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3-3 ジェフはしばらくだまってから

 ジェフはしばらくだまってから言った。


「優しくしているつもりはない。オサムは私に仕えている。それに貴様らには・・・命の借りがある。当然じゃないか」


「・・・そうだな」


「よし、貴様ら。行くぞ」


「おっけー!」


「いこう」


「いきましょう」


 オサムが出口まで俺たちを見送りに来る。


「ご主人様、お気を付けくださいませ。みなさま、ご主人様をよろしくお願いいたします」


「うん!ボクに任せて!」


 オサムは少し怪訝な顔をする。本当は人間なんかにそんなへりくだりたくない。そんな感じだ。うーん。そういうものかな・・・?ジェフはそんな優姫に全く構わずオサムに声をかける。


「オサム、家を頼む」


 その言葉にオサムはパッと笑顔になる。


「はい!」


 ジェフとオサムのあいさつはそれだけだった。信頼関係だろうか。一言で関係を結べるのはうらやましいものだな。オサムは部屋の中に下がった。


「さて、ドワーフの村に行くにはあそこに見える山に行かなければならない」


 ジェフは俺たちの正面に見える山を指さす。


「あれ?結構近いんじゃない?」


 優姫が素っ頓狂な声を上げる。


「近くない。あそこに行くまで幻馬を使って二日かかる。あの山はとても高いんだ。だからこそ、近く見えているのだ」


「結構大変なのか?」


「・・・お前たちの戦闘力さえあれば問題は無いだろう」


「何か強いモンスターとかが出てくるのですか?」


「わからない。出会ってしまうかもしれないだけだ。では全員馬を呼べ」


「きた!この魔法はちょっと使ってみたかったんだ!ボクの馬!幻馬ファントムホース!」


 おお~、優姫の馬!・・・おお~おお?・・・でか!優姫の馬はすごい筋肉質だ。これは競馬とかで走るときっと絵になるんだろうな。たてがみも立派!毛並みは赤毛か。めちゃくちゃかっこいい!


「うわぁ!すっごくかっこいいね!」


「いいですね~。私も!幻馬ファントムホース!」


 涼香の馬はどうだ?おお!白い毛なみ!上品だな。大きさは優姫の馬と比べると少し見劣りするがそれでも十分な大きさだ。涼香の馬は涼香に鼻を差し出す。涼香がそれを撫でている。絵になる!


「よし、俺も!幻馬ファントムホース!」


 お!やはり青毛!毛並みも美しい。流れるようだな。たてがみのなびく様は水の流れを見ているかのようだな!俺の馬も俺に鼻を差し出す。よし、撫でてやろう。


ビチャ!


「おわぁ!めっちゃ濡れてる!やっぱりか!」


「え!?仁の馬びしょびしょ!?」


「うるせー!優姫、こっちくんな!」


「ちょっと触らせてよ!」


 優姫は俺の制止を振り切って俺の馬に触る。


「うわぁ!ホントにびしょびしょ!仁大変だね!」


 優姫は俺の股を見ながらそう言った。ああ。くっそ。これは馬鹿にされるやつだ。対策まだ練れてないぞ・・・。そんな俺たちのやり取りを見ていたジェフがため息交じりに言う。


「茶番はここまででいいか?出発するぞ?」


「早くいこう!」


「行きましょうか」


「・・・ああ」


 泣きそうな俺は小声でそう返事をした。


幻馬ファントムホース!」


 ジェフの声が高らかに響く。ジェフは出現したかしていないかよくわからない段階ですでに飛び上がっている。そうして、黒い馬が出現した途端バシッと馬の腹をけってスタートする。


「ボクたちも続くよ!」


「はい!」


「・・・おー!」


 俺はズボンが濡れていくのを感じながら馬の腹を蹴った。ええーい。こうなったらズボン完全にびしょびしょにしたる!だが、馬が走り出してすぐ俺はズボンの濡れなどどうでもよくなった。何だこの爽快感は!?ここへ来るときに乗った馬とは全く違う!ジェフの馬に乗っていた時は馬の振動に俺が合わせていたし、曲がるときは少し体重をかけていた。だが、自分で召喚した馬は俺の思考を完全に把握しているようだった。俺への負担もほとんどない! これは尻が痛くなることもなさそうだな!


 俺は前を見る。先頭はジェフ、次に優姫。そして涼香の順か。優姫の馬は高速で走るブルドーザーのようだな。牛かなんかじゃないのか?涼香の馬は非常にスマートな走りをしている。何というか走りに無駄がない感じだ。滑るように走っている。俺の馬はどんな感じなんだろうな。俺は涼香の横に馬をつける。馬の走る音って案外うるさいな。大声じゃないと伝わらなさそうだ。


「涼香!どうだ?」


「すごいですね!馬が私の思考に合わせてくれています!とても楽です!」


「そうだよな!なぁ、俺の馬の走り、どんな感じか見てくれないか!?」


「どれどれ?」


 涼香は速度を落として俺の後ろに回る。俺はドキドキしながら前を向いて馬を走らせる。


「すごいですよ!仁さん!仁さんの馬、サーフィンしながら走ってるみたいです!水なんかないはずなのに、水をかき分けています!」


「マジか!かっけぇ!」


「貴様ら!この先がけになってる!右に曲がるぞ!」


「了解~!」


 優姫の返事。すっとジェフがカーブを曲がる。俺たちもそれについて行く。曲がった途端左の視界が開ける。


「うわぁ!高い!いや深いね!そして広い!」


「おわああああ!高いぃぃぃぃ!!」


 足がすくむ!まず全く底が見えないぞ!?どんだけ深い谷になってるんだよ!?そして対岸が全然の木がはっきりと見えない!俺のそんな思いを受けてか俺の馬は心なしか谷より離れた方向に離れてくれた。優秀かお前。すまないな。


「聞け!この先、谷が狭くなっているところがある。そこを飛び越える!臆すなよ!飛び越えられなくなるぞ!」


「ジャンプさせるの!?面白そう!」


「マジかよ!」


 嘘だろ!?涼香は平気なのか?


「仁さん、頑張りましょうね!」


 笑顔だ・・・!俺は急にトイレに行きたくなってきた。足が全然動かない。俺は前を見る。確かに谷がとても狭くなっているところがある!俺がその位置を確認したとき、ジェフは谷から大きく距離を取る。


「準備しろ!行くぞ!」


 ジェフの馬は羽が生えているかのようにふわりとジャンプした。


「それ、飛べー!!」


 優姫の赤い馬も力強い蹴りだし。大砲の弾のようだ。


「行きますよ!」


 涼香の白い馬は美しい蹴りだし。こちらは大きな矢のようだな。


「頼む!」


 俺は自分の馬に祈る。俺の馬はぐっぐっと地面を強く蹴りだす。頼むぞ!


「よし、ジャンプ!」


 だが俺の考えに反して、俺の馬はジャンプしなかった。やばい!あと一歩で谷・・・!俺は目を閉じた。うわ。これは死んだ!いやだ、落下死はきつい・・・!痛そうだし・・・!


「あれ!?落ちてない?走ってる?」


 俺は恐る恐る目を開いた。おおお、走ってる!!谷底が丸見えだ!!うわあああ、待って!待って!すごいこれ!俺の馬、空中を走ってる!!俺は自分の馬の足元を見る。足はものすごい水を切っていて全く見えなかった。だが、その足は確実に何かを蹴っている。


「もしかして、お前、空中の水を蹴ってすすんでるのか?」


 ヒヒーン!


「返事!?お前すごいな!?」


 ふはは!どうやら俺の馬、飛べるらしい!二度とやりたくないけど!


 俺の正面にみんながそれぞれ着地していく。優姫は後ろを振り返って俺が既に同じ目線にいることにぎょっとしている。だが、俺が下に落ちてないことを確認してちょっとホッとした顔を浮かべている。心配してくれてたのか。まぁあいつは俺が高所恐怖症だって知ってるからな。


「着地早々悪いが、気を付けろ!我が危惧していたヤツが現れたぞ!」


 ジェフの警告が聞こえる。おおいおい、次から次へと忙しいな!今度は何だ!


「あれは!ミノタウロスです!それも三体います!」


 俺はミノタウロスを確認する。こいつは・・・優姫二人分くらいの身長はあるか?人型の体に牛の頭。腰には布が一枚巻いてある。顔の部分は牛としての毛が生えている。体は人そのものだが筋肉の量がおかしい。エルフの村にいたリオもなかなかの肉体をしていたが、こいつのはその倍はありそうだ。何より、右手に持っている金棒のサイズがおかしい。ありゃ、小学生を振り回しているようなもんだぞ!


「倒すか、倒さないか?」


 ジェフがそう質問してきた。そして質問には優姫が答えた。


「もちろん!倒す!」

読んでいただきありがとうございます!


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