのだと気がついた。気がついたら最後のとめどなく涙が溢れ、今にもこぼれ落ちそうであった。
そしてついにクロークの瞳からこぼれ落ちた涙は悲しく美しい白い宝石になり地に落ちた。
“竜ほ使えないところがない素晴らしい生き物である。そして感情によって変化する涙はどの宝石より美しく竜のこころをうったえる”




