前途多難
「あれが王都だよ。」
大きな城。ぐるりと街ごと囲んだ城壁。
城壁の一部に門があり、そこから街に入れるようだ。
「ここら一帯を治める王様の都だからね。ここにしかないものも沢山あるよ。劇場でしょ。商人連合の大型市場でしょ。ギルド本部に食いだおれ通り・・・後は王立図書館とー・・・ま 見て回った方が早いけどね。」
チャチャは指を折りながら有名な施設を数えている。
「僕は王立図書館に行きたいです。」
王立図書館ならば勇者関連の書籍もあるはずだ。足取りを辿る近道になる。
チャチャに告げるとチャチャは手を交差させて答える。
「ダメー!!」
「えっ!?なんで!!」
「フリットは身分証持ってないからね。王都には入れませーん。」
チャチャが笑いながら言った。
「笑い事じゃないですよ!ここまで来て!しかも観光名所まで教えてくれたのに入れないなんて!!」
俺が泣きそうになりながら食ってかかるとチャチャがまた答える。
「まーまー落ち着いて。だってどっから来たかも誰かもわからないんじゃ身元を証明出来ないし、でもお姉さんに任せない!いい方法を考えてるから。」
自信満々に胸を叩いて俺をなだめているが何故だろう・・・嫌な予感しかしない。
しかし図書館に行くにはチャチャに任せるしかない。俺はチャチャを信じて任せてみる事にした。
「・・・じゃあお願いします。」
俺がお願いすると
「お願いしますチャチャお姉様ってちゃんとお願いしなきゃ!」
チャチャはチチチと指を振った。
ぐぐぐ・・・。下手に出てたらどんどん増長される・・・。ここはガツンと言ってやらねば!
「ちょっと!酷いですよ!チャチャ・・・さ・・・」
チャチャがどこからか取り出した石をニコニコしながら粉々に握り潰す。
「ん?なぁに?」
「・・・お願いします・・・チャチャお姉様・・・。」
「よろしい!」
チャチャはニッコリ笑って城壁の外れを指さした。
「じゃあまずはあそこのスラム地区に行くよ!」
よく見ると城壁の外にも街がある。
「スラム地区って・・・?」
「城壁の中は一定の身分がないと入れないからね。それ以下の人達やワケありの人達が住んでるところだよ。」
ワケありの人達の街・・・危険な臭いしかしない・・・。
「そんじゃあレッツゴー!」
チャチャは俺を引きずりスラム地区の方へ歩いていく。
引きずられながらハナに助けを求めたがハナはゆっくり首を横に振るだけだった。