女の戦い
俺をワーウルフが背中に乗せてくれたおかげでずいぶんペースアップが出来た。
「ハナのおかげで足でまといが解消されてペースが上がりましたね。」
ワーウルフの頭を撫でながらチャチャに話しかける。
「ハナ・・・?」
チャチャは誰?って顔をしている。
「ワーウルフに名前つけたんですよ。両手に花って言われたからハナで。」
ハナは1回軽く吠えた。
「あーなるほどね。しっかしワー・・・ハナがそんなに懐くとはね。魔物が懐くとか聞いたことないし。」
「そうなんですか?ハナはとっても大人しくて可愛いですよ。」
ハナは尻尾をブンブン振りながら俺をチラリと見る。
チャチャは素っ気なくフイっとまた背を向けて歩き出した。
なんかチャチャが冷たくなったような・・・
「もしかして嫉妬してるん・・・」
言い終わる前に顔の横をナイフがかすめ飛んでいく。
「そそそそそ!そんな事ないし!!」
顔を真っ赤にしながら一生懸命否定している。
「照れ隠しでナイフ投げないでください!!」
「・・・ごめん。ただハナは可愛いって言ってもらえるのに私はさー・・・」
めんどくさい系の彼女か!!
っていう心の叫びはぐっと堪え
「チャチャさんは可愛いというよりーー」
「可愛いというより?」
サッと寄ってきて顔を近づける。
「(残念な)美人ですから。」
チャチャの顔がパァーっと明るくなる。
「いやーそっか、そっか。私は美人かー。こりゃ可愛いよりは10倍は上だね。」
カラカラとチャチャが笑っていると
ハナが威嚇の声を上げながら俺を見つめる。
ーーーーお前もめんどくさい系彼女かよ!!
「・・・ハナは可愛いしいい子だよ」
ハナの頭を撫でながら言うとフフンと勝ち誇ったようにチャチャを見る。
「私は!!私は美人だけ!?」
チャチャがワーワー騒いでいる。
とても枕詞に残念ながついていたとは言えない。
「・・・強くて素敵です。」
「うんうん。美人 強い 素敵 3つかぁ。可愛いといい子の2つのワンコロとはやっぱり違うな」
うんうんと1人で頷いている。
するとハナがまた威嚇の声を上げる。
「終わりが見えないからちょっと落ち着いて!どっちも!どっちも大好きだから!!」
終わりの見えない不毛な戦いが続き、いいところを10個ずつ言わされた頃にはどっぷりと日が暮れ、元々薄暗かった森は暗闇に包まれていた。
チャチャはサッと松明に火をつける。
「あっちゃー。夜になる前に森を抜けるつもりだったのに・・・どこか野宿出来そうな所があればいいんだけど・・・」
確かにこんな獣道の真ん中で野宿すれば翌朝には3人仲良く魔物のお腹の中だろう。
すると俺を乗せたままハナが脇道に入っていった。
「ちょっと!どこいくの!」
チャチャが慌てて後に続いた。
しばらく進んだところに開けた所に出た。
木が切られ、遮るもののなくなった森は月明かりに照らされ少し明るくなっている。
ハナから降りて周囲を観察する。
焚き火の後やイス代わりにしたであろう切り株があり、以前に誰かがここで野宿した後が見受けられる。
「ここなら魔物が近付いてきてもすぐわかるね」
少し遅れて姿を現したチャチャが松明で周囲を明るくしながら話しかけてきた。
ハナはこちらを見つめながら頭を近づけてくる。
「ありがとう ハナ。助かったよ。」
俺が頭を撫でるとハナはチャチャに向き直りドヤ顔を見える。
「ーーーーな!」
チャチャは平静を装いながら
「さーて。フリットが魔物に襲われないよう見張りをしますかねー。」
焚き火後にササッと松明で火をつけ直しながらこちらをチラチラ見ている。
どうやら女の戦いはまだ続いていたようだ・・・。
「でもチャチャさん疲れてるんじゃ・・・」
俺が声をかけようとするとハナがワンと一声上げ、警戒体制を取りながら遠くを見つめる。
どうやらハナも見張りをするつもりらしい。
「なるほどなるほど・・・。あくまで私に張り合おうって言うんだね。」
チャチャとハナの目が合う。
「どっちが多く魔物を倒してフリットを守れるか・・・勝負!!」
ハナも望むところと言わんばかりに鼻を鳴らす。
「あの・・・僕も見張りを・・・」
2人に話しかけると
「フリットはゆっくり寝てて!!」
2人に威圧されオズオズと焚き火の方へ戻る。
「これは女のプライドを賭けた戦いなんだから!!」
チャチャの言葉にハナもワンっと答える。
はぁっとため息をついて焚き火越しに見つめる世界には魔物に張り合う残念すぎる美人の凛々しい姿がそこにあった。




