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無能天使  作者: 汝 恵美
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勇者再臨

次に目を開けると木々の木漏れ日の中、俺を見下ろしているチャチャと目が合った。


「あ!気が付いた!良かったよぉ。」


チャチャが涙を拭きながら話しかける。


「ーーーここは・・・」


意識がはっきりしてくると同時に慌てて身体を起こし、俺は顔を真っ赤にしながら頭を下げる。


「あ、いやあの!ごめんなさい!」


どうやら気を失っている間、チャチャにずっと膝枕をしてもらっていたようだ。


後ずさりした背中に何かがぶつかる。

ゆっくりと振り返る。


「え・・・ハナ・・・こんなにでかかった・・・っけ?」


大型のワーウルフが俺を見下ろしている。


「あはははは。違う違う。ハナはこっち。そいつはオスのワーウルフだよ。」


目をやるとチャチャの隣でへこんでいるハナの姿があった。どうやらオスと間違えたれた事がショックのようだ。


「いや、ハナ違うんだって!友だちになったワーウルフはハナしか知らな・・・」


言いかけて血の気が引く。

もう一度 ゆっくり振り返ると大型のワーウルフが顔を近づけてきた。


「あわわわわ!ぼくを食べても美味しくありませんよ!!」


カサカサと後ずさりする。


「チャチャさん!助けて!!」


手をばたつかせてチャチャに助けを求める。


「ぼく・・・チャチャさん・・・。」


後ろからギュッと抱きしめられる。


「いや!倒すのは僕じゃなくて・・・」


「良かった・・・いつものフリットに戻って・・・」


チャチャは泣きながらそう呟いた。


そうか・・・解除(リリース)中は猫を被ってなかったから言葉遣いも【俺】になってたし、雰囲気違ったのかもしれない・・・。


ハナも嬉しそうに擦り寄ってくる。


「いや、そんな事よりワーウルフが!!」


大型のワーウルフがゆっくりと近付いてくる。


「あ その子は大丈夫というか・・・周りの子も大丈夫だよ。」


よく見るとぐるりと周囲を魔物に取り囲まれている。


「え・・・いや、この状況は・・・何!?」


困惑する俺を見て笑いながらチャチャが答える。


「森の英雄だってさ。」


ワーウルフの影からサルっぽい何かが出てくる。


「貴方のおかげで森が平和になりました。今日だけ争いは辞め、新たな勇者の誕生の日としてお祝いに来たのです。」


サルっぽい何かは頭をぺこりと下げる。


「え・・・勇者・・・?」


「勇者しか倒せなかった伝説の悪鬼をフリットがやっつけちゃったからね。昨日囲まれた時はびっくりしたけど1晩中警護をしてくれてたんだよ。」


「勇者しか・・・倒せな・・・い・・・?」


ヤバい!トロールが魔王の眷属で普通の人間では倒せるわけじゃない存在だとすると魔王に俺の存在がバレている可能性がある。


一層の事、魔王を倒してしまうのも1つの手ではあるがいかんせん情報が少なすぎる。仮に魔王が通常の400倍以上強かった場合、俺では勝てないし運良く勝てたとしても腕や足の1本ちぎれようものならその後の人生は最悪の一言に尽きる。


やはり第一目標としては勇者の捜索・・・。


「おーい フリット〜。」


耳元でチャチャが囁く。


「あ・・・考え事してて・・・。」


慌ててチャチャに答える。


「別にいいんだけどね。いつまでくっついてるのかなぁ?このスケベ。」


チャチャがイタズラに笑う。

そういえばチャチャに後ろから抱きしめられたままだった!


「や!違っ・・・だいたいチャチャさんが抱きしめてきたんじゃないですか!」


顔を真っ赤にしながら離れる。

その時、ぐぅーっと俺のお腹が鳴った。


「・・・フリットはまだ色気より食い気か・・・ご飯にしよっか。」


森の魔物達が木の実や果物を持ってきてくれる。

ここに来て初めて美味しい物を食べたかもしれない。


「この果物美味しい!」


シャキシャキした食感で噛むたびに甘い味が染み出してくる。

俺がもぐもぐ食べてる横でチャチャが不満そうに漏らす。


「美味しいんだけど・・・やっぱり肉が食べたいなぁ・・・」


木の実を食べていた魔物達に戦慄が走る。

するとウサギ型の小さな魔物が意を決したように焚き火に飛び込もうとする。


「待って!ストップストーップ!!」


慌てて俺がウサギを止める。


「そこまでしなくていいから!!」


ウサギはホッとした様子で焚き火から離れた。


「そうだよ!だいたい私は生の方が好きなんだから!」


チャチャの言葉にまた戦慄が走る。

ウサギはそのままコロコロ転がり、葉っぱで作ったチャチャの皿の上に転がり込み、祈りのポーズを取り始めた。


「だからいいって!!チャチャさんも今日は我慢して!!」


「冗談だってフリット。反応が面白いからつい・・・」


チャチャは笑って言っていたが俺は見逃さなかった。

右手に血抜き用のナイフを構えていたのを・・・。


食事が終わり森の外まで魔物達が見送りに来る。

ハナは王都までついてきてくれるようだ。


「森を抜ければもう王都は目の前だから」


見送りに来た魔物達に手を振りながら王都への道を3人で歩き始めた。

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