女の闘い(前編)
「・・・眠れない・・・」
目の前で火花を散らし殺気立っている2人・・・
仮に魔物が近くを通ったとしても逃げ出すか迂回するであろう空気が辺りに張り詰めていた。
その空気のど真ん中に俺がいる。
「・・・こりゃ徹夜かなぁ・・・」
焚き火の火を見つめながら今の状況を整理する。
魔王が勇者の存在に気付いている事は間違いない・・・。
ただ何故、魔王は勇者が光の中から現れる事を知っているのか・・・。
前回の転生者は初めから魔王を封印するつもりでこの世界に来たわけではない。
魔王も転生者の事を初めから知っていたわけではないだろう・・・。
どうも腑に落ちない・・・。
それに町を滅ぼした魔王は俺を発見していない・・・。
それなのに周囲を探すことなくいなくなった。
俺を殺す・・・または捕まえる事が目的なら周辺の森やチャチャの家・・・最悪王都も火の海に変えるだろう・・・。
現状として王都から新聞は発行されている。
今の段階では滅んではいないはず・・・。
チャチャの家やこの森も無事・・・。
探さなかったんではなく、探せなかった?
まだ情報が足りなすぎる。
当面の目的は先代の転生者を探し出し、魔王を封印してもらう事・・・。
王都の事はよくわからないが新聞が発行されているという事はそれなりの文化レベルがあるはず・・・。必ず手がかりがあるはずだ。
ーーーー遠くから地響きのような音が響き渡る。
その音にハッと目を覚ます。
どうやら考え事をしている間に眠ってしまったようだ。
「来るよ!!」
チャチャが武器を構え地響きのする方へ向き直る。
ハナも牙を剥き、低く唸り声を上げる。
木の合間を抜いおびただしい数の魔物ーーーー。
ワニ ワーウルフ サル 鳥ーーーー。
様々な魔物が群れをなしこちらへ向かってくる。
「なっ!」
チャチャも動揺し、思わず声を上げる。
しかし魔物の集団は俺たちに一瞥することもなく、間をすり抜けて森の奥へと消えていった・・・。
何かに怯え、ソレから逃げるかのようにー。
ソレはすぐさま俺たちの前へと現れた。
緑がかった皮膚・・・巨大な身体・・・。
巨大な石斧を振り回しながら木をなぎ倒し、もう片方の手には鎖・・・。
鎖の先には首に鎖を巻き付けられ、引きずられボロボロになって絶命した魔物が辛うじて原型をとどめていた。
「ハナ・・・。フリットを乗せてすぐここから離れな!コイツは・・・拷問狂のトロールだ!」
チャチャは震えながら短剣を持ち直し、トロールの前に立ち塞がる。
「私が時間を稼ぐ!出来るだけ遠くへ逃げるんだ!!」
「ちょ・・・!時間を稼ぐって1人じゃ勝てないって事じゃないですか!!僕も戦います!」
剣を抜こうとした時、襟首をハナにくわえられ、ひょいと背中の上に投げられた。
ハナは俺を乗せたままチャチャの反対方向へ走り出す。
「ありがとう・・・ハナ・・・。フリットを頼んだよ・・・。」
チャチャはトロールの方へ駆け出していった。




