転生前のアレコレ
待機するといっても特に部屋には何もなく、あるのは「転生のススメ」という案内書のみ。
やることもないのでパラパラとページをめくり始めた。
①転生先について
転生先は選ぶことができません。
同系統の生物が存在するエリアに限られます。
「まぁ・・・白亜紀みたいなところに人間で転生させられても困るし妥当なのか・・・」
②安心のサポートシステム
言語等のコミュニケーションは事前にバックアップさせていただきます。
また異世界の文化や生活に慣れるまでの間、担当天使が音声にてガイドを行います。
「これは助かるな。何もわからん状態で転生させたのでグッバイとか言われたらきついもんな・・・」
③支給品
通貨流通のある場合は一定額の通貨
異世界での標準的な服
「序盤の生計を立てる最低限って感じかな・・・」
特にやることもないのでブツブツ独り言を言いながら読み進める。
最後に・・・
本当に転生していいのかもう一度よくお考えください。
そう書かれたページの挿絵に母さんや友人が泣いているイラストが記載されていた。
「・・・・確かに死に方は最悪だったけど、泣いてくれる人たちもいるもんな・・・やっぱ生き返ったほうがいいのかなぁ・・・」
そんな事を考えていると部屋の扉が勢いよく開かれた。
「転生先が見つかりました!転生は準備に3日ほどかかりますがご了承ください!」
おっさんがニコニコしながら入ってきた。
「あのさ・・・わざわざ見つけてきてくれて申し訳ないんだけど・・・やっぱ生き返ろうかなと思って・・・」
そう伝えるとおっさんは顔面蒼白になりながら答えた。
「あ・・・えーと・・・社会的に死んでる状態でもいいんですかね・・・」
「嫌だけど泣いてくれる人たちがいるからな・・・」
「いや!トイレの神様って呼ばれちゃうんですよ!」
「憧れちゃうじゃなかったんかい!!」
しばらく不毛なやり取りが続いた後、おそるおそる聞いてみた。
「生き返るとなんか不都合ある・・・?」
「いや・・・もう生き返る気ないと思ってこんがりウェルダンに・・・ハハ・・・」
ウェルダン・・・?なんでこのタイミングで焼き加減の話が・・・
「もしかして火葬しちゃった・・・?」
「いや、ここ時間の流れが感じにくいと思うんですけどもう4日くらい経ってるんですよね。」
「4日!?本をパラパラ見てただけで4日!?」
「お待たせしては悪いと時間の流れをかなり速めて退出したので・・・」
おっさんはまいったなーという感じに頭をかきながら答えた。
「あ!でも前世の記憶を引き継がない輪廻転生って方法もありますよ!本来なら死んだ後、天界で次の転生先待ちになるんですが、今回のケースならその過程をふっ飛ばして転生できます!」
おっさんはペラペラとカタログのようなものをめくりながら答えた。
「ありました。えーっと・・・おてあらいさんの場合は・・・」
「御手洗だ・・・」
「え!?これミタライって読むんですか!?おてあらいさんがお手洗いで死ぬとかトンチが効いてるなーと思ってたのに・・・」
はぁ・・・と深くため息をついて答えた。
「死んだんじゃねぇ・・・お前に殺されたんだよ・・・」
おっさんは苦笑いを浮かべながら答える。
「いや、まぁその話はひとまずおいておきましょう。輪廻転生になりますと【ビフィズス菌】になりますね。善行ポイント的に。」
「勝手においておくな!ビフィズス菌って生き物っていう枠組みから大きくはずれすぎだろ!逆に前世の記憶があったほうがやりにくいわ!!」
「いや、生きて腸に届いて宿主を元気にさせれば善行ポイント貯まって次はカナブンくらいはいけますって!!」
「ポイント貯まっても虫かよ!!」
そんなやり取りを続けていると急におっさんが慌て始めた。
「あの・・・時間があんまりないんで異世界に転生するかビフィズス菌になるかそろそろ決めてほしいんですけど・・・」
「選択肢があるようでない選択肢を持ってくるんじゃない!!転生だ転生!!」
「わかりました。私がばっちりバックアップしますので安心して転生してください!」
おっさんは胸を張って答えたが自信満々のその態度で逆に不安になるのであった。