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序
かれは、たったひとりで時を過ごすことに疲れてしまった。
だから、少しだけ、空気をかきまわしてみようと思った。
すると――。
時の粒子は複雑に煌めいて、かれの退屈を紛らわせた。
しばらくは楽しめたが、光の乱舞はすぐに消え、その後には静けさが戻って来た。ひとときの賑やかさを味わってしまったかれには、それは耐え難いほどの重圧に感じられた。
かれは、もう一度、煌めきを見てみたいと思った。
いま一度。今度は、さっきより大きくかきまわしてやろう。美しい煌めきが、もっとたくさん永く楽しめるようにと――――。